国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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急性リンパ性白血病(ALL) Q&A│小児がん

小児の「急性リンパ性白血病」について、保護者のみなさまからいただくことの多い質問について説明したものです。あくまでも病気についての一般的な内容ですので、ご不明な点については担当の医師にご質問ください。

白血病とはどのような病気ですか?

白血病は「血液のがん」です。がん細胞とは、正常な細胞であったものが、遺伝子の異常などが細胞に起こることによって「正常な機能を持たないまま」「過剰に増殖するようになってしまう」細胞です。がん細胞がどの臓器にできるかによって「胃がん」「肺がん」などになり、血液細胞ががん細胞になってしまった病気が「白血病」です。
小児期に起こるがんの中で最も多いものが白血病です。そのうち、急性リンパ性白血病は日本で1年間におよそ数百人のお子さんが発症している病気です。

白血病になるとどのような症状がでますか?

血液の細胞は骨の中にある「骨髄」で作られますが、白血病細胞も骨髄で増殖します。骨髄に細い針を刺して中身を検査(骨髄検査)し、白血病細胞がたくさん存在していることで白血病と診断されます。
白血病細胞は増殖し続けますので、白血病になると正常な血液を作る力が抑えられてしまい、正常な血液の細胞(白血球・赤血球・血小板)が減ってしまいます。
正常な白血球は主に免疫力を担っています。ですので、少なくなってしまうと、「感染症にかかりやすくなる」「感染症が治りにくくなる」「通常の免疫力があればかからないような感染症になる」などの症状が出ます。白血病と診断された時には、白血病細胞が血液の中にもたくさんみられることがあります。白血病細胞は通常の血液検査では「白血球」として数えられてしまいますので、診断された最初のころの「白血球」の数はむしろ多くなっていることもありますが、正常な白血球は減っていることがほとんどです。
正常な赤血球は主に酸素を運搬する働きをしています。酸素は細胞が機能するために必須なので、少なくなってしまうと、いわゆる「貧血」の症状としてだるさやめまいなどが現れます。過度に少なくなると、体の臓器が正常に機能することができなくなってしまいます。
正常な血小板は主に出血を止める役目を果たしています。ですので、少なくなってしまうと血が止まりにくくなり、大量に出血してしまったり、重要な臓器(脳など)に出血をしてしまったりすることがあります。
そのほかに、白血病細胞が骨髄の中で増えることにより骨が痛くなることがあります。また、リンパ節や肝臓・脾臓に白血病細胞がたまることによって大きくなり、首や足の付け根などにしこりができることがあります。
それぞれの症状の程度は個人差がありますので、すべての白血病の方に同じ症状がでるわけではありませんが、白血病細胞は自然になくなることはありませんので、治療をしないとこれらの症状が進行し、命に関わる状態になってしまいます。

白血病にはどのような検査・治療を行いますか?

白血病細胞は血液の中を流れていますので、手術で治療するのではなく、薬を使った治療(=化学療法)をします。数十年前までは、小児の白血病はほとんど治らない病気でした。しかし、薬をどのように使うのが効果的なのかが分かるようになったことと、治療を手助けする支持療法が進歩したことなどによって、長期生存率はおおきく向上しました。現在では、小児の急性リンパ性白血病の約80%以上が長期生存することが確認されています。
しかし、逆に言えば、白血病の治療は100%治る段階まではまだ到達しておらず、完璧な治療には至ってはいません。なるべく高い確率で治し、かつ副作用を最小限にとどめるためには、白血病細胞の性質をよく調べて分類をし、その特徴にあった薬の組み合わせと量で治療をすることがとても重要です。
白血病の分類の一つが「急性」と「慢性」および「リンパ性」と「骨髄性」の分類です。骨髄の中にみられた白血病細胞を調べた結果によって、例えば「急性リンパ性白血病(ALLと略します)」と分類されます。急性リンパ性白血病と急性骨髄性白血病(AMLと略します)は共通する薬を一部に使いますが、治療の全体としてはかなり異なりますので、この分類をしっかりすることがとても重要です。
急性リンパ性白血病は、「B前駆細胞型」「成熟B細胞型」「T細胞型」の3種類にさらに分類され、それぞれによって治療の内容が異なります。成熟B細胞型の急性リンパ性白血病(ALL)は、リンパ腫と同じような治療を行うことが必要なため、リンパ腫の説明ページをご覧ください。
急性リンパ性白血病と診断が確定したら、ステロイド剤と抗がん剤を組み合わせた治療を行います。ただ、これまでの白血病の治療研究などの成果により、急性リンパ性白血病のなかでも「○○の検査が陽性な白血病は長期生存率が高い」「○○の検査が陽性なら長期生存率が低い」などのことが分かっています。そこで、最初に白血病細胞に様々な検査を行います。結果は後日わかるものが多いので、まずは治療をはじめ、その結果によって治療の強さを調整します。さらに、初期の治療により白血病細胞があまり減らない場合も、治療を強化したほうがいいことが分かっています。このようにして、病気の細胞の「てごわさ」を予測して治療の強度を調整する(層別化といいます)ことが、白血病の治療でとても大事だと考えられています。
また、脳は髄液という水の中に浮かんでいますが、この髄液の中には点滴などで投与した薬は到達しにくい構造になっています。本来は脳を守るための機能ですが、白血病の治療をする上ではむしろ問題になることがあり、飲み薬や点滴だけで治療を行うと、髄液の中から白血病が再発することがあります。髄液の中からの再発(中枢神経再発)する確率を減らすために、髄腔内注射(髄注)が行われます。背骨の間から細い針を刺し、直接髄液の中に薬を投与します。また、白血病の診断時にすでに髄液の中に白血病細胞がある場合には、髄注に加えて放射線照射を併用して治療を行うことがあります。

臨床試験とはなんですか?

白血病の治療をよりよいものにするために、国内外で「臨床試験」という形で治療が行われてきています。再発した白血病などの一部の特別な場合を除き、「試験」といっても効果が不確実な薬剤を試しに使うのではありません。急性リンパ性白血病の臨床試験では、これまでに行われた国内外の治療を振り返り、さらに改善させようとした治療計画で治療を行います。ただ、その改善させたつもりの治療計画がほんとうに安全で効果があるのか、確認しながら行っていきますので「臨床試験」という言葉が使われます。日本を含めた世界各国で臨床試験が行われ、その結果を基にして新たな臨床試験を行う、ということを繰り返して白血病の長期生存率は大きく向上しました。
臨床試験には参加するための基準があります。現在行われている臨床試験に参加が可能であれば、担当の医師から臨床試験の治療計画の内容について説明を受けてください。担当の医師と相談しながら、臨床試験に参加して治療を行うか、もしくは以前まで行われていた治療で行うか、強制されることなく決めることができます。臨床試験に参加して治療を受けた場合でも、治療開始後の状況によっていつでも試験治療を受けるのをやめることができます。ただ、臨床試験に参加せずに治療を受けたのに、途中から臨床試験に参加することはできません。

治療の期間はどれくらいですか?

治療の内容によって多少異なりますが、入院が必要な治療が8-12か月です。この期間はずっと入院しているのではなく、治療と治療のあいまに外泊にいくことや、一時的に退院して自宅で過ごすことができます。学校に通っていたお子さんは、病院内にある「院内学級」に転校していただいて、治療中も学習の遅れが最小限になるようにします。入院治療が終わったあとに、1年~1年半の飲み薬の治療があり、外来に定期的に通院しながら治療することになります。この飲み薬の治療の間でも、それまで通学していた学校に復学することや、幼稚園や保育園などに通園することが可能です。

治療の副作用にはどのようなものがありますか?

ステロイド薬を長期に投与すると、血圧が高くなる、食欲が増える、肥満、糖尿病、骨がもろくなる、感染症をおこしやすくなる、感情の起伏が強くなる、目が痛くなる(緑内障)などの症状が出ることがあります。ステロイドの投与を終了すると改善するものがほとんどですが、急性リンパ性白血病(ALL)の治療においてステロイドはとても重要な役割を果たすため、たとえば血圧が高くなってもステロイドの投与は中止せず、血圧を下げる薬を併用しながら治療を継続します。
ステロイド以外の抗がん剤にも副作用があります。抗がん剤は「増える細胞を倒す」性質を持っているので白血病細胞に効果がありますが、正常な細胞のなかで増える速度が速い細胞に影響が出ます。
増える速度が速い細胞の代表が正常な血液の細胞です。そのため、抗がん剤を使うと、血液を作る力が一時的に抑制されます(骨髄抑制)。つまり、抗がん剤によって白血病による症状と同じような状態になります。ただし、抗がん剤の副作用は一時的なので、ある程度の時間が経過すれば血液を作る力は回復します。その回復を待つ間、赤血球や血小板の減少に対しては輸血を行って対応します。輸血については病院ごとに別の説明文書がありますが、アレルギーや感染症などの危険性があります。日本では、輸血に対する検査は高い精度で行われているため、輸血を解して感染症にかかる確率は低いですが、ないわけではありません。そのため、輸血の回数は最小限にとどめるようにします。
また、白血球の減少は輸血で補うことはできませんので、白血球の回復を促す薬を使いながら待つことになります。白血球の減少している間は免疫力が低下しているため、外泊に出ることはできません。熱が出た場合はたとえ元気であっても重篤な感染症になってしまう可能性があるため、抗生物質を早めに使うことになります。また、免疫力の低下している状態が長く続くと「ニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)」という肺炎になってしまうことがあるため、予防するために「ST合剤(バクタ、ダイフェン)」という薬を週に3日飲むことが必要です。
白血球の減少中に感染症を発症すると、生命に危険が及ぶような危険な状態になることもあります。また、抗がん剤の影響が臓器におよび、重篤な合併症をきたすこともあります。急性リンパ性白血病の長期生存率は約80%ですが、残りの20%のうち、白血病の再発に関係するものがほとんどですが、化学療法の合併症による死亡率も2-3%あります(造血幹細胞移植を行う場合を除きます)。
しかし、輸血による感染症や、感染症などの合併症を避けるあまり抗がん剤治療を弱めすぎてしまうと、白血病の治る確率が下がってしまいます。白血病の長期生存はここ数十年でどんどん向上していますが、輸血が確実にできるようになったこと、抗生剤による感染対策などの補助治療が向上したために強い治療が可能になったこと、が大きく貢献しています。最終的に元気な状態で治る確率を高くするためには、一定の強度で治療を行うことが必要です。
髪の毛の細胞も増える速度が速いため、治療中は髪の毛が抜けてしまいます。抗がん剤が投与されると2週間後ぐらいから抜け始め、入院治療の間は髪の毛がほとんどない状態になります。入院治療が終われば髪の毛は生えてきますが、最初のころは少しくりくりした髪の毛のことが多いです。粘膜の細胞も増える速度が速いので、治療によって口内炎が起こったり、下痢をしたりすることもあります。また、抗がん剤は吐き気も引き起こします。これらに対しては、痛み止めや吐き気止めを使って手助けをします。
また、抗がん剤が体に入ることで、腎臓や肝臓に負担がかかることがあります。ほとんどの影響は一時的ですが、稀に機能の低下が残ることがあります。
そのほか、それぞれの抗がん剤に特有な副作用があります。例えば、「ロイナーゼ」はアレルギー症状をきたしたり、膵炎(腹痛が起こります)を引き起こしたりすることがあります。「アドリアシン」や「ダウノマイン」「テラルビシン」は多く使うことによって心臓に機能障害をきたすことがあります。「オンコビン」は便秘や手足のしびれなどの症状を起こすことがあります。「エンドキサン」や「イホマイド」は膀胱炎をおこすことがあるため、点滴を多くして尿が薄くなるようにします。いずれも治療には重要な薬剤なので、それぞれに対策をして負担を最小限にすることをめざしつつ、治る確率が高くなるように治療を行います。

治療中にはどのような検査をしますか?

治療の効果を判定するために、定期的に骨髄検査を行います。多くの場合(90%以上)は、約5週間の治療後には通常の骨髄検査では白血病細胞がみえなくなり、正常な血液を作る力が回復します。この状態を「寛解(かんかい)」と言います。まずはこの状態を目指して治療を行います。「寛解」にいたることはとても大事ですが、そこで治療を終了すると、骨髄検査では見えないだけでまだたくさん残っている白血病細胞がまた増えてきてしまい、高い確率で白血病が再発します。ですので、寛解後にも治療を続けることが必要です。
輸血の回数を最小限にするために、また、肝臓や腎臓などにダメージが起き始めていないかを確認するために、治療中は週に2-3回の頻度で採血を行います。治療薬を投与するためには点滴も必要なので、通常は中心静脈カテーテルをいれ、そこから点滴や採血を行います。
ヘモグロビン値が7ぐらいを目安に赤血球輸血を、血小板数1-2万ぐらいを目安に血小板輸血を行います。ただし、治療の内容や曜日の関係で、この数字よりも高くても輸血が必要なことがあります。また、中心静脈カテーテルを挿入するなど、出血の可能性がある処置をする場合には、前もって血小板の値を高めにしておきます。

中心静脈カテーテルとはなんですか?

白血病の治療に使う薬のほとんどは点滴で投与します。一般的に行うような手などに留置した点滴は、大抵の場合は3-5日ぐらいで薬が入らなくなり、そのつど点滴の針を刺しかえることが必要になります。また、「7.治療中にはどのような検査をしますか?」でもふれたように、入院中は頻繁に採血することが必要になります。
これらの採血や点滴留置によるお子さんの負担を減らすために、中心静脈カテーテル(CVカテーテルともいいます)を使って治療するのが一般的です。中心静脈カテーテルは、首の血管や鎖骨付近の血管を用いて管の先端を体の中心近くの血管まで届かせるものです。体の外には鎖骨の下あたりから出てくる形になります。中心静脈カテーテルは、麻酔をかけて手術室で挿入します。
治療に関連した薬はごく一部のものを除いて中心静脈カテーテルから投与することができますし、採血もカテーテルから行いますので、体に針をさす回数は格段に減らすことができます。また、白血病の治療に使う薬の中には、皮下などに漏れると炎症を起こす薬剤もありますが、中心静脈カテーテルからであれば安全に投与することができます。予定された治療が終了した段階で、中心静脈カテーテルを抜きます。
その一方で、体に異物をいれておくことになりますので、中心静脈カテーテルにばい菌がついてしまい熱がでることがあります。その場合は原則としてカテーテルを抜く必要があります。また、抜けにくいように工夫がなされていますが、使っているうちに自然に抜けてしまうこともあります。
また、カテーテルの先端は血液の中にありますので、治療の合間などで使わない時も、固まらないようにするためにヘパリンという薬を薄めたものを定期的に通す必要があります(外泊などの際にはご自宅で保護者の方にお願いすることになります)。ただ、そのような対策をとってもカテーテルが詰まってしまう場合があります。詰まったカテーテルはやはり抜く必要があります。

治療中、特に気を付ける時期はありますか?

治療の最初の時期は、白血病細胞が体にたくさんある状態で治療を開始しますので、治療によって白血病細胞が一気に壊れ、その残骸が体内にあふれてしまい、腎臓の処理能力を超えてしまうことがあります。これを予防するために、治療の最初の1-2週間は点滴を多めにして、残骸を薄める対策をとります。また、残骸の中で「尿酸」という物質は腎臓に対して悪影響がありますので、尿酸を分解するラスリテック(またはザイロリック)という薬を使うことがあります。
また、最初の治療の段階では、白血病細胞によって血液を作る力が抑えられている状態にもかかわらず、血液細胞に影響がある薬を使うことになります。そのため、合併症が最もおこりやすいのは最初の治療ですので、より慎重に治療を行います。
いったん寛解に至った後も、治療によって白血球が少なくなっている期間は、感染症が起こると重症になりやすい時期なので、発熱など感染症を疑わせる症状が見られた場合には速やかに抗生物質の投与を開始する必要があります。どんなに気を使っても、空気中にいるばい菌や自分自身の体にいるばい菌によって感染症を起こすことはありますが、感染症を起こす確率をなるべく減らすために、体調が悪い方の面会は控える、面会前に手洗いをする、などについては普段から気をつけましょう。
また、ご家族で、水痘(みずぼうそう)やおたふくかぜなどの「予防接種をしていない」かつ「かかったこともない」のであれば、予防接種をすることをお願いします。インフルエンザの予防接種もぜひお勧めします。

白血病は治るのですか?

「治療中にはどのような検査をしますか?」の項に書かれている通り、寛解の状態になった後も治療を続けることが必要です。しかし、寛解の状態では骨髄検査でも白血病細胞は見つからなくなるため、途中の段階で「治った」かを判定することはできません。白血病細胞の特徴を調べた検査の結果や、初期治療に対する反応など様々な要素を総合し、最も治癒率が高いと推定される薬剤の量と期間で治療を行います。
治療が終了した段階でも白血病の細胞が残っていた場合には、白血病細胞が増殖し、症状が出現したり、検査で検出されたりすることになり、「再発」という状態になります。まれに治療中にもかかわらず白血病細胞が勢いを盛り返して再発することもあります。再発の多くは、治療が終了してから2年以内にみられます。すなわち、治療が終了して2年たっても特に症状がなく、血液検査にも異常がなければ、治った可能性は高いと考えます。4年たっても特に問題がなければ、「例外的な場合を除いて治ったと考えてもいい」とお伝えしています。
ただし、完全に再発の可能性がなくなるのは何年後か、ということはまだ分かっていません。そのため、厳密な意味で「治癒率」という言葉を使うことはできずに、「長期生存率」という言葉で表現します。実際には、治療終了後4年が経過して再発がない場合、それ以降に再発する確率は1%以下ですので、「治療終了から4年後の長期生存率」=「治癒率」と考えられています。

小児急性リンパ性白血病の「小児」というのは何歳までのことですか?

急性リンパ性白血病は小児にも成人にも発症する病気です。治療に関する基本的な考え方は同じですが、小児の急性リンパ性白血病のほうが化学療法が効きやすい場合が多いこと、さらに、小児のほうが強い化学療法に耐えられるため、相対的に強力な化学療法が行われること、などから、成人に比べ小児のほうが長期生存率が高いことが知られています。
また、最近の国内外の臨床研究の結果からは、15-25歳の「思春期・若年成人」の急性リンパ性白血病は、小児の急性リンパ性白血病で行われるような強力な化学療法を行ったほうが長期生存率が高いことが分かりました。そのため、急性リンパ性白血病においては、20-25歳までは「小児急性リンパ性白血病」と扱って治療に望んだほうがいいと考えられています。

骨髄移植をする可能性はありますか?

骨髄移植と同じような治療が臍帯血や末梢血幹細胞などを使ってもできるようになったので、最近では「造血幹細胞移植」と呼びます。造血幹細胞移植は白血病の治療で最も強力なものですが、その一方で体にあたえる影響も大きいです。そのため、化学療法のみでは長期生存率が低いと考えられる場合にのみ造血幹細胞移植を選択します。具体的には、
・白血病細胞の特徴を調べた結果、通常の化学療法のみでは再発率が高いと予想された場合
・化学療法を開始しても白血病細胞がなかなか減らない場合
・再発してしまった場合(再発の時期にもよります)
これらの場合には造血幹細胞移植が選択肢として考えられます。小児の急性リンパ性白血病で、治療の最初から(再発する前に)造血幹細胞移植を予定するのは10%もしくはそれ以下と推定されます。造血幹細胞移植について詳しくお知りになりたい場合、造血幹細胞移植の説明文書をご参照ください。

白血病はなぜ発症するのでしょうか?遺伝や環境は関連しますか?

小児の白血病の発症は、まれな例外を除いて、遺伝や生活の環境などの特定の原因による影響は少ない、と考えられています。
細胞は日々分裂していますが、増える量は厳密に制御されています。分裂して増える過程で、DNAという細胞の設計図をコピーして使いますが、そのコピーはとても正確ですが、何万回・何十万回とコピーすると間違いが起こることがあります。間違いのある設計図で作られた細胞はほとんど場合は排除されますが、まれに排除されずに、しかも過剰に増えるような「間違い細胞」ができてしまうことがあり、これががん細胞です。
たばこと肺がんの関係はよく知られていますが、これは喫煙がこの「間違い」が起こる確率を増やすためと考えられています。しかし、小児の白血病の場合は、特殊な場合を除いて発症の誘因となるようなものはなく、偶然の確率で起こる病気だとされています。

もっと早期に診断したほうがよかったのですか?

白血病の治癒率に一番影響するのは、白血病細胞自体の性質です。また、治療が不十分な場合も治癒率が下がります。つまり、治癒率をあげるためには、しっかりと白血病細胞の特徴をつかみ、それにあった治療を十分にできることが最も重要です。
白血病のお子さんの経過を振り返ってみると、診断されるよりも以前から症状があったことがほとんどです。ただ、白血病の最初の症状は、だるい・なんとなく元気がない・どこかが痛い、など白血病に特有のものではない症状であることがほとんどで、実際のそのような症状のお子さんのほとんどは白血病ではなく、一般の感冒(いわゆる”かぜ”)などであることがほとんどです。症状が出始めた段階で検査を行えば診断できた可能性はありますが、白血病を早期に診断したとしても、最終的になおる確率にはほとんど影響しません。

治療の終了後に残るような影響はありますか?

現在行われている化学療法によって、治療終了後に著しい影響を残すことは少ないと考えています(造血幹細胞移植を除く)。ステロイド剤によって骨がもろくなり、しばらく運動の制限が必要になることがありますが、ほとんどの場合は元通りに生活できます。
小児期に抗がん剤を使った治療を行いますが、重い合併症を併発して影響が残ってしまった場合や造血幹細胞移植を行った場合を除き、身体的・知的な発達に大きな影響はないと考えられます。しかし、治療に使う薬によって、まれに成長障害・内分泌障害(ホルモンの不足)・その他の臓器の障害がおこることがあります。これらの問題は成長してはじめて明らかになる場合もあるため、少なくとも20歳までは定期的に外来に通院していただくことをお願いしています。
また、がんの治療を受けた方は、将来的に「がん」を発症する確率が少し上がることが分かっており(抗がん剤のみの治療の場合は約1-3%と推定されています)、そのことを「二次がん」と言います。しかし、現在、日本人の死因の中でがんはもっとも多く、抗がん剤治療を受けていない人でも約半数の方が生涯の中でがんを経験します。そのため、もし二次がんを発症した場合でも、抗がん剤治療と関係があるのか、つまり治療を受けなかったらその「がん」を発症しなかったかどうかは分かりません。二次がんは重要な合併症ですので、関連が強いと疑われる薬剤などは可能な限り少なくするような治療を行いますが、「6.治療の副作用にはどのようなものがありますか?」でも述べたように、過剰に治療を弱めることは、白血病の治る確率を下げてしまいます。そのため、白血病のお子さんが元気に成長して一生を過ごすことができる確率が最も高いと考えられる治療を行いたいと考えています。

退院後に気を付けることはありますか?

「10. 白血病は治るのですか?」でも書かれている通り、再発の可能性はどの時期でも「絶対にない」と言い切ることはできません。ですが、生活の中の一般的なできごとが再発する・しないに影響することはありません。疲れたら再発しやすくなる、などということはありませんので、体力面で問題がない範囲で発症前と同じ日常生活に戻って構いません。ただし、入院によって筋力が落ちていることが多いので、通学を再開する最初の時期は短い時間のみからはじめ、徐々に時間を増やすことをお勧めします。

再発はどのような症状でわかることが多いですか?

治療が終わってすぐのころは1-2カ月に1回の血液検査を行いますので、症状が出る前に検査値の異常で見つかることが多いです。
症状が出るとしたら、疲れやすくなる、血が止まりにくくなる、感染症がなかなか治らなくなる、といったものがみられます。また、白血病細胞は髄液の中に再発することもあります(「3.白血病にはどのような検査・治療を行いますか?」の最後の部分を参照してください)。その場合は頭が痛い、吐き気がする、ものが二重に見える、などの症状が現れます。また、白血病がかたまりを作ってしこりをつくることがありますし、男の子の場合には睾丸(精巣)が腫れて大きくなることがあります。ただし、「14.もっと早期に診断したほうがよかったのですか?」にもある通り、白血病の治療において早期に診断することは治療の最終的な結果には影響しません。これは再発時も同じです。ですので、上記のような症状がみられた時も、緊急で受診していただく必要はありません。
白血病に関係する症状であれば改善することはありませんので、しばらくは白血病と関係ないものとして対処をし、もし症状がよくなったら再発ではないと判断してください。改善が見られない場合や、症状がひどい場合は、担当医にご相談ください。

治療に関して公費負担の制度などはありますか?

白血病は「小児慢性特定疾病」の対象疾患です。市区町村の窓口などに申請をしていただければ、申請以降に白血病に関連した治療の費用は公費の補助が受けられます。ただし、白血病と関係ない病気(虫歯など)・けがなどは通常の保険診療で請求が発生します。また、小さなお子さんの場合のミルク代など、もともと保険診療に含まれないものについては負担額が発生します。

国立成育医療研究センターの診療体制

白血病が疑われた、もしくは白血病と診断された患者さんには、小児がんセンターの医師がチームを組んで主治医となります。下記のメンバーが診療の中心を担っており、関係する部門との密接な連携によるチーム医療を行っています。また、当センターでは研究所の小児血液・腫瘍研究部と連携をすることで、診断や分類を迅速に行うことが可能です。血液検査室の担当技師とも定期的なカンファレンスを行うことで、病態にあった正確な診断を行っています。
さらに、治療法の開発や改善に結びつけることを目指して、小児白血病の発症原因や新しい予後因子の究明など、小児がんの治療成績を向上するための基礎的な研究を行っています。

小児がんセンター
研究所
  • 小児血液・腫瘍研究部部長 清河 信敬

白血病の診療実績

国立成育医療研究センターの診療のご案内

白血病と感冒(いわゆる”かぜ”)などは症状だけでは区別ができず、症状が長引く場合に検査をして白血病が疑われることが一般的です。かかりつけ医やお近くの病院などを受診し、白血病が疑われた場合には、主治医の先生と相談していただき、主治医の先生から当院の医療連携室(03-5494-5486)にご連絡ください。お急ぎの際は主治医の先生から小児がんセンター医師(代表03-3416-0181)に直接ご相談ください。
また、当院でのセカンドオピニオンを希望される場合にも、主治医の先生とよくご相談いただき、当院の医療連携室(03-5494-5486)にご連絡ください。
  • 外来は、すべて予約制ですので、当院で受診される方は『事前予約』が必要です
国立成育医療研究センターでは、事前予約制を導入しております。当院での受診を希望の方は他院からの診療情報提供書(紹介状)をお手元にご用意の上、予約センター(電話 03-5494-7300)で予約をお取りになってからご来院ください(予約取得時に、紹介状の確認をしております)。詳しくは、予約センターにお問い合わせください。

予約センター (直通)

03-5494-7300

月~金9時~17時 (祝祭日を除く)にお電話ください。

※他施設入院中の患者さんへ
  • 当院受診時に他施設入院中の患者さんの診察料は自費扱いとなります。
  • ご家族のみでご来院の場合も、同様の扱いとなります。
  • 他施設で診断され、当院への受診を希望される場合は、主治医の先生と相談し、当院へ紹介していただくようお願い致します。紹介状は、必ずご持参くださいますようお願いいたします。

他の医療機関からの問い合わせ先(患者転院の御依頼)

小児がんセンター