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卵子凍結は何歳まで?
―妊孕性温存を考えるときに知っておきたいこと

Q1.卵子凍結は何歳までにすればいいですか?

A1.明確な年齢の答えはありません。

加齢による卵巣予備能や卵子の変化を理解した上で、ご自身のライフプランにあわせて、卵子凍結を考えることが大切です。

一般的には年齢が上がるにつれて、採卵1回あたりに得られる成熟卵子の数は減る傾向があり、卵子の染色体の数的異常が起きやすくなります。30歳代後半から、このような年齢による変化に注意していく必要があります。

採卵1回で凍結できる卵子の数が少ない場合、将来、凍結卵子を使って妊娠・出産に至る可能性を現実的なものにするために、複数回の採卵が必要になることがあります。また、採卵時の年齢が高くなると、受精後の胚が染色体の数的異常(異数性)をもつ可能性が高くなり、妊娠成立や妊娠継続に影響することがあります。ただし、採卵で得られる卵子の数は、同じ年齢でも個人差が大きいため、年齢だけでなく、ご自身の卵巣予備能も参考にすることが大切です。

卵巣予備能は卵巣に残っている卵胞数の目安となるものであり、抗ミュラー管ホルモン(AMH)値、月経開始時の卵胞刺激ホルモン(FSH)値や超音波検査による胞状卵胞数(AFC)などで評価します。
つまり、卵子凍結では「何歳まで凍結ができるか」だけでなく、「何歳で凍結すれば将来の可能性を現実的に残したことになるのか」「自分にとって、いつ卵子凍結を検討するのがよいか」という視点が大切です。

(Machtinger et al., 2025)(Gruhn et al., 2019)(Rodriguez-Varela et al., 2024)(Iwasa et al., 2023)

Q2.卵子は何個凍結すればいいですか?

A2.明確な個数の答えはありません。

加齢によって卵子は変化するため、卵子凍結による将来の妊娠・出産の可能性を考える際、目安となる卵子の数は採卵時の年齢によって異なります。また、「この個数の卵子を凍結すれば、将来必ず妊娠・出産できる」という個数はありません。

妊娠を希望した際には、凍結卵子を融解して精子と受精させ、胚を作成することになります。染色体の数的異常がない胚(正数性胚)を得るのに必要な卵子の個数は、採卵時の年齢が高くなるとともに増加します。また、正数性胚を用いても、1回の胚移植で必ずしも妊娠・出産に至るわけではありません。このため、「将来の出産を現実的に考える」という観点では、複数の正数性胚が得られる卵子の個数を考える必要があります。

したがって、目安となる卵子数は、採卵時の年齢だけでなく、将来希望する子どもの人数なども考慮して、一人一人検討していく必要があります。

(これまでの論文での報告)

  • 体外受精の患者さんを対象にした報告では、着床前遺伝学検査(PGT-A)にて少なくとも1個の染色体の数的異常のない胚(正数性胚)を得るのに必要となる成熟卵子数は加齢によって増加しました。ただし、体外受精の患者さんを対象とした研究であり、卵子凍結の場合にそのまま当てはまる値ではありません。
    PGT-Aで少なくとも1個の正数性胚盤胞を得るために必要となる成熟卵子数(平均値)は、採卵時の年齢が35歳は約5個、36~38歳は約6個、39歳は約9個、40歳は約12個、41歳は15個、42歳は約23個でした。(Rodriguez-Varela et al., 2024)
  • 正数性胚を1個以上得るための成熟卵子数(中央値)染色体の数的異常のない胚(正数性胚)を移植しても妊娠するとは限りません。正数性胚を3個得るのに必要な卵子数は、加齢によって増えていました。
    正数性胚を3個以上得られる確率を70%とするために必要な成熟卵子数は、採卵時年齢が35歳未満は15個、35~37歳は21個、38~40歳は28個、41~42歳は34個でした。(Namath et al., 2025) 


Q3.AMHが高ければ卵子凍結は急がなくていいですか?

A3.年齢も重要です。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、卵巣に残っている卵胞の数を推測する目安となる検査です。一方、AMHは、年齢によって変化する卵子の「質」を示すものではありません。加齢によって卵子の染色体の数的異常が増え、妊娠成立や妊娠継続に影響する可能性があります。そのため、AMHが高いからといって、卵子凍結を急がなくてよいとは限りません。(Gruhn et al., 2019) 

卵子凍結を考える際には、AMHと年齢の両方を考慮して判断することが重要です。さらに、パートナーの有無、仕事やキャリア形成、将来どのようなライフプランを考えているかによっても、ご自身に適したタイミングは変わるかもしれません。

Q4.卵子凍結をすれば将来妊娠できますか?

A4.卵子凍結は将来の妊娠の選択肢を増やすための方法であり、妊娠を保証するものではありません。

採卵時の年齢や凍結した卵子の個数をもとに、将来、凍結卵子を用いて妊娠・出産に至る可能性を推測することはできます。しかし、どの年齢で何個卵子を凍結すれば、将来必ず妊娠・出産できるという保証はありません。
若年で採卵した卵子は、高年齢で得られる卵子より、妊娠・出産に至る可能性が高くなります。しかし、女性の年齢以外にも、子宮やパートナーの精子など、妊娠しにくくなる要因はさまざまです。また、妊娠・出産には一定のリスクがあり、年齢や健康状態によっては、妊娠・出産をお勧めできない場合もあります。

卵子凍結は「将来の妊娠を保証するもの」ではなく、「将来の選択肢を増やすための一つの方法」と考えることが適切です。

Q5.卵子凍結は、結婚していてもできますか?

A5.結婚やパートナーの有無にかかわらず、卵子凍結は可能です。

卵子凍結は、結婚しているか、パートナーがいるかにかかわらず、ご自身の意思で検討することができます。
妊娠するには、卵子を精子と受精させ、胚を形成することが必要になります。結婚している場合やパートナーがいる場合には卵子凍結に加えて、胚凍結も選択肢になります。ただし、受精胚は卵子と精子の両方の遺伝情報をもつため、その保存や使用には、カップル双方の意思が関係します。
日本産科婦人科学会の見解でも、凍結受精胚の取扱いは夫婦(カップル)の関係性を前提として定められています。
~ヒト受精胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解(日本産科婦人科学会2024年6月)~
「受精胚の凍結保存期間は,被実施者が夫婦として継続している期間であってかつ卵子を採取した女性の生殖年齢を超えないこととする.」

卵子凍結は、ご自身のライフプランにあわせて、将来の妊娠の選択肢として考慮する方法です。卵子凍結を検討するときには、「何歳まで」「何個」という一律の答えはありません。年齢と卵巣予備能だけでなく、パートナーの有無、仕事、将来のライフプランなどを含めて、ご自身のタイミングを考えることが大切です。

受診について

卵子凍結を考えている方、卵子凍結について相談したい方は、当科初診をご予約のうえ、ご相談ください。当科では、年齢を問わず卵子凍結についてご相談いただけます。
受診方法については、こちらをご覧ください。



(参考文献)
Gruhn J, et al. Science. 2019;365(6460):1466-1469.
Iwasa T, et al. Reprod Med Biol. 2023;22(1):e12518.
Machtinger R, et al. Diagnostics (Basel). 2025;15(17):2278.
Namath A, et al. Fertil Steril. 2025;124(3):487-495.
Rodriguez-Varela C et al. Fertil Steril. 2024;122(4):658-666.
ヒト受精胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解(日本産科婦人科学会2024年6月)(https://www.jsog.or.jp/news/pdf/kenkai2_20240622.pdf)

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