国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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リンパ腫 Q&A | 子どもの病気

「リンパ腫」についての一般的な内容と、保護者のみなさまからいただくことの多い質問について説明したものです。あくまでも病気についての一般的な内容ですので、ご不明な点については、遠慮なく担当医に質問をしてください。

リンパ腫とはどのような病気ですか?

リンパ腫は「血液のがん」の一種で、リンパ節などにあるリンパ球ががん細胞になってしまった病気です。がん細胞とは、正常な細胞であったものが、遺伝子の異常などが細胞に起こることによって「正常な機能を持たないまま」「過剰に増殖するようになってしまう」細胞です。がん細胞ができた臓器によって「胃がん」「肺がん」などになり、リンパ節にあるリンパ球ががん化した病気が「リンパ腫」です。
リンパ腫は成人にも小児にも発症しますが、日本では1年間におよそ100~200人のお子さんが発症している病気です。

リンパ腫になるとどのような症状がでますか?

リンパ腫になると、全身のリンパ節にリンパ腫の細胞が増えて、リンパ節が大きくなります。大きくなるリンパ節の場所により、さまざまな症状がみられます。首、わきの下、足の付け根などは体の表面に近い部位にリンパ節がありますので、そこが腫れてくることがあります。また、両側の肺の間、気管の前の部分(縦隔:じゅうかく)にもリンパ節があり、ここが大きくなると気管を圧迫して呼吸が苦しくなることがあります。お腹の中にあるリンパ節が大きくなると、お腹がはってくる場合があります。胸部や腹部にリンパ腫の細胞があると、水がたまってくることもあります(胸水や腹水)。
また、リンパ球はもともとリンパ管を通って体中を循環していますので、リンパ腫の細胞がリンパ節以外にも入り込むことがあります。リンパ腫の細胞が肝臓や脾臓、腎臓にたまって大きくなることがありますし、骨髄(骨の中にある血液をつくる場所)に入り込むと、血液を作る力が抑えられてしまい、正常な血液の細胞(白血球・赤血球・血小板)が減ってしまいます。脳の周りにある髄液に入り込むと、頭痛や吐き気がでることがあります。そのほかに、リンパ腫の細胞がだす信号によって、熱が出たり体がだるくなったりすることがあります。
それぞれの症状の程度は個人差がありますので、すべての方に同じ症状がでるわけではありませんが、リンパ腫の細胞は自然になくなることはありませんので、治療をしないとこれらの症状が進行し、命に関わる状態になってしまいます。

リンパ腫にはどのような検査・治療を行いますか?

リンパ腫の細胞は体中を循環していますので、稀な場合を除き、手術ではなく薬を使った治療(=化学療法)をします。ただし、リンパ腫の治療にあたっては、大きくなったリンパ節の中にリンパ腫の細胞がいることを顕微鏡で確認し、診断を確定するとともに、どのようなリンパ腫なのか分類することが重要ですので、診断のために手術などでリンパ節を一部採取します(生検:せいけん)。骨髄や胸水・腹水を採取することで診断が確定できることもあります。
数十年前までは、小児のリンパ腫は治る確率の低い病気でした。しかし、リンパ腫の分類に基づいた薬の適切な使い方がわかってきたこと、治療を手助けする支持療法が進歩したことによって、長期生存率は向上し、リンパ腫全体の約80%以上が長期生存することが期待されます。
しかし、逆に言えば、リンパ腫の治療は100%治る段階までまだ到達しておらず、完璧な治療に至ってはいません。なるべく高い確率で治すためには、リンパ腫の細胞の性質をよく調べて分類をし、その特徴にあった薬の組み合わせと量で治療をすることが重要です。
まず、リンパ腫は「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に大きく分類されます。非ホジキンリンパ腫は、いくつかの検査の結果によってさらに細かく分類されますが、小児期に多いものは「成熟B細胞性リンパ腫」や「B細胞性リンパ芽球性リンパ腫」と「T細胞性リンパ芽球性リンパ腫」「未分化大細胞性リンパ腫」などです。
また、リンパ腫の治療を決定するために、「病期」という考え方も重要です。リンパ腫細胞の体への広がりの程度が「病期」であり、病期は1から4まであります。おおまかには
  • 病期1 = 1か所のリンパ節以外にはリンパ腫の細胞がないもの
  • 病期2 = その周辺にもリンパ腫の細胞があるもの
  • 病期3 = 体のやや広い範囲にリンパ腫の細胞があるもの
  • 病期4 = 全く異なる場所(骨髄や髄液の中など)にもリンパ腫の細胞があるもの
です。病期を調べるために、CTもしくはMRI検査、髄液検査、骨髄検査などを行います。
リンパ腫の詳細な診断は、上記の「分類」と「病期」をあわせて行います。たとえば、「病期3のB細胞性リンパ芽球性リンパ腫」や「病期4の成熟B細胞性リンパ腫」などの診断になります。リンパ腫と診断が確定したら、ステロイド剤と抗がん剤を組み合わせた治療が必要ですが、リンパ腫は病期と分類によって、治療に使う薬剤や治療期間が異なるため、それぞれに応じた治療を行うことが重要です。
治療薬の多くは内服、もしくは点滴で投与します。また、脳は髄液という水の中に浮かんでいますが、この髄液の中には点滴などで投与した薬は到達しにくい構造になっています。本来は脳を守るための機能ですが、リンパ腫の治療をする上ではむしろ問題になることがあり、飲み薬や点滴だけで治療を行うと、髄液の中からリンパ腫が再発することがあります。髄液の中からの再発(中枢神経再発)する確率を減らすために、髄腔内注射(髄注)が行われます。背骨の間から細い針を刺し、直接髄液の中に薬を投与します。
予定された化学療法を全部行ってもリンパ腫の細胞が残っている場合には、放射線照射を行うことがあります。

臨床試験とはなんですか?

リンパ腫の治療をよりよいものにするために、国内外で「臨床試験」という形で治療が行われてきています。再発したリンパ腫などの一部の特別な場合を除き、「試験」といっても効果が不確実な薬剤を試しに使うのではありません。リンパ腫の臨床試験では、これまでに行われた国内外の治療を振り返り、さらに改善させようとした治療計画で治療を行います。ただ、その改善させたつもりの治療計画がほんとうに安全で効果があるのか、確認しながら行っていきますので「臨床試験」という言葉が使われます。日本を含めた世界各国で臨床試験が行われ、その結果を基にして新たな臨床試験を行う、ということを繰り返してリンパ腫の長期生存率は大きく向上しました。
臨床試験には参加するための基準があります。現在行われている臨床試験に参加が可能であれば、担当の医師から臨床試験の治療計画の内容について説明を受けてください。担当の医師と相談しながら、臨床試験に参加して治療を行うか、もしくは以前まで行われていた治療で行うか、強制されることなく決めることができます。臨床試験に参加して治療を受けた場合でも、治療開始後の状況によっていつでも試験治療を受けるのをやめることができます。ただ、臨床試験に参加せずに治療を受けたのに、途中から臨床試験に参加することはできません。

治療の期間はどれくらいですか?

治療の内容によって異なりますが、入院が必要な治療が6-12か月です。この期間はずっと入院しているのではなく、治療と治療のあいまに外泊にいくことや、一時的に退院して自宅で過ごすことができます。小学生・中学生のお子さんは、病院の中にある「院内学級」に転校していただいて、治療中も学習の遅れが最小限になるようにします。入院治療が終わったあとに、1年~1年半の飲み薬の治療がある場合には、外来に定期的に通院しながら治療することになります。この飲み薬の治療の間は病気になる前と同じ生活ができますので、それまで通学していた学校に復学することや、幼稚園や保育園などに通園することが可能です。

治療の副作用にはどのようなものがありますか?

ステロイド薬を長期に投与すると、血圧が高くなる、食欲が増える、肥満、糖尿病、骨がもろくなる、感染症をおこしやすくなる、感情の起伏が強くなる、目が痛くなる(緑内障)などの症状が出ることがあります。ステロイドの投与を終了すると改善するものがほとんどですが、リンパ腫の治療においてステロイドはとても重要な役割を果たすため、たとえば血圧が高くなってもステロイドの投与は中止せず、血圧を下げる薬を併用しながら治療を継続します。
ステロイド以外の抗がん剤にも副作用があります。抗がん剤は「増える細胞を倒す」性質を持っているのでリンパ腫細胞に効果がありますが、正常な細胞で増える速度が速い細胞に影響が出ます。
増える速度が速い細胞の代表が正常な血液の細胞です。そのため、抗がん剤を使うと、血液を作る力が一時的に抑制されます(骨髄抑制)。つまり、抗がん剤によってリンパ腫による症状と同じような状態になります。ただし、抗がん剤の副作用は一時的なので、ある程度の時間が経過すれば血液を作る力は回復します。その回復を待つ間、赤血球や血小板の減少に対しては輸血を行って対応します。輸血については病院ごとに別の説明文書がありますが、アレルギーや感染症などの危険性があります。日本では、輸血に対する検査は高い精度で行われているため、輸血を解して感染症にかかる確率は低いですが、ないわけではありません。そのため、輸血の回数は最小限にとどめるようにします。
また、白血球の減少は輸血で補うことはできませんので、白血球の回復を促す薬を使いながら待つことになります。白血球の減少している間は免疫力が低下しているため、外泊に出ることはできません。熱が出た場合はたとえ元気であっても重篤な感染症になってしまう可能性があるため、抗生物質を早めに使うことになります。また、免疫力の低下している状態が長く続くと「ニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)」という肺炎になってしまうことがあるため、予防するために「ST合剤(バクタ、ダイフェン)」という薬を週に3日飲むことが必要です。
白血球の減少中に感染症を発症すると、生命に危険が及ぶような危険な状態になることもあります。また、抗がん剤の影響が臓器におよび、重篤な合併症をきたすこともあります。リンパ腫全体の長期生存は約80-85%ですが、残りの15-20%のうち、リンパ腫の再発に関係するものがほとんどですが、化学療法の合併症による死亡率も2-3%あります。
しかし、これらの合併症を避けるあまり治療を弱めてしまうと、リンパ腫の治る確率が下がってしまいます。リンパ腫の長期生存はここ数十年でどんどん向上していますが、輸血が確実にできるようになったこと、抗生剤による感染対策などの補助治療が向上したために、強い治療が可能になったことが大きく貢献しています。最終的に元気な状態で治る確率を高くするためには、一定の治療の強度が必要です。
髪の毛の細胞も増える速度が速いため、治療中は髪の毛が抜けてしまいます。抗がん剤が投与されると2週間後ぐらいから抜け始め、入院治療の間は髪の毛がほとんどない状態になります。入院治療が終われば髪の毛は生えてきますが、最初のころは少しくりくりした髪の毛のことが多いです。粘膜の細胞も増える速度が速いので、治療によって口内炎が起こったり、下痢をしたりすることもあります。また、抗がん剤は吐き気も引き起こします。これらに対しては、痛み止めや吐き気止めを使って手助けをします。
また、抗がん剤が体に入ることで、腎臓や肝臓に負担がかかることがあります。ほとんどの影響は一時的ですが、稀に機能の低下が残ることがあります。
そのほか、それぞれの抗がん剤に特有な副作用があります。例えば、「ロイナーゼ」はアレルギー症状をきたしたり、膵炎(腹痛が起こります)を引き起こしたりすることがあります。「アドリアシン」や「ダウノマイン」「テラルビシン」は多く使うことによって心臓に機能障害をきたすことがあります。「オンコビン」は便秘や手足のしびれなどの症状を起こすことがあります。「エンドキサン」や「イホマイド」は膀胱炎をおこすことがあるため、点滴を多くして尿が薄くなるようにします。いずれも治療には重要な薬剤なので、それぞれに対策をして負担を最小限にすることをめざしつつ、治る確率が高くなるように治療を行います。

治療中にはどのような検査をしますか?

治療の効果を判定するために、定期的にCTやMRIなどの画像検査を行います。可能であれば、PET-CTを行って病気の拡がりや治療の効き具合の参考にすることがあります。骨髄にも病気の細胞があった場合には、骨髄の検査も行います。多くの場合は、治療の途中で大きかったリンパ節はすべて通常と同じ大きさになり、画像では分からなくなります。ただし、そこで治療を中断すると、検査では見えないだけでまだたくさん残っているリンパ腫細胞がまた増えてきてしまうので、治療を続けることが必要です。
治療が進んでも、大きくなったリンパ節などが残っている場合には、そこに病気の細胞が残っているのか、もしくは残骸がたまっているだけなのかを確認するために、一部をとって検査することが必要になる場合があります。
輸血の回数を最小限にするために、また、肝臓や腎臓などにダメージが起き始めていないかを確認するために、治療中は週に2-3回の頻度で採血を行います。治療薬を投与するためには点滴も必要なので、通常は中心静脈カテーテルをいれ、そこから点滴や採血を行います。
ヘモグロビン値が7ぐらいを目安に赤血球輸血を、血小板数1-2万ぐらいを目安に血小板輸血を行います。ただし、治療の内容や曜日の関係で、この数字よりも高くても輸血が必要なことがあります。また、中心静脈カテーテルを挿入するなど、出血の可能性がある処置をする場合には、前もって血小板の値を高めにしておきます。

中心静脈カテーテルとはなんですか?

リンパ腫の治療に使う薬のほとんどは点滴で投与します。一般的に行うような手などに留置した点滴は、大抵の場合は3-5日ぐらいで薬が入らなくなり、そのつど点滴の針を刺しかえることが必要になります。また、「治療中にはどのような検査をしますか?」でもふれたように、入院中は頻繁に採血することが必要になります。
これらの採血や点滴留置によるお子さんの負担を減らすために、中心静脈カテーテル(CVカテーテルともいいます)を使って治療するのが一般的です。中心静脈カテーテルは、首の血管や鎖骨付近の血管を用いて管の先端を体の中心近くの血管まで届かせるものです。体の外には鎖骨の下あたりから出てくる形になります。中心静脈カテーテルは、麻酔をかけて手術室で挿入します。
治療に関連した薬はごく一部のものを除いて中心静脈カテーテルから投与することができますし、採血もカテーテルから行いますので、体に針をさす回数は格段に減らすことができます。また、リンパ腫の治療に使う薬の中には、皮下などに漏れると炎症を起こす薬剤もありますが、中心静脈カテーテルからであれば安全に投与することができます。予定された治療が終了した段階で、中心静脈カテーテルを抜きます。
その一方で、体に異物をいれておくことになりますので、中心静脈カテーテルにばい菌がついてしまい熱がでることがあります。その場合は原則としてカテーテルを抜く必要があります。また、抜けにくいように工夫がなされていますが、使っているうちに自然に抜けてしまうこともあります。
また、カテーテルの先端は血液の中にありますので、治療の合間などで使わない時も、固まらないようにするためにヘパリンという薬を薄めたものを定期的に通す必要があります(外泊などの際にはご自宅で保護者の方にお願いすることになります)。ただ、そのような対策をとってもカテーテルが詰まってしまう場合があります。詰まったカテーテルはやはり抜く必要があります。

治療中、特に気を付ける時期はありますか?

診断が疑われたときには、リンパ腫の細胞が体中に広がっているために命に関わる状態になっていることが珍しくありません。ですので、治療の最初の時期は集中治療室での管理などの慎重な対応が必要な場合があります。また、緊急性のある状態の場合には、生検を行わずに、リンパ腫との見込みの段階で化学療法や放射線照射を行うことがあります。
また、診断された段階ではリンパ腫細胞が体にたくさんあるため、治療によってリンパ腫細胞が一気に壊れ、その残骸が体内にあふれてしまい、腎臓の処理能力を超えてしまうことがあります。これを予防するために、治療の最初の1-2週間は点滴を多めにして、残骸を薄める対策をとります。また、残骸の中で「尿酸」という物質は腎臓に対して悪影響がありますので、尿酸を分解するラスリテック(またはザイロリック)という薬を使うことがあります。
治療が進んだ後も、抗がん剤によって白血球が少なくなっている期間は、感染症が起こると重症になりやすい時期なので、発熱など感染症を疑わせる症状が見られた場合には速やかに抗生物質の投与を開始する必要があります。どんなに気を使っても、空気中にいるばい菌や自分自身の体にいるばい菌によって感染症を起こすことはありますが、感染症を起こす確率をなるべく減らすために、体調が悪い方の面会は控える、面会前に手洗いをする、などについては普段から気をつけましょう。
また、ご家族で、水痘(みずぼうそう)やおたふくかぜなどの「予防接種をしていない」かつ「かかったこともない」のであれば、予防接種をすることをお願いします。インフルエンザの予防接種もぜひお勧めします。

リンパ腫は治るのですか?

「治療中にはどのような検査をしますか?」の項に書かれている通り、リンパ腫の細胞が見えなくなった後も治療を続けることが必要です。しかし、すでに画像検査では見つからない段階になると、途中の段階で「治った」かを確認することはできません。リンパ腫細胞の分類や病期、治療を開始した後の経過など様々な要素を総合し、最も治癒率が高いと推定される薬剤の量と期間で治療を行います。
リンパ腫細胞が残っていた場合、治療終了後に増殖して症状が出現したり、検査で検出されたりすることになり、「再発」という状態になります。再発の多くは、治療が終了してから2年以内にみられます。すなわち、治療が終了して2年たっても特に症状がなく、血液検査にも異常がなければ、治った可能性は高いと考えます。4年たっても特に問題がなければ、「例外的な場合を除いて治ったと考えてもいい」とお伝えしています。
ただし、完全に再発の可能性がなくなるのは何年後か、ということはまだ分かっていません。そのため、厳密な意味で「治癒率」という言葉を使うことはできずに、「長期生存率」という言葉で表現します。実際には、治療終了後4年が経過して再発がない場合、それ以降に再発する確率は1%以下ですので、「治療終了から4年後の長期生存率」=「治癒率」と考えられています。

リンパ腫はなぜ発症するのでしょうか?遺伝や環境は関連しますか?

小児のリンパ腫の発症は、まれな例外を除いて、遺伝や生活の環境などの特定の原因による影響は少ない、と考えられています。
細胞は日々分裂していますが、増える量は厳密に制御されています。分裂して増える過程で、DNAという細胞の設計図をコピーして使いますが、そのコピーはとても正確ですが、何万回・何十万回とコピーすると間違いが起こることがあります。間違いのある設計図で作られた細胞はほとんど場合は排除されますが、まれに排除されずに、しかも過剰に増えるような「間違い細胞」ができてしまうことがあり、これががん細胞です。
たばこと肺がんの関係はよく知られていますが、これは喫煙がこの「間違い」が起こる確率を増やすためと考えられています。しかし、小児のリンパ腫の場合は、特殊な場合を除いて発症の誘因となるようなものはなく、偶然の確率で起こる病気だとされています。

もっと早期に診断したほうがよかったのですか?

リンパ腫の治癒率に一番影響するのは、病気の細胞自体の性質です。また、治療が不十分な場合も治癒率が下がります。つまり、治癒率をあげるためには、しっかりとリンパ腫細胞の特徴をつかみ、それにあった治療を十分にできることが最も重要です。リンパ腫のお子さんの経過を振り返ってみると、診断されるよりも以前から症状があったことがほとんどです。ただ、リンパ腫の最初の症状は、だるい・なんとなく元気がない・咳が出る、などリンパ腫に特有のものではない症状であることがほとんどで、実際のそのような症状のお子さんのほとんどはリンパ腫ではなく、一般の感冒(いわゆる”かぜ”)などであることがほとんどです。症状が出始めた段階で検査を行えば診断できた可能性はありますが、リンパ腫を早期に診断したとしても、最終的になおる確率にはほとんど影響しません。

治療の終了後に残るような影響はありますか?

現在行われている化学療法によって、治療終了後に著しい影響を残すことは少ないと考えています。ステロイド剤によって骨がもろくなり、しばらく運動の制限が必要になることがありますが、ほとんどの場合は元通りに生活できます。
小児期に抗がん剤を使った治療を行いますが、重い合併症を併発して影響が残ってしまった場合を行った場合を除き、身体的・知的な発達に大きな影響はないと考えられます。しかし、治療に使う薬によって、まれに成長障害・内分泌障害(ホルモンの不足)・その他の臓器の障害がおこることがあります。これらの問題は成長してはじめて明らかになる場合もあるため、少なくとも20歳までは定期的に外来に通院していただくことをお願いしています。
また、がんの治療を受けた方は、将来的に「がん」を発症する確率が少し上がることが分かっており(抗がん剤のみの治療の場合は約1-3%と推定されています)、「二次がん」と言います。しかし、現在、日本人の死因の中でがんはもっとも多く、抗がん剤治療を受けていない人でも約半数の方ががんを経験します。そのため、もし二次がんを発症した場合でも、抗がん剤治療と関係があるのか、つまり治療を受けなかったらその「がん」を発症しなかったかどうかは分かりません。二次がんは重要な合併症ですので、関連が強いと疑われる薬剤や放射線照射などは可能な限り少なくするような治療を行いますが、「治療の副作用にはどのようなものがありますか?」でも述べたように、過剰に治療を弱めることは、リンパ腫の治る確率を下げてしまいます。そのため、リンパ腫のお子さんが元気に成長して一生を過ごすことができる確率が最も高いと考えられる治療を行いたいと考えています。

退院後に気を付けることはありますか?

「 リンパ腫は治るのですか?」でも書かれている通り、再発の可能性はどの時期でも「絶対にない」と言い切ることはできません。ですが、生活の中の一般的なできごとが再発する・しないに影響することはありません。疲れたら再発しやすくなる、などということはありませんので、体力面で問題がない範囲で発症前と同じ日常生活に戻って構いません。ただし、入院によって筋力が落ちていることが多いので、通学を再開する最初の時期は短い時間のみからはじめ、徐々に時間を増やすことをお勧めします。

再発はどのような症状でわかることが多いですか?

治療が終わってすぐのころは1-2カ月に1回の血液検査を行い、必要に応じて画像検査を行いますので、症状が出る前に検査値の異常で見つかることが多いです。
症状が出るとしたら、体のどこかのリンパ節が大きくなることが考えられます。男の子の場合には睾丸(精巣)が腫れて大きくなることがあります。また、リンパ腫細胞は髄液の中に再発することもあります(「リンパ腫にはどのような検査・治療を行いますか?」の最後の部分を参照してください)。その場合は頭が痛い、吐き気がする、ものが二重に見える、などの症状が現れます。
ただし、「もっと早期に診断したほうがよかったのですか?」にもある通り、リンパ腫の治療において早期に診断することは治療の最終的な結果には影響しません。これは再発時も同じです。ですので、上記のような症状がみられた時も、緊急で受診していただく必要はありません。
リンパ腫に関係する症状であれば改善することはありませんので、しばらくはリンパ腫と関係ないものとして対処をし、もし症状がよくなったら再発ではないと判断してください。改善が見られない場合や、症状がひどい場合は、担当医にご相談ください。

治療に関して公費負担の制度などはありますか?

リンパ腫は「小児慢性特定疾病」の対象疾患です。市区町村の窓口などに申請をしていただければ、申請以降にリンパ腫に関連した治療の費用は公費の補助が受けられます。ただし、リンパ腫と関係ない病気(虫歯など)・けがなどは通常の保険診療で請求が発生します。また、小さなお子さんの場合のミルク代など、もともと保険診療に含まれないものについては負担額が発生します。