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急性肝不全

急性肝不全とは

肝不全は、肝細胞が損傷を受け壊れることなどによって、肝臓の機能が急激に低下していく病気です。原因としては、ウイルスへの感染、特定の酵素がなかったり働きが悪い代謝異常、免疫機能が自身の免疫機能が正常な細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患などが挙げられます。

急性肝不全では、肝細胞内にあった酵素(肝逸脱酵素(AST、ALT))が細胞の外に出て血液中の濃度が上昇したり、黄疸や、血液を固めるために必要な凝固因子が作られず不足する症状 が短期間に進行し、全身状態の悪化や、意識障害などをきたします。

また、正常なら肝臓で代謝されるはずのアンモニアなどの有害物質が全身や脳に回ることで、脳の機能が低下してさまざまな精神・神経症状があらわれます。これは肝性脳症といい、I度までの「非昏睡型」と、II度以上の「昏睡型」に分類されます。「昏睡型」は初発症状からII度までの期間が10日以内の「急性型」と、11日以降の「亜急性型」に区分されます。

表1: 急性肝不全の主な原因

分類詳細
感染性疾患・肝炎ウィルス
・単純ヘルペスウィルス
・アデノウィルス
・EBウィルス
・サイトメガロウィルス など
代謝疾患・ガラクトース血症
・チロシン血症
・ミトコンドリア機能異常症
・ウィルソン病 など
自己免疫疾患・自己免疫性肝炎
・巨細胞性肝炎
・自己免疫性溶血性貧血 など
血管疾患
虚血性疾患
・バッドキアリ症候群
・急性循環障害
・新生児仮死 など
その他・白血病
・リンパ腫
・血球貪食症候群
・新生児ヘモクロマトーシス など

急性肝不全の症状について

急性肝不全の症状としては、黄疸・ぐったりしている、元気がない(活気不良)・食欲低下・発熱などがあります。
病気の初期は、なんだか元気がないといった症状のみのこともあります。尿の色が濃い、便が白っぽいなどの徴候があれば、注意が必要です。

身体的な特徴としては、白眼が黄色い、右側の上腹部に痛みが生じることもあります。急性肝不全の症状が進行し肝性脳症になると意識障害などを生じますが、特に乳児の肝性脳症は気づきにくく、診断が難しくなっています(表2)。
小児(特に乳児)の急性肝不全では肝性脳症がなくても(診断できなくても)、血液検査によって重度の凝固障害(止血するために必要なタンパク質が十分に作れないこと)があれば重症化を考える必要があります。

表2: 小児肝性昏睡の分類
意識障害(昏睡度)年長児乳児
I度いつもより元気がない声を出して笑わない
II度傾眠傾向でおとなしい
見当識障害がある
あやしても笑わない
視線が合わない(生後3か月以降)
III度大声で呼ぶとかろうじて開眼する
IV度痛み刺激で覚醒しないが、顔をしかめたり、払いのけようとする
V度痛み刺激に全く反応しない
第5回小児肝臓ワークショップ:1988年

急性肝不全の検査

症状の問診とともに、血液検査や画像診断で肝臓や脳の状態を検査します。
 血液検査: 血清肝酵素(AST/ALT/LDH/γGTP)、ビリルビン、アンモニア、PT-INR、血小板数など
 画像検査: 連日の超音波検査での肝萎縮、頭部および腹部CT
 脳波検査: 気管挿管下での中枢神経評価に有用(徐波、活動性低下などに注意)


急性肝不全の重症度分類と移植の適応

急性肝不全の重症度分類と肝移植の適応に関しては、ガイドラインスコア(表3)を用いています。6つの項目の合計で肝移植が必要になる可能性を予測するもので、肝移植の必要性 をパーセンテージで表しています。0点はほぼ0%、1点は10%、2〜3点は20〜30%、4点は約50%、5点は約70%、6点以上は90%以上となっています。

表3: 肝移植適応ガイドラインスコア

スコア0点1点2点
発症-昏睡(日)0〜56〜1011 ≤
PT (%)20 <20〜5 5
T.Bil (mg/dL)< 1010〜1515 ≤
D.Bil/T.Bil比0.7 ≤0.7〜0.5< 0.5
血小板 (万)10 <10〜5 5
肝萎縮なしあり
厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班:2009年

急性肝不全の治療と国立成育医療研究センターの方針

急性肝不全の治療は、疾患にあわせた治療(原因により抗菌薬・抗ウイルス薬・免疫抑制療法など)、全身管理(呼吸循環の維持、脳浮腫の予防と治療など)が基本で、確立された治療は肝移植しかありません。血液浄化による人工肝補助(急性肝不全で機能が低下した肝臓の働きを補う治療法)に関してのエビデンスは確立されていませんが、肝再生または肝移植までの橋渡しとして一定の役割を果たすことが期待されています。

国立成育医療研究センターでは、ビタミンK2を投与しても改善しない凝固障害を伴う肝障害は、急激に状態が悪化する可能性があるため、すべての患者さんがPICU(小児集中治療室)に入室して診療を行います。
中でも、昏睡型や重度の凝固障害のある症例は、気管挿管し人工呼吸管理の上で、人工肝補助(持続血液ろ過透析と血漿交換)を行って、肝移植の準備も行います。人工肝補助を含む内科的な治療を開始して、1週間程度が経過しても肝機能の改善が見られない場合は、肝移植が必要になる可能性があります。


国立成育医療研究センターの診療体制

腎臓・リウマチ・膠原病科の医師が中心となり診療を担当します。
また、小児病院の特色を活かし、各専門診療部と協力し、子どもの将来を考えたトータルな医療を提供します。


診療実績


受診方法

※過去10日以内に発熱(37.5℃以上)している場合には、まずは救急センターへお越しください。


外来は、救急センターを除いてすべて予約制ですので、当院で受診される方は『事前予約』が必要です。

国立成育医療研究センターでは、事前予約制を導入しております。当院での受診を希望の方は他院からの診療情報提供書(紹介状)をお手元にご用意の上、予約センター(電話 03-5494-7300)で予約をお取りになってからご来院ください(予約取得時に、紹介状の確認をしております)。紹介状をお持ちでない場合、別途選定療養費がかかります。詳しくは、予約センターにお問い合わせください。

なお、現在他の病院で治療を受けている場合や緊急で受診が必要なときは、現在かかっている医療機関の医師から直接、医療連携室(TEL:03-5494-5486 (月~金 祝祭日を除く 8時30分から16時30分))へご連絡をお願い致します。

※救急センターは24時間365日診療をおこなっています。診療をご希望の方は、直接救急センターへお越しください。

予約センター(代表)

03-5494-7300

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時