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整形外科

基本情報

整形外科は運動器疾患や運動器の外傷を取り扱い、その守備範囲は骨、関節、靱帯、脊椎・脊髄、手足の神経および筋肉と多岐にわたります。成人の整形外科と小児整形との最も大きな違いは、小児では成長による変化が大きいことです。成人では問題となるような骨折の変形治癒でも、小児では成長に伴い自然矯正される例がある一方、成長とともに変形・機能障害が徐々に悪化することもあり、成長という要素を考慮して治療を行っていくことが重要です。そのため、治療の評価には、少なくとも数年の経過観察が必要で、成人にならないと本当の意味での治療の評価ができない疾患もあります。

また、手術を含めた治療のタイミングも難しい問題で、これは単に医学的要素のみならず、就学との関連で様々な制限が加えられることも少なくありません。
さらに、小児では注射や投薬にたよる治療は少なく、装具療法や手術が治療の主体となることも特徴です。
小児整形外科の対象疾患の代表として、先天性股関節脱臼、先天性内反足、先天性筋性斜頚などがありますが、近年、股関節脱臼や筋性斜頚は予防についての啓発が広まり、手術になる症例は著明に減少しています。
また、骨形成不全症、軟骨無形成症、多発性外骨腫、骨端異形成症、くる病などの先天性および後天性骨系統疾患、二分脊椎、脊椎側弯症などの脊椎疾患、脳性麻痺による四肢の変形や分娩麻痺などの神経障害、良性および悪性骨腫瘍に代表される腫瘍性疾患、若年性関節リウマチ、単純性股関節炎などの炎症性疾患、ペルテス病、オスグット病などに代表される骨端症なども小児整形外科の対象疾患です。

他にも、O脚、X脚、片側肥大などの下肢のアライメント異常、先天性の脛骨欠損症、腓骨欠損症、先天性下腿偽関節症、大腿骨形成不全症といった四肢の先天性骨欠損ないしは形成不全、化膿性関節炎や骨髄炎、骨折などが治癒した後の遺残変形や成長障害に対する再建、合指症、多指症、裂手症、橈側列形成不全(母指形成不全)などの手や足の先天異常や、四肢の骨折なども対象疾患です。

小児の骨軟部腫瘍については、小児特有の疾患や病態があります。そのため、専門的な知識・経験を持った医師が1ヵ月に2回、専門外来を担当しています。


診療内容・業務内容

主な対象疾患

日常生活で手足を少しでも使いやすくすることを念頭におき、診療しています。治療対象は四肢の先天異常や発達異常、外傷後変形が中心で、矯正ギプスや装具療法、手術が中心です。複数回の手術を計画する場合もあります。

小児整形外科の対象疾患の代表として、先天性股関節脱臼、先天性内反足、先天性筋性斜頚などがあり、当院でも診療機会が多く、重傷度に応じた治療を行っています。

また、骨形成不全症、軟骨無形成症、多発性外骨腫、骨端異形成症、くる病などの先天性および後天性骨系統疾患、脊椎側弯症・後弯症などの脊椎疾患、脳性麻痺による四肢の変形や分娩麻痺などの神経障害、良性腫瘍性疾患、若年性関節リウマチ、単純性股関節炎などの炎症性疾患、ペルテス病、オスグット病などに代表される骨端症なども対象です。

さらにO脚、X脚、片側肥大などの下肢のアラインメント異常、先天性の脛骨欠損症、腓骨欠損症、先天性下腿偽関節症、大腿骨形成不全症といった四肢の先天性骨欠損あるいは形成不全、化膿性関節炎や骨髄炎、骨折などが治癒した後の遺残変形や成長障害に対する再建、合指症、多指症、裂手症、橈側列形成不全(母指形成不全)などの手や足の先天異常や、四肢の骨折なども診療しています。

四肢の変形の治療に際しては、イリザロフや他の延長用器械を用いた骨延長や変形矯正、運動機能障害には血管柄付き筋・筋膜移植、遊離複合組織移植による筋や骨格再建を行っています。


専門分野

対象疾患

手や足の先天異常

当センター整形外科は開院以来、多くの手足の先天異常の治療に携わっており、現在も年間200例近くの手足の先天異常の手術を行い、国内有数の先天異常を扱うセンターとなっています。その種類はきわめて多彩であり、全国から紹介患者を受け多くの症例の経験があるのが当センター整形外科の特徴です。

手足の先天異常には、指同志が癒合している合指症、指の数が多い多指症、指数が1~2本足りなく手のひらが裂けているような裂手症、巨大な指を持つ巨指症、輪ゴムが食い込んだ様な皮膚でしばしば指が短かったりくっついたりしている先天性絞扼輪症候群、親指が小さくぶらぶらだったり、時には全く欠損している母指形成不全症など様々なものがあります。
遺伝性は明確でないことが多いのですが、時に心臓の異常を合併することがあります。また全身の様々な障害を合併する先天異常疾患で、手指・肘などの形態異常を伴う症例も少なくありません。

治療

疾患の種類・程度により、生後6カ月頃から3~4歳までと手術の至適時期は異なり、障害程度が強い場合には、治療が難しいことがあります。多指症や合指症など、多くの場合、整容的な改善が治療の目的ですが、手の先天異常は見かけの異常だけでなく、ものをつまんだり、握ったりする手の機能の障害を少なからず伴っており、外観の改善だけでなく少しでも使いやすい手に直してあげることが求められます。
母指形成不全症には、筋肉の萎縮がわずかに見られるものから親指が全く欠損するものまで様々な段階があります。
親指の障害はものをつまむ・つかむ動作に重大な障害をきたすため、機能再建術が必要です。おおむね1~3歳頃で、骨を移植したり筋肉を移動させる治療を行いますが、数回の手術を要することもあります。
母指が完全に欠損する症例では、母指化術といって示指を母指の方向に移動させ、母指の役割を持たせる手術が行われます。 母指が小さくぶらぶらなもの(フローティングサムといいます)ではこの母指を切除して、示指を移動させる母指化術が選択されることが多いのですが、何とかももともとある母指を残して使える様にしたいという希望に対し、当科では足からの骨移植などにより、可能な限り母指を温存し、かつ使える母指を目指して治療を行っています。
また、母指形成不全症では内反手といって手首が横に強く曲がっていることもあり、これも再建手術が必要です。
一方母指形成不全では、母指がやや小さく母指球筋部分が陥凹しているだけの比較的軽症例では、年長になるまで気がつかれないこともあります。
最新の医学技術を駆使しても欠損している指を作ることはできませんが、創外固定という装置を使うことで、骨を延長し指を長くして、ものを掴みやすくする手術を行うことも可能になってきています。外観の異常が特に目立たなくても、生まれつき指が曲がったまま伸びなかったり、動きの制限がある場合も、手術による改善が期待できることがあります。

以上のように、まれな手指の先天異常な場合、一般の整形外科医・形成外科医に相談に行かれても、なかなか適切な説明が得られないことが少なくありません。治療方法のみならず、治療時期も重要な要素ですので、疑問な点がありましたら、当センター整形外科にご相談下さい。

このように多くの先天異常の治療に携わっていますが、現在、生まれつき腕の欠損したお子さん(先天性上肢形成不全、先天性横軸形成障害)へ義手の研究・診療やそのほか各種研究・診療を行っています。

国立成育医療研究センター整形外科 診療部長 高木岳彦

E-mail: ortho@ncchd.go.jp

*お問い合わせはメールにて受け付けております。
研究の進行状況により随時変更する場合もあります。
なお、当センター整形外科では国内・海外より医師の見学・短期研修を受け入れています。お気軽にご相談下さい。

先天性橈尺骨癒合症

肘周辺の先天異常の中では最も頻度が高い疾患で、肘の近くで、前腕の橈骨と尺骨が癒合している状態です。
男児に多く、時に家族性に発症し、両側性の症例も見られます。
前腕の回旋運動制限が主たる症状ですが、多くは手のひらが下を向く前腕回内位で固定されています。
回旋制限は肩関節である程度代償されるため、中間位で固定されている例では日常生活上問題がなく診断が遅れることもしばしばです。
手関節・肘関節の屈伸可動域は通常正常であり、"お茶碗の持ち方がおかしい"、"鉄棒の逆上がりができない"、"洗顔時に手のひらで水をためられない"、"野球の時にグローブでうまくゴロが拾えない"、などのエピソードで初めて障害が判明する例も少なくありません。

治療

日常生活で特に障害がなければ、治療は不要とする考え方もありますが、私どもでは治療が可能であれば、機能的改善を目指すべきだと考えています。
治療は、骨切りにより固定肢位を変換する手術と、癒合部を切離して回旋運動を獲得する目的の手術に大別されます。
先天性橈尺骨癒合症では前腕、特に橈骨の彎曲異常が強いため、単に癒合部分を切離しただけでは、回内外可動域(回旋運動)を獲得することは困難で、また癒合部を切離しても再癒合することが多いため、従来は癒合部あるいは橈骨の遠位1/3部位での回旋骨切りを行い、回内位(手のひらが下を向いた状態)に固定されている肢位を中間位あるいはやや回外位の肢位に変換することが行われていました。
最近は橈骨の矯正骨切りと血管柄付の脂肪の挿入などの組み合わせで、極端に重症例以外ではある程度の動きが得られるようになってきました。
全国的にもこの方法が行える施設は限られていますが、当センターでは年間10例近くの手術を行っています。
手術は、年長になっても可能ですが、就学前の5~6歳ごろが推奨されます。

ばね指

生後数ヶ月から2歳頃に気がつくことが多いのですが、指を曲げる腱(屈筋腱)を支える腱鞘にはさまれて、腱の滑りが悪くなることが原因です。
指が伸びなくなったり曲げ伸ばしの時にばね現象といって引っかかりが生じたりすることが症状ですが、新生児の時には発症していないことがあり、発症時期は明らかではありません。
引っかかりが強い場合には、指が曲がったまま伸びなくなり、少し軽くなると曲げ伸ばしは一応できるものの、動きがばねのようになる"弾撥現象"と表現します。

治療

指の曲げ伸ばし運動を改善させるために、以前は手術により腱鞘を切開していましたが、親指の先端の関節を添え木などでしばらく固定すると症状が改善することが多く、最近では手術を行うことはほとんどありません。
固定方法は難しくありませんが、紛らわしい状態として、親指を伸ばす筋肉の発育障害や、曲げる筋肉や皮膚が硬くなっていることが原因の場合もありますので、まず専門医を受診してください。

分娩麻痺

狭い産道を赤ちゃんが通過するときに、首から手に向かう神経(腕神経叢)が引っぱられたことにより生じる神経の損傷です。最近は発生頻度が少なくなりましたが、母親の骨盤が狭いときや、赤ちゃんが大きい(巨大児)は要注意です。分娩麻痺が生じると、ほとんど片方の手を動かすことができませんが、多くの例では、生後数ヶ月で少しずつ改善してきます。しかし、生後6カ月を過ぎても、手や肘が動かせない重症例では、生活上問題となる重大な機能障害が残ってしまいます。

治療

最近は重度の分娩麻痺の発生率が低いため、産科医・小児科医あるいは一般の整形外科医ではどの程度の障害が残るのか、有効な治療の手段があるのかわからないことが多く、本症の治療を積極的に行っている施設は限られています。
以前は単に経過を見ていくことに終始していましたが、最近では神経損傷や遺残障害に対して積極的な治療を行い、有用な改善が得られるようになってきましたので、乳児例・幼児例を問わず障害が残っている場合にはご相談下さい。

スプレンゲル変形(肩甲骨高位症)

まれな先天性疾患で、肩甲骨の位置が左右で数センチ違うため、肩の高さが違ってくる疾患です。
これに伴い首が横に曲がっていたり、手がバンザイできなかったりします。
裸になって背中を観察すれば、本疾患かどうかは比較的簡単に判断できます。

治療

軽症であれば特に治療は必要としませんが、整容的に著しく目立つときや、肩の挙上が著しく制限されたり、首の曲がりが強い場合には手術が必要です。
手術方法は、肩甲骨の位置、肩甲骨周囲の筋肉の状態、肩甲骨と脊椎を連続する異常骨の有無などにより、選択されます。

肘関節周辺の外傷

肘関節周辺骨折は小児の外傷の中でも頻度が高く、後遺障害が問題となることも多い外傷です。
骨折型により治療方針は異なりますが、小児の肘関節は軟骨部分が多く、骨端核の性状が年齢によって変化するため、単純X線で骨折部位の判断が難しいことがあります。
神経麻痺やフォルクマン拘縮に代表される血流障害など受傷直後に生じる合併症のみならず、変形治癒や成長障害などにも十分考慮して治療にあたることが重要です。
以下代表的な外傷(骨折)について解説します。

上腕骨顆上骨折

主に3~8歳頃に生じる頻度の高い骨折で、小児肘周辺骨折の過半数を占めます。 受傷原因は高所よりの転落あるいは転倒の際に手をつくことがほとんどです。
単純X線での診断は比較的容易で、ズレが軽く安定していれば、3~4週間の肘関節90°屈曲位ギプス固定で問題ありません。
骨折の転ズレ(転位)が大きい場合徒手整復を行いますが、整復位の保持が難しいため、麻酔をかけてピンで固定する必要があります。
また絆創膏による垂直牽引も有用です。
稀に神経・血管損傷を伴うことがあり、受傷後しばらくは手指の運動・知覚の状態の把握と、橈骨動脈の拍動の確認が必須です。
骨折がつかなくなる(偽関節)ことはほとんどありませんが、転位を残して癒合したときには内反肘変形となり、追加の治療が必要となってきます。

モンテジア骨折

尺骨骨折と橈骨頭脱臼の合併損傷で、しばしば橈骨頭の脱臼が見逃されることがあります。
正確な側面X線像による診断が重要で、新鮮例であれば尺骨の整復により橈骨頭の脱臼の整復は可能で、肘関節鋭角位でのギプス固定を行います。
陳旧例となると、尺骨の変形は自然矯正されて橈骨頭の脱臼だけが残存します。
陳旧例でも橈骨頭の変形が著しくない場合には、尺骨の過矯正骨切りにより、橈骨頭の整復を行います。

上腕骨外顆骨折

顆上骨折に次いで頻度の高い骨折で、骨折線のほとんどが軟骨部分であるためしばしば診断が誤られることがあり、上腕骨小頭骨端核の位置・回旋を注意深く観察することが重要です。
骨折線が関節の中に及んでいるため、治療法を誤ると小児骨折では珍しく偽関節となることも稀ではなく、転位が大きい症例では手術が必要です。
偽関節となると、次第に外反肘変形が増強し、成人になり遅発性尺骨神経麻痺といって手の痺れや筋力低下が生じることがあります。

その他の肘周辺骨折とその後遺障害

その他、上腕骨内上顆骨折、肘頭骨折、橈骨頭頚部骨折、上腕骨遠位骨端離開、上腕骨外上顆骨折、上腕骨内顆骨折など様々な骨折型があります。
いずれも発生頻度は比較的低いものの正しい治療を行わないと後遺症を残すことが多いのが、小児の肘関節周辺骨折の特徴です。

当センターでは、新鮮骨折の治療だけでなく、拘縮・変形治癒・偽関節などの後遺障害の治療についても積極的に取り組んでいます。(内反肘・外反肘の項目を参照)

内反肘・外反肘

人間の肘は、真っ直ぐ伸ばしたときに、5~15度程度外側にくの字になっているのが正常ですが、これが内側に曲がっている状態を内反肘、極端に外側に曲がっているのを外反肘と呼びます。
内反肘のほとんどは上腕骨顆上骨折などの骨折の後遺症で、外反肘は上腕骨外側顆骨折の後遺症です。
これらは自然に矯正されず、見た目の美容的問題だけでなく、しばしば成人になり遅発性尺骨神経麻痺といった神経障害や関節障害(不安定性)を引き起こします。

治療

内反肘の程度の強いものは、上腕骨の骨折部を骨切りして、矯正手術を行います。 外反肘の殆どは、外側顆の骨折が癒合せずに偽関節となっており、外反変形を矯正するだけでなく、骨を移植して偽関節部分を癒合させる手術が勧められます。

このような骨折の後遺症に伴う肘の変形については当院では先天異常とともに開院以来多くの紹介患者を受けています。それぞれの病態に応じて適切な手術治療を行っています。

肘内障

原因と症状

親が幼児の手を引っぱった際に、痛がって泣き出し、以後手を動かさないというエピソードが肘内障の典型です。
しばしば"子供の手が抜けた""肩が脱臼した"などといって来院しますが、これは手を引っぱったために、前腕の外側にある橈骨の頭の部分(橈骨頭)が周囲の輪状靱帯から半分抜け出るためです。
レントゲンでは特に異常はなく、また局所の腫れも見られません。最近は超音波画像で原因を確認することもあります。 肘内障は、2歳から4歳頃に多く発症し、1才未満では稀です。
肘内障では、正確に肘の部分を痛がることは少なく、他の外傷との鑑別も必要です。
転んで手をついたことや、打撲などでは肘内障になることは少ないので注意を要します。

治療

先に述べたようなエピソードであれば、肘内障と判断し、徒手整復を行います。
肘は伸ばされた状態にあるので、肘を外側に捻りながら曲げていくと、クリッと音がして整復されます。
徒手整復はできるだけ早く行うことが良く、その間温めたり冷やしたりする必要はありません。
また数時間からひと晩経過しても通常整復は可能で、時には自然に整復されることもあります。
整復後しばらくすると、子供は何ともなかったように手を動かすようになります。
受傷から整復までに数時間経過した場合などでは、手を動かすようになるまで少し時間がかかることもあります。
中には再発を繰り返す子供もいますが、不意に子供の手を引っぱらないことを心がけていれば、通常6歳を過ぎれば発症しなくなり、後遺症を残すことはありません。

野球肘

野球肘は野球による肘関節の障害すべてを含みますが、少年期には外側型の離断性骨軟骨炎、内側型の内側上顆骨端障害、後方型の肘頭骨端離開などがあります。

原因と症状

投球動作で肘関節の曲げ伸ばし動作は激しく繰り返されると骨や軟骨が成熟していないために、小児期特有の障害が生じます。
投球時痛が最初の症状ですが、はがれた軟骨がはまりこんで、動きが障害されることもあります。

治療

症状が出たら、まず1カ月程度投球を中止させます。
これで回復することもありますが、離断性骨軟骨炎では、放置すると軟骨が剥がれて関節遊離体となり、野球の継続が難しくなるだけでなく、可動域制限や疼痛を残します。
軽い症状でも、医師の診断を受け、病態を的確に把握することが大切です。
上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎では、損傷された軟骨を修復させる目的で、手術が必要となる症例も少なくありません。

変形矯正・骨延長

生まれつきの異常や、様々な病気が原因となって生じた手足の短縮や彎曲変形に対する治療は、小児整形外科の長年の課題ですが、近年創外固定といって、骨に固定したピンやネジに様々な矯正力をかけて、骨を延長したり曲がりを直したりする治療が可能となってきました。
軟骨無形成症やくる病その他の骨の成長障害などに対して大腿骨や下腿骨を延長して歩きやすくしたり、生まれつき手指の短い患者さんの指の骨を伸ばすことで、物を掴みやすくしてあげたりすることを行っています。
また外傷・多発性外骨腫・化膿性関節炎などによる成長障害や片側肥大(片方の足が太く長い)などに対する矯正も行っています。
創外固定ではイリザロフ法が有名で、当センターでも取り扱っていますが、創外固定の器機は必要に応じて使い分けています。

発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)

これまで、乳幼児期の股関節脱臼は先天性股関節脱臼とよばれてきましたが、出生後にも脱臼するものがあり、出生前、出生時にすでに脱臼している状態のみならず臼蓋形成不全などが伴う亜脱臼状態などのすべての病態を含めて発育性股関節形成不全とよばれるようになりました。
股関節は体重を支え、歩いたり走ったりするために重要な関節で、股関節脱臼をきちんと治さなければ、将来、痛みや歩行困難を起こす事があります。
発症頻度はおよそ1000人に1〜2人で、女の子は男の子の7〜8倍多く発生します。脱臼の程度で、完全にはずれた完全脱臼、はずれかかった亜脱臼、はずれてはいないが関節の屋根にあたる臼蓋の発育が悪い臼蓋形成不全に分けられます。

原因

生まれたとき、既に脱臼している事は稀で、大部分は脱臼しやすい素因をもつ子どもが、脚を無理に伸ばした状態で固定されるために起こると考えられています。また子宮内で胎児が殿位だった場合に起こりやすく、母親や祖母に股関節脱臼の既往がある子どももなりやすいようです。

症状

股の開きが悪くなる開排制限があります。おむつ換えの時などに母親が気づく事もありますが、乳児健診のときに両足の開き具合を調べるため、健診で指摘されることもあります。
脚を伸ばしたときの太もものしわの数が左右で違ったり、寝かせてひざを立てたときにひざの高さが違うといった症状で気づかれる事もあります。歩き始めてから足を引きずることに気づく場合もあります。

診断

視診、触診の上、X線検査や超音波検査で確定診断を行うことができます。

治療

臼蓋形成不全のみの場合は、臼蓋が発育するまで自然経過をみます。ほとんどの場合、自然に治りますが、亜脱臼や完全脱臼は、生後3〜4か月からリーメンビューゲル(足を開いて曲げた状態で、股関節に大腿骨頭が常に入っている状態を維持する装具)というバンドで治療します。しかし、この治療でも整復できない場合は、入院し牽引療法を行います。手術による整復が必要な症例もあります。

予後

適切な治療を行った場合、予後は良好ですが、成長の過程で再び悪化することもあります。経過が良好な場合も、成長が止まる15-6歳頃までの定期的な検査が必要です。

予防

出生後、はずれやすい状態にある股関節が、無理に脚を伸ばすと脱臼することがあります。脚を開いた状態が自然な脚の形のため、この自然な形や自由な脚の運動を邪魔しないように注意してください。
赤ちゃんの股の部分におむつをあて、脚を曲げたり伸ばしたりすることが自由にできるようにします。抱っこの時は、赤ちゃんの股の間に手を通して抱くようにします。赤ちゃんの両足を閉じるような横抱きはよくありません。
また、赤ちゃんの両足を閉じるように布でくるむこともよくありません。衣服はすそが広がっていて、足が自由に動かせるものにしましょう。腰まわりがぴったりするようなスパッツや長ズボン、上下つながっていて足が動きにくいような衣服はやめましょう。

ペルテス病

大腿骨の骨頭が一時的に壊死を起こす病気です。3〜6歳ころの男の子に多く見られます。大部分が片側ですが、両側に起こる事もあります。

原因

大腿骨の骨頭に栄養を送る血液の流れが、何らかの原因によって悪くなり、骨頭が一時的に壊死を起こすことが考えられています。喫煙世帯に多く、受動喫煙との関連が指摘されています。

症状

股関節の痛みと跛行がみられます。単純性股関節炎と違い、少しずつ症状が出現します。病気が進行すると、股関節の運動障害も出現します。

診断

X線写真では、大腿骨の丸い骨頭がつぶれ、その後分裂したように見えます。発病から約1か月経過した後に、X線写真で分かるようになります。発病初期は発見が難しいため、十分に注意する必要があります。早期診断や他の疾患と見分けるため、MRIが有効です。

治療

ペルテス病は1年半〜2年くらいで自然に壊死部が回復して元の丈夫な骨に戻ります。その間に、可能な限り、骨頭をつぶさないで治す必要があり、早期からの治療が重要です。
治療期間中、股関節の運動範囲を十分に保つこと、骨頭が股関節内に十分に収まっていることが大切です。運動障害がある場合は、牽引治療によって運動する範囲の回復を待ち、外転免荷装具を使います。
骨頭が股関節内からはみ出してくる場合は、大腿骨を切って骨頭を内側に傾ける手術が必要になります。

予後

適切な治療を行った場合、予後は良好ですが、残った骨頭変形の程度によっては変形性股関節症を起こし、痛みが出ることもあります。

単純性股関節炎

突然、歩行できないほど股関節が痛くなることが多く、頻度の高い疾患です。4〜6歳頃に多く、風邪をひいたあとに発症することもあります。

原因

風邪などが先行することが多く、ウィルス等に対するアレルギー反応が原因ではないかと考えられています。

症状

急に股関節が痛くなり、歩けないことがあります。年少児では膝の痛みを訴えることもあります。痛みが軽く歩ける場合にも跛行が見られます。

診断

子どもの股関節が痛くなる疾患は、化膿性股関節炎やペルテス病、年齢が高い場合は大腿骨頭すべり症など、後遺障害を起こす可能性のある疾患があり、これらの疾患と見分けることが大切です。
股関節に炎症が起こっている状態について、関節の可動域(動く範囲)などの臨床所見で診断可能ですが、他の疾患と見分けるためにX線写真、血液検査、MRIが行われます。特に、関節の中に膿がたまる化膿性股関節炎は、放置すると重篤な後遺障害を残す可能性が高いため、疑わしい場合は関節液を採取して判断します。

治療

多くの場合、安静のみで自然に治ります。症状が強い場合は入院して脚を牽引し、安静を保ちます。通常2〜3週間以内に痛みはおさまりますが、その後もしばらくは安静を保ちます。単純性股関節炎では、特に後遺障害を残すことはありません。

筋性斜頚

筋性斜頚は、片側の首の胸鎖乳突筋という筋肉が固く縮んで首が傾いている状態です。1000人に2~3人の割合で発生し、骨盤位分娩に多く、男女差はありません。

原因

何らかの原因で出生後胸鎖乳突筋にしこり(肉芽組織)ができ、その筋肉が短縮すると筋性斜頚になります。

症状

生後1週間頃から片方の首にしこりができ、しこりのある方に首を傾け、顔は反対側を向きます。しこりは、生後3週間を境に次第に小さくなります。しこりがない場合は、いつも同じ方向を向いている向き癖の場合があります。

治療

筋性斜頚の90%以上は1歳ころまでには自然に治ります。首がすわる生後3~4ヶ月くらいまでは、寝ぐせに気をつけて、頭の形をいびつにしないようにすることを心がけると良いでしょう。
赤ちゃんがいつもと逆の方向を見るように、反対側から声をかけるようにしたり、反対側に窓やライトがくるようにすると良いでしょう。以前はマッサージが行われていましたが、かえって周辺の組織が傷つき、症状が悪化しますので、マッサージは行ってはいけません。
3~4歳をすぎても治らない場合は手術になります。手術は胸鎖乳突筋を切りますが、その後切った部分がくっついてしまわないように、首の運動を行います。
1歳ごろに良くなったと思われていても、4~5歳頃に再び症状が目立ってくる事もありますので、3歳頃までは定期的にみてもらうと良いでしょう。

環軸関節回旋位固定

急に首が痛みを伴って傾き、戻らなくなる状態です。通常傾く方向の逆の方向に顔を向けます。
上気道炎等の頚部の炎症疾患の後や衣服の着脱時、振り向いたときなど首を動かしている間や後に一瞬力を抜いたときなどに起こることが多いようです。

原因

一番頭蓋骨に近い頚椎である第1頚椎が第2頚椎に対して回旋した位置で戻らなくなることで起こります。子どもは、第2頚椎の、第1頚椎を乗せている部分の傾斜が強く丸みを帯び、この部分が不安定なため、子どものみに起こると考えられています。

症状

強い痛みを伴って首を傾け、傾けた方向の反対に、顔を向けた状態で首が動かなくなります。

診断

頚部のリンパ節炎や頚椎捻挫などでも痛みを伴って首を傾けた状態になるため、鑑別には注意が必要です。頚椎の状態は三次元CTで簡単にわかりますが、実際に固定しているか、いくつかの方向を向いている状態でのCT撮影で診断されます。環軸関節回旋位固定では、その状態で戻らなくなっています。

治療

軽い症状の場合、特に治療の必要はなく、2~3日で治ります。1週間以上症状が改善しない場合は、牽引治療を行います。当院では持続牽引(グリソン牽引)を24時間、首の固定の終了後、約3週間程度まで行っています。
症状がすぐに改善しない環軸関節回旋位固定では、周囲の組織が回旋位になじんでしまい、再発しやすい状態にあるため、元に戻った位置で周囲の組織が安定するまでの間牽引を続けることが大切です。
牽引後は簡単な手製の頚椎カラーを症状に応じて装着します。

先天性内反足

生まれつき足が内側にねじれ、足の裏全体が内側に向いている状態です。出生後、すぐに分かるため、産科医から整形外科医に紹介されることが多いです。約1000人に1人の割合で発生し、男の子に多くみられます。

原因

体内での発育異常や圧迫などが挙げられていますが、定説はありません。

症状

かかとが内側に傾く内反と、足の前半分が内側に曲がる内転、足の先が下がっている尖足があります。

診断

視診、触診の上、X線検査や超音波検査で確定診断します。

治療

当センターでは、2005年5月以来、米国アイオワ大学のPonseti先生により開発されたPonseti法による治療を行っており、生後出来るだけ早期から始めることが理想的です。また、根気よく長期にわたって続けることが大切です。
まず、医師が足の形を矯正する徒手矯正の後、ギプス固定を週1回程度行い、徐々に矯正していきます。矯正が進んだ時点で、両足を固定する装具(Foot abduction brase)を装着します。
多くの場合、最後の矯正ギプス固定の前に、局所麻酔を用いてアキレス腱皮下切腱を行います。
アイオワ大学では、この方法で治療された患者で、後に大きな手術が必要になった患者はほとんどいないようです。当センターでも、この治療を行ったことで、大きな手術が必要になった患者はいなくなりました。
内反足はその後も成長期間中は再発する傾向があるため、変形再発防止のため、装具は長期にわたって使用します。再発した場合は変形に応じたて再度矯正ギプス治療、アキレス腱皮下切腱が行われたり、腱移行などの手術が行われることもあります。

内転足

生まれつき足の前半分だけが内側に曲がっている変形です。先天性中足骨内反とも呼びます。

症状

足の前半分だけが内側に曲がる内転変形があります。内反足と違い、かかとが内側に傾く内反と足の先が下がっている尖足がありません。

治療

軽い内転足は、生後3~4ヶ月までに自然に、または保護者の方が手で矯正することで治ります。
程度の強いものは、早くから徒手矯正の後、ギプス固定を行うか、夜間矯正装具を使います。
夜間矯正装具を使った場合も、3~4ヶ月で治ります。


診療実績

代表疾患 2020 2021 2022
母指多指症(三指節母指を含む) 46 44 51
母指形成不全 17 34 22
裂手・指列誘導障害 25 25 18
合指症 7 17 19
先天性紋扼輪症候群 6 17 2
握り母指・先天性多発性関節拘縮症 11 6 12
内反手 9 5 3
先天性橈尺骨癒合 19 17 12
その他の上肢先天異常 17 27 47
肘周辺骨折 45 42 51
その他の上肢手術 55 70 81
多趾症 38 20 16
その他の足趾先天異常 23 14 7
内反足・足部変形 36 30 26
下肢発育性障害 9 6 4
脚長不等・変形(骨端発育成長抑制による再建) 18 16 20
脚長不等・変形(脚延長・血管柄付き腓骨移植等) 6 18 10
脚長不等・変形(その他) 11 3 8
股関節 3 2 18
下肢外傷・感染症 13 16 27
骨内異物除去 42 49 61
筋性斜頚 12 7 3
多発性外骨腫症(変形矯正含む) 17 15 27
その他腫瘍 7 6 4
492 506 549

受診方法

受診には予約が必要です。予約センターに連絡し、予約してください。予約の変更も予約センターで対応します。初めて受診(初診)する場合は、医療機関(医院、病院)からの紹介状が必要です。

再診の方は、予約センターで予約してください。曜日毎に担当医が決まっているため、担当医の希望があれば、予約時に伝えてください。

スタッフ紹介

診療部長 医員 フェロー レジデント
関 敦仁(併)
江口 佳孝
髙木 岳彦
福田 良嗣
阿南 揚子
林 健太郎
稲葉 尚人(非)
佐藤 春佳
田邉 優
川﨑 みづ紀

(併)=併任、(非)=非常勤

医療従事者の方へ

当センター整形外科では随時見学を受け入れています。お気軽にご相談下さい。

国立成育医療研究センター整形外科 診療部長 高木岳彦

E-mail: ortho@ncchd.go.jp

また海外医師の短期研修を随時受け入れています。

http://www.ncchd.go.jp/en/hospital/about/section/surgical_specialties/orthopaedic.html

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