35歳からの不妊治療 ―いつ、どこまで治療する?
Q1.35歳を過ぎたら、すぐに不妊治療を始めたほうがいい?
A1.「35歳になったらすぐ不妊治療」ではありませんが、妊娠を希望しているのであれば、早めに相談することをおすすめします。
30代後半になると、加齢とともに妊娠のしやすさが徐々に低下し、流産率が上昇します。しかし、女性の年齢だけで治療方針は決まりません。医療機関では、子宮・卵管の状態、卵巣予備能(卵巣に残存する卵胞数の目安)、排卵の有無、精液所見などの検査を行い、妊娠しにくい要因を評価することができます。これらの結果とご自身の状況や希望にあわせて、治療方針を考えていきます。
(これまでの論文での報告)
- 30歳~44歳の、妊娠を希望する女性(半数に妊娠歴あり)を対象とした調査では、自然妊娠での妊娠成立までの期間(中央値)は38歳未満では3か月、38~39歳では4か月、40~41歳では8か月、42歳以上では12か月以上でした。(Steiner and Jukic, 2016)
- 20~44歳の妊娠を希望する日本人女性1,324人(既往分娩歴なし508人38.4%)を対象とした検討では、避妊を中止してから12か月以内に妊娠する累積確率は24~26歳では80%、27~29歳では69%、30~32歳では66%、33~35歳では53%、36~38歳では48%、39~44歳では31%でした。(Konishi et al., 2018)
- 36,056人の女性を35歳未満、35~39歳、40歳以上の3群に分けた検討では、年齢が高くなるほど流産のリスクが上昇していました。35歳未満と比較して、35~39歳では2.0倍、40歳以上では2.4倍でした。(Cleary-Goldman J et al., 2005)
Q2.35歳なら、まずタイミング法から始めればいい?
A2.検査結果に問題がなければ、タイミング法から始めることもできます。ただし、ご自身の状況や希望を踏まえて、タイミング法をどのくらい続けるか、あらかじめ考えておくことが大切です。
医療機関では、子宮・卵管の状態、卵巣予備能(卵巣に残存する卵胞数の目安)、排卵の有無、精液所見などの検査を行い、妊娠しにくい要因を評価することができます。
検査結果に大きな問題がなければタイミング法から始めることができます。
しかし、加齢とともに妊娠のしやすさは低下し、流産のリスクは上昇します。また、タイミング法で妊娠できる可能性にも限界があります。人工授精や体外受精にステップアップするかどうかを適切な時期に検討することが大切です。タイミング法を漫然と続けるのではなく、どの程度続けるのか最初に考えておくことが必要です。ご自身の希望によっては、ステップアップせずにタイミング法を続けることも選択肢の一つです。
不妊治療の進め方は、年齢だけで決めるのではなく、検査結果、これまでの妊娠歴、ご自身の治療に対する希望などを踏まえて、一人一人考えていきます。
Q3.人工授精(IUI)は何回くらいすればいい?
A3.一律に「○回」までと決まっているわけではありません。ご自身の年齢、状況や希望を踏まえて、人工授精をどの程度続けるのかを考えることが大切です。
人工授精で妊娠できる可能性にも限界があります。人工授精による累積妊娠率は、治療回数が増えるにつれて上昇しますが、その効果は年齢によって異なります。
年齢、卵巣予備能、精液所見、卵管の状態などを踏まえて、体外受精にステップアップするかどうかを適切な時期に検討することが大切です。そのため、人工授精についても漫然と続けるのではなく、どの程度続けるのかを先に考えておくことが必要です。
ご自身の希望によっては、体外受精にステップアップせずに人工授精を続けること、タイミング法にステップダウンすることも選択肢の一つです。
(これまでの論文での報告)
- 19~45歳の女性1,612人の人工授精4,246周期を対象にした調査では、人工授精の妊娠率は加齢とともに低下していましたが、最初の3周期では、40~41歳と35~39歳の妊娠率に大きな差はありませんでした。(Schorsch M et al. 2013)
- 女性3,824人の人工授精7,061周期を対象にした調査では、累積出生率は年齢によって異なり、35歳未満では27.62%、35~37歳では22.96%、38~39歳では13.73%、40歳以上では6.90%でした。(Zhang D et al. 2024)
Q4.35歳から、いきなり体外受精をしてもいい?
A4.はい。医学的に体外受精が適切と考えられる場合には、最初から体外受精を選択することもできます。
「タイミング法→人工授精→体外受精」と、必ず順番に進まなければならないわけではありません。年齢、卵巣予備能、精液所見、卵管因子、これまでの妊娠歴や治療歴などによっては、初めから体外受精を検討することもあります。
体外受精を希望すれば、どのような場合でも体外受精が適切というわけではありません。体外受精は人工授精と比べて、身体的・経済的な負担が大きくなります。また、体外受精を選択したからといって、必ずしも人工授精より短期間で妊娠・出産できるとは限りません。
それぞれの治療法のメリット・デメリットを理解したうえで、ご自身の年齢、検査結果、治療にかけられる時間や負担、治療に対する希望を踏まえて、どの治療から始めるかを考えることが大切です。
(これまでの論文での報告)
- 原因不明の不妊のカップルを対象としたメタ解析では、体外受精と卵巣刺激を伴う人工授精を比較したところ、累積出生率は体外受精では50.3%、人工授精では43.2%で、統計学的に有意差はありませんでした。25%の女性が出生につながる妊娠に至るまでの期間は、体外受精3.3か月、人工授精4.0か月でした。(Lai S et al, 2024)
Q5.35歳を過ぎると、卵子の数だけを気にすればいい?
A5.卵子の「数」だけでなく、「質」も考える必要があります。
採卵で得られた卵子がすべて受精して胚になるわけではなく、胚ができても、すべてが妊娠・出産につながるわけではありません。
加齢にともなう卵子の変化の一つとして、染色体の数的異常(異数性)が増えることが知られています。卵子を受精させて得られる胚についても、加齢にともない異数性胚が増えていきます。(Gruhn et al., 2019)(Iwasa et al., 2023)
不妊治療では、とくに30歳代後半から、このような年齢による変化にも注意していく必要があります。
このため、妊娠を考える時には、卵子の「数」だけでなく、加齢による「質」の変化もあわせて考えることが大切です。
受診について
不妊治療を考える時は、ご自身の年齢、検査結果、治療にかけられる時間や負担、治療に対する希望を踏まえて、どの治療から始めるか、どこまで治療するかを考えていくことが大切です。
不妊治療を考えている方、治療の進め方について相談したい方は、不妊診療科初診をご予約のうえ、ご相談ください。当センター不妊診療科では、年齢を問わず不妊治療についてご相談いただけます。
受診方法については、こちらをご覧ください。
(参考文献)
Cleary-Goldman J et al. Obstet Gynecol. 2005;105(5 Pt 1):983-990.
Gruhn J et al. Science. 2019;365(6460):1466-1469.
Iwasa T et al. Reprod Med Biol. 2023;22(1).
Konishi S et al. 人口学研究. 2018;54:1-18.
Lai S et al. Hum Reprod Update. 2024;30(2):174-185.
Schorsch M et al. Geburtshilfe Frauenheilkd. 2013;73(8):808-811.
Steiner AZ, Jukic AMZ. Fertil Steril. 2016;105(6):1584-1588.
Zhang D et al. Int J Gynaecol Obstet. 2024;167(1):142-153.



