【不妊症治療中の患者さん向け】先進医療B「タクロリムス投与療法」を行っています
重症の不妊症患者さんに対して「タクロリムス」というお薬の有効性と安全性を調べるための「タクロリムスの多施設共同2用量単群比較試験」という臨床試験を行っています。
タクロリムスとは
タクロリムスは、臓器移植を受けた患者さんや自己免疫疾患などに使用されている「免疫抑制剤」です。約10年前から行われている試験結果より、不妊症に有効な可能性があるお薬として紹介されていますが、まだ日本では不妊症に対しての適応はありません。
不妊症に対するタクロリムス使用の期待
不妊の原因の一つとして「着床前の子宮内環境が受精卵を受け入れる体制にないこと」「受精卵に対する拒絶反応が強いこと」により妊娠が成立しないのではないかと考えています。つまり免疫機能が働きすぎてしまい受精卵を拒絶し着床しない可能性があるかもしれない、ということです。
この病態は原因不明の不妊症の一因であると考えられ 、既存の治療法では不成功を繰り返しています。
この試験では、タクロリムスという免疫抑制剤を投与することで、免疫機能の働きを抑え、受精卵の受け入れに最適な免疫環境を作り妊娠成立に寄与することが期待できると考え、有効性を検証するために実施しています。
対象となる方
- 胚移植を3回以上行い、かつ移植に用いた胚が合計4個以上であっても一度も生化学的妊娠に至らない方。
- 妊娠に至らない原因が特定されていない方。
- 年齢が18歳以上40歳未満の方。
- 受精・培養後の凍結胚が確保されている方。
- 試験期間を通じ、継続しての通院もしくは入院が可能な方。
- 本試験の参加についてパートナーの同意も得られる方。
費用負担について
- 本試験の参加中に実施する必要がある検査項目の内、子宮内膜検査・免疫学的検査の費用と、使用するタクロリムスの薬剤費用については、患者さんの費用負担はございません。その他の検査項目によっては、患者さんにご負担いただくものもございます。
- 胚移植は基本的に保険診療で行います。
- 試験終了後の妊娠経過中に必要な費用は自己負担となります。
- 東京都にお住まいの方は「東京都特定不妊治療費(先進医療)」の助成金の申請が可能となります。詳しくは東京都HPをご確認ください。https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/kosodate/josei/funin-senshiniryou/gaiyou.html
スケジュールについて
決められたスケジュールに沿ってご来院いただきます。
- 同意取得後は、検査を実施し試験に参加いただくことができるか確認をします。確認後治療が開始されます。
- タクロリムス投与期間:胚移植の2日前~胚移植の13日後まで。
- 終了:胚移植後の判定後妊娠が成立した場合は胎嚢確認まで。
詳細は、ご説明時にお知らせいたします。
お問い合わせ
国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター
研究開発代表医師:山口 晃史
研究開発責任医師:齊藤 隆和
連絡先:TEL 03-3416-0181 内線8109(月~木 10時~16時)
E-mail:事務担当(山下 陽子) senshinB63@ncchd.go.jp