国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

代表: 03-3416-0181 / 予約センター(病院): 03-5494-7300
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患者・ご家族の方へ Patient & Family
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脳神経外科

基本情報

脳神経外科では、先天奇形、水頭症、脳腫瘍、もやもや病、てんかん等の多岐に渡る疾患に対し、個々の病態に応じた適切な治療を行っています。
子どもの脳と脊髄の病気を外科的に治療することが、“子どもの脳神経外科”すなわち“小児脳神経外科”の役割です。しかし、多くの方が、『小児脳神経外科ってなに?』『子どもの脳神経外科は大人と違うの?』『子どもは何が特別なの?』と思うかもしれません。
脳神経外科は、頭部外傷やくも膜下出血の治療などを通してよく知られるようになりました。小児脳神経外科は、脳神経外科学の中でも血管障害、腫瘍、脊椎・脊髄疾患、外傷、機能的疾患(てんかん、不随意運動、痙縮)と同様に、独立した専門分野です。しかし、日本では小児の脳神経外科的疾患に対する認識が不十分なため、専門分化が遅れ、小児患者でも一般の脳神経外科病棟で治療されています。
小児脳神経外科の疾患を年令別にみると、新生児・乳児期は脳の未熟性による新生児頭蓋内出血や水頭症、脊髄髄膜瘤・二分脊椎のような先天奇形が代表的な疾患です。幼児期から学童期では、外傷や腫瘍の占める割合が高くなります。10台半ばでは、若い成人と同じ疾患になり、外傷が多くなります。成人の脳神経外科手術の中心の脳血管障害は、小児では少なく、モヤモヤ病など特殊なものが多いという特徴があります。また、同じ外傷でも大人とは違った経過、症状をとるものもあり、注意が必要です。
子どもの診察・治療・手術では、常に発育・発達・自然矯正の視点を持つことが重要で、小児脳神経外科でも同様に重要です。小児の一生にわたる疾患として、脳の病変に対しては知能発育の観察が、脊髄病変であれば機能障害に対する援助が必要になります。身近な病院、地域の小児科医等との連繋も不可欠です。
当センターは、国内で5番目の国立の高度先進医療センターとして、2002年3月に開設され、脳神経外科は新設科の一つとして活動しています。当科の取り組む領域として、4つの柱を考えています。

1.一般小児神経外科(水頭症、先天奇形、腫瘍など)
2.小児救急(頭部外傷、脊椎・脊髄損傷)
3.小児の機能的疾患(てんかん、脳性麻痺など)
4.周産期の脳神経外科(母体保護、胎児治療)

小児という立場からは、4は母体・胎児の治療で少し異なりますが、当センターの担うべき役割に基づいて取り組む領域です。
小児脳神経外科は手術だけではなく、その後の成長を見守ることも非常に大切です。手術の対象になる子どもは、経過によっては再手術、複数回の段階的手術が必要になることもあります。長期にわたる家族との信頼関係は、治療を進めていく過程で欠くことができませません。
当センターの歩みとともに、難易度の高い病変を伴った患者、あるいはこれまでの治療が思わしくないため紹介される患者も増えています。どのような患者に対しても、小児脳神経外科の最後の砦として、可能な限り、治療を提供することのできる実力を備えるように努めています。また、難易度の高い手術・新たな治療法の開発が期待される分野についても、関係各科と密に協力し、積極的に取り組んでいます。

診療内容・業務内容

○特徴

1.内視鏡を用いた低侵襲手術を推進しており、水頭症・脳腫瘍生検術に積極的に内視鏡手術を行っています。(2013年度内視鏡手術件数:48件)
2.小児頭蓋底外科の国内の拠点として、手術困難な小児頭蓋頸椎移行部(キアリ奇形、大後頭孔狭窄、環軸椎亜脱臼など)の外科治療を行っています。
3.術中神経生理学的手技を駆使し、難易度の高い手術を安全に行っています。
4.小児がん拠点病院として豊富な脳・脊髄腫瘍の手術経験を持ち、小児がんセンターの一翼を担っています。
脳性麻痺・神経疾患由来の痙縮(手足の筋緊張過亢進)に対し、神経内科・リハビリテーション科とともに包括的チーム医療を行っています。

専門分野

脳神経外科手術では、麻酔科・手術室の協力や、ICU・NICU・総合診療部の献身的な術後管理のもと、難易度の高い手術を行っています。以下、主な対象疾患とその治療について説明します。

○対象疾患

水頭症

水頭症治療は原則として脳室腹腔短絡術(以下VPシャント)を行いますが、当科では乳幼児でも適応があればご両親と相談の上、積極的に神経内視鏡による治療を行っています。通常は、第3脳室底開窓術を行いますが、必要に応じて、嚢胞開窓術や中隔開窓術などを行います。当科で再評価した内視鏡的脈絡叢凝固術は国内外で大きく注目されており、今後も適応を広めていきたいと考えています。
また、合併症の心配がつきないVPシャント術に代わる、内シャントを用いた手術の適応を見極め、内シャントに取り組んでいます。胎児水頭症に対する取り組みも積極的に行っており、新生児の状態や水頭症の病態に応じ、治療方針を立て手術を行います。現在まで、当センターにおけるVPシャント新設時のシャント感染の割合は2%であり、一般の5-10%と比較し、低い割合になっています。

二分脊椎

脊髄脂肪腫の手術は、PAL-1という電磁波を用いて脂肪腫を切除し、脊髄係留を解除します。困難な症例の紹介が増えていますが、術中生理学的手技を駆使し、下肢運動機能や排尿機能を温存した安全な手術を目指しています。脊髄髄膜瘤手術では、神経修復を脳神経外科で行い、皮膚欠損部の閉創は形成外科が行っています。キアリ奇形に由来する呼吸障害は、大後頭孔及び上位頸椎減圧術が必要ですが、頸椎減圧は骨形成的に行うことで、将来の頸椎変形を予防する手術を行っています。

小児脳腫瘍

小児の脳腫瘍は、悪性神経膠腫・髄膜腫・下垂体腫瘍が大部分を占める大人の脳腫瘍に比べ、非常に多くの種類があります。小児の5大脳腫瘍は、星細胞腫、胚細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫ですが、この他にもPNET、乏突起細胞腫、脈絡叢乳頭腫、神経節膠腫、AT/RT、松果体腫瘍等、多くの種類があります。また、年齢、発生する場所、大きさの違いもあります。
このため、小児脳腫瘍の治療は、個々の病態に応じたテーラーメード(既製品でなく、個人の体型に合わせたオーダーメードの服を作るような)の治療が必要です。当院では、脳神経外科、腫瘍科(薬による化学療法を行います)を主体とした脳腫瘍治療チームが、放射線科、病理科、麻酔科、集中治療科、小児神経科、リハビリテーション科、内分泌科の各専門医の協力のもと、脳腫瘍カンファレンスで治療方針を決定し、手術・化学療法・放射線療法による包括的な治療を行っています。
外科治療は、必要に応じて、神経ナビゲーション(腫瘍や周辺の重要な脳組織の位置を正確に知ることができます)、術中神経生理学的手技(重要な神経機能をリアルタイムでモニターし、機能の温存を図ります)を用い、脳の深部から脊髄までの腫瘍摘出を行います。良性腫瘍(一般に手術で根治できる可能性が高いです)では、後遺症を残さないように、可能な限り全摘出することを目指した手術を行います。腫瘍が運動野・言語野のような重要な機能のある部位にある場合は、てんかん外科の技術を応用した機能同定を手術中に行い、安全な腫瘍切除を目指します。出血しやすい、サイズが大きい、また周辺に重要な神経組織がある腫瘍では、まず組織診断を行い、必要に応じて2回にわけて腫瘍切除術を行うこともあります。
重要な脳の機能が集まる脳幹部に浸潤した腫瘍に対しても、術中神経生理学的手技・神経モニタリングを駆使して可及的に切除しています。脳幹部びまん性神経膠腫に非典型的な画像所見を示すものは、生検術を行います。これにより、びまん性神経膠腫以外の病理所見が得られる場合もあり、PNETに対しては化学療法・放射線療法を、毛様細胞性星細胞腫に対しては化学療法を行います(Ogiwara H et al., The efficacy of a biopsy of intrinsic brainstem lesions for decision making of the treatments. Childs Nerv Syst, 2013)。
頭蓋咽頭腫などの下垂体(ホルモンが作られます)周辺にある腫瘍では、内分泌科と共同で治療に当たります。
また、まれな疾患で画一的な治療の存在しない小児脳腫瘍については、最新の治療を検討する研究会議にも参加し、より良い治療の実践を図っています。
小児脳腫瘍のセカンドオピニオン外来も受け付けております。
奇形種 手術前の画像
奇形種 手術前
奇形種 全摘出後の画像
奇形種 全摘出後

頭蓋骨縫合早期癒合症

頭蓋縫合早期癒合による頭蓋変形に対しては、形成外科と共同で頭蓋拡大形成術を行います。頭蓋変形が重度、あるいは複数の場合は、段階的に手術計画を練る必要があります。また、状況に応じて頭蓋骨延長器装着による矯正を図ります。発達障害を伴った軽症三角頭蓋に対しては、当センターの倫理審査委員会の承認を得て、第1段階として頭蓋内圧測定を行い、頭蓋内圧亢進と診断された場合にのみ、第2段階として頭蓋拡大形成術を行っています。手術を受けた患者の多くは社会性、言語発達などに改善がありますが、手術の直接効果によるものかについては、慎重に評価しています。

頭蓋底病変

頭蓋底脳瘤(経蝶形骨型)は、脳瘤の中でも最も治療困難かつ致死率の高い頭蓋底病変です。手術は形成外科と共同で経口蓋法で行います。巨大例では、更に二期的に前頭蓋底法で手術を行い修復します。このような方法で下垂体機能あるいは視機能に障害を出すことなく治療しています。
頭蓋頸椎移行部病変は、軟骨無形成症のような代謝疾患に伴うもの、骨異常に伴うもの、いずれも小児で極めて治療困難な場合も少なくありません。当センターでは、神経ナビゲーションを用いて、術中神経生理学的手技として運動誘発電位のモニタリング下に、減圧あるいは固定術を行っています。

てんかん

薬物治療が困難なてんかんに対しては、神経内科と共同で適応を判断して外科手術を行います。術前にビデオ脳波記録、MRI、脳血流検査、脳磁図などをもとにてんかん焦点の予測を行い、まず硬膜下電極設置術を行います。これによりてんかん焦点の同定、脳皮質機能同定を行なった後、2回目の手術時にてんかん焦点切除を行っています。

痙縮・脳性麻痺

脳性麻痺に代表される痙縮の治療は神経内科、リハビリテーション科と共同で行っています。脳神経外科的には痙縮を減弱させる機能的脊髄後根切断術(主に脳性麻痺小児対象)、あるいはバクロフェンポンプ埋め込み術(脳炎、脳症後遺症、頭部外傷・脊髄損傷後遺症など)を行ないます。必要に応じて神経内科におけるボツリヌス毒素局所注入療法も行なっています。当センターの特徴として、手術後のリハビリテーションも含めて、痙縮に対する包括的治療が可能です。

もやもや病

もやもや病では、広範囲の脳に血液を送る内頸動脈が細くなったり、閉塞してしまいます。その代わりに非常に細い“もやもやした”血管ができます。しかし、この“もやもや血管”だけでは脳への血流が低下し、一時的な手足のマヒや、言葉が出にくくなるなどの症状を生じます。このような症状を繰り返して脳梗塞や知能低下に至るものもあります。 治療は、脳への血流低下を改善するために、“血行再建術”を行います。血行再建術には直接法と間接法があります。 間接法では脳の表面に血管、筋肉、硬膜を付着させます。これらの組織から脳に入る新しい血管が数カ月かけて形成されて脳の血流を改善します。通常、小児のもやもや病では脳の血流が低下しているので新しい血管は非常に良く形成されます。
通常の間接法ではEDASと呼ばれる手術が行われます。EDASにより中大脳動脈領域の血流は改善されますが、高次脳機能の発達に重要な役割を果たす前大脳動脈領域の血流の改善は十分となりません。当施設では、bifrontal EGSという方法も併用し前大脳動脈領域の血流の改善も行っております(Ogiwara H et al., Bifrontal encephalogaleosynangiosis for children with moyamoya disease. J Neurosurg Pediatr, 2012)。
直接法では脳の表面の血管と頭皮の下を走行する血管をつなげます。手術した時点から脳の血流が改善します。個々の症例で検討して最善の方法を選択しています。 
もやもや病のセカンドオピニオン外来も行っています。
もやもや病 手術前の画像
もやもや病 手術前
もやもや病 手術後の画像
もやもや病 手術後

脳動静脈奇形

通常、動脈と静脈の間には毛細血管があり、高い動脈の圧が直接静脈にかかることはありません。しかし、脳動静脈奇形では、毛細血管を経由しないで、太い動脈と静脈が直接つながります。その結果、動脈の圧が直接静脈にかかり、壁の薄い静脈の血管が破れて出血を起こします。
治療は、手術により脳動静脈奇形を取り除く、または定位放射線療法により脳動静脈奇形の血管を閉塞させることにより、脳出血を予防します。
手術は速効性があります。放射線療法では血管を閉塞させるのに2年程度かかりますが、脳の重要な機能が存在する脳幹部などでは、比較的安全に行うことができます。
出血の有無、部位、大きさ、症状に応じて、手術、定位放射線療法、血管内治療による塞栓術、またはその組み合わせによる最善の治療を行っていきます。
通常、術前に血管内治療による塞栓術を行い、脳動静脈奇形に流れる主要な血管を閉じておくことにより、より安全な手術を行います。
脳動静脈奇形 手術前の画像
脳動静脈奇形 手術前
脳動静脈奇形 摘出術後の画像
脳動静脈奇形 摘出術後

診療実績

2015年の手術を紹介します。
2015年 総手術件数 Total number of surgery: 339 procedures
水頭症 Hydrocephalus 114

VP/SP他シャント(新設) VP/SP/VA etc.shunt, newly setup 35

VP/SP他シャント(再建) VP/SP/VA etc. shunt, revision 17

神経内視鏡手術 Neuroendoscopic surgery 26

その他 Others 36
先天奇形 Congenital anomaly 138

二分頭蓋 Cranium bifida 3

脊髄髄膜瘤 MMC/Meningocele 8

脊髄脂肪腫(脂肪脊髄髄膜瘤含む) Spinal lipoma 51

脊髄係留症候群 Tethered spinal cord syndrome 47

頭蓋骨縫合早期癒合症 Craniosynostosis 16

嚢胞性病変 Cystic lesion 7

頭蓋頚椎移行部病変 CVJ lesion 3

その他 Others 3
腫瘍 Tumor 41

脳腫瘍 テント上 Brains tumor supra tentorial 21

同 テント下           Infratentorial 14

脊髄腫瘍 Spinal cord tumor 3

頭蓋骨 Skull tumor 3
機能的疾患 Functional lesion 10

バクロフェンポンプ埋め込み ITB pump implantation 8

同 再建・交換 ITB revision/pump renewal 2
てんかん Epilepsy 3

脳梁離断術 Callosotomy 2

硬膜下電極設置術 Subdural electrode 1
血管障害 Vascular lesion 17

もやもや病/類もやもや病 Moyamoya disease 13

頭蓋内出血 Intracranial hemorrhage 1

脳動静脈奇形 塞栓術 AVM/AVF embolization 1

同 直達術           direct surgery 1

脳動脈瘤クリッピング術 Clipping of aneurysm 1
外傷 Trauma 7

硬膜下血腫・液貯留 Subdural Hx./ fluid collection 4

急性硬膜外血腫 Acute epidural Hx. 2

頭血腫 Depressed fx.,others 1
その他 Others 9

※2015年手術実績339件の内訳
水頭症114(うち、内視鏡手術26)件/先天異常(脊髄髄膜瘤、脊髄脂肪腫など)138件/脳・脊髄腫瘍41件/てんかん・脳性麻痺13件/血管障害 17(血管内治療も含む)件/外傷7件/その他 9(脳炎、脳膿瘍など)件

受診方法

受診には予約が必要です。予約センターに連絡し、予約してください。予約の変更も予約センターで対応します。初めて受診(初診)する場合は、医療機関(医院、病院)からの紹介状が必要です。
再診の方は、予約センターで予約してください。曜日毎に担当医が決まっているため、担当医の希望があれば、予約時に伝えてください。

外来診療担当表は、こちらをご覧ください。
受診方法については、こちらをご覧ください。

スタッフ紹介

医長 医員 フェロー レジデント
荻原 英樹 宇佐美 憲一 広川 大輔 洪 碩佑(ホンソウ)

医療従事者の方へ

小児脳神経外科は手術だけでなく、その後の成長を見守ることも非常に大切になります。手術の対象となるこども立ちは何らかの障害を負っていることも少なくなく、経過によっては再手術、複数回の段階的手術が必要になることもあります。長期にわたる家族との信頼関係は治療を進めていく過程で欠かせません。

国立成育医療研究センターの歩みとともに、難易度の高い病変を伴った患者さん、あるいはこれまでの治療が思わしくなく紹介されてくる患者さんも増えてきています。どのような患者さんに対しても、小児脳神経外科の最後の砦としてできるだけの治療を提供できる実力を備えられるようにしたいと考えています。また、難易度の高い手術・新たな治療法の開発が待たれる分野に対しても、これまで通り関係各科と密接な協力をし、積極的に使命感を持って取り組んでいくつもりです。