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妊娠高血圧症候群(PIH)

妊娠高血圧症候群(PIH)とは

以前は『妊娠中毒症』と言われていた疾患で、日本産婦人科学会では「妊娠20週以降、分娩後12週まで高血圧(収縮期血圧が140mmHg以上もしくは拡張期血圧が90mmHg以上)がみられる場合、または、高血圧に蛋白尿(1日300mg以上)を伴う場合のいずれかで、かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものでないもの」として定義しています。全妊娠の3〜7%に発症し、母体死亡や周産期死亡(赤ちゃんの死亡)の原因にもなります。(もともと妊娠前から高血圧や蛋白尿がある場合は高血圧合併妊娠や腎疾患合併妊娠という病名になります。)血圧の上昇のみの場合は妊娠高血圧といい、血圧上昇と蛋白尿の両方を認める場合を妊娠高血圧腎症といいます。特に重症型や早発型では予後不良となる頻度が高く注意が必要です。


妊娠高血圧症候群(PIH)の病型分類

妊娠高血圧 妊娠20週以降に高血圧が出現し、分娩後12週までに正常化する場合。
妊娠高血圧腎症 妊娠20週以降に高血圧と蛋白尿が出現し、分娩後12週までに正常化する場合。
妊娠高血圧腎症 妊娠前から高血圧が存在し、妊娠20週以降に蛋白尿が出現した場合。
妊娠前から蛋白尿(腎疾患)が存在し、妊娠20週以降に高血圧が出現した場合。
妊娠前から高血圧と蛋白尿が存在し、妊娠20週以降にいずれかが増悪した場合。
子癇 妊娠20週以降に初めてけいれん発作が起き、他に原因がないもの。

妊娠高血圧症候群(PIH)の重症度分類

血圧 重症 収縮期血圧160mmHg以上もしくは拡張期血圧110mmHg以上
軽症 収縮期血圧140mmHg以上もしくは拡張期血圧90mmHg以上
蛋白尿 重症 1日尿タンパクが2000mg以上
軽症 1日尿タンパクが300mg以上

妊娠高血圧症候群(PIH)の発症時期による分類

早発型 妊娠32週未満に発症
遅発型 妊娠32週未満に発症

妊娠高血圧症候群(PIH)の原因は明らかになっていませんが、妊娠に対する母体の適応不全と考えられています。このため、治療の基本は妊娠の終了(分娩)とです。
妊娠高血圧症候群(PIH)は全身の臓器障害の原因となり、合併症には子癇発作や高血圧による脳出血、心不全、肺水腫、HELLP症候群、常位胎盤早期剥離、胎児発育不全、胎盤機能不全など多岐に渡ります。

妊娠高血圧症候群(PIH)の合併症

子癇

「妊娠20週以降に初めて起きたけいれん発作で、てんかんや脳炎、脳腫瘍、脳血管障害、薬物中毒を原因としないもの」を言います。子癇は、妊娠中、分娩中、分娩後のいずれの時期にも起きます。子癇が治まらない場合は、赤ちゃんのみではなくお母さんの命も危なくなる状態になります。中には脳出血などが起きている場合もあります。けいれんがおさまらない場合や赤ちゃんの状態が悪い時には、できるだけ早く赤ちゃんをお腹から出してあげることが必要です。

HELLP症候群

妊娠の後半からお産の後に発症しやすい疾患です。赤血球の破壊(溶血:英語ではHemolysis)、肝臓の機能の悪化(肝逸脱酵素の上昇:英語ではElevated Liver enzymes)、血小板の減少(英語ではLow Platelet)を起こす病態で、頭文字を取って、HELLP症候群といいます。診断が遅れると全身の多くの臓器がダメージを受けて致命的になります。
症状として、突然の心窩部痛(みぞおちの痛み)や嘔気嘔吐などがあります。このため急性胃炎などの内科疾患と区別が難しい場合があります。

常位胎盤早期剥離

赤ちゃんが生まれる前に胎盤がれてしまう病気です。全ての妊婦さんの0.5-1.3%に起こり、妊婦さんの死亡率は5-10%、赤ちゃんの死亡率は30-50%との報告があります。原因は不明で、発症を予知することも不可能です。妊娠高血圧症候群で起きることが多いと言われています。
主な症状は性器出血、腹痛、子宮の異常な硬さ(板状硬)、胎動の減少で、胎盤のはがれた部分が大きいと、出血性ショックを起こしたりお腹の中で赤ちゃんが亡くなったりします。お産後に子宮からの出血が多い場合には子宮をとらなければならない時もあります。

胎児発育不全・胎児機能不全

妊娠高血圧症候群、とくに重症の場合には、子宮や胎盤での血液の流れが悪く、赤ちゃんが栄養不足や酸素不足になってしまうことがあります。この結果、赤ちゃんは十分に育たなくなり(胎児発育不全)、普通よりも体重の少ない赤ちゃん(低出生体重児)が生まれる場合もあります。
また、赤ちゃんが酸素不足になり、胎児の心拍に異常(胎児機能不全)が起こりやすくなります。そうなれば、できるだけ早く胎児を取り出さねばなりません(帝王切開が必要になることが多いです)。最悪の場合にはお腹のなかで赤ちゃんが亡くなる(子宮内胎児死亡)こともあります。


妊娠高血圧症候群(PIH)の治療と国立成育医療研究センターの方針

妊娠高血圧症候群(PIH)はお母さんと赤ちゃんの両方のリスクがあるため、産科、母性内科、麻酔科、新生児科とで密に連携し管理を行っています。通常の妊婦健診ではかならず血圧測定と尿検査を行っており、妊娠高血圧症候群(PIH)の早期診断を行っています。外来管理中に血圧が高い場合には自宅血圧の測定を行います。重症型の場合や上記合併症を認める場合には入院管理が必要となります。実際の治療方法は以下のとおりです。

  1. 安静、食事療法
  2. 高血圧に対する降圧薬の使用
  3. 子癇発作の予防や治療のための鎮痙薬(硫酸マグネシウム)の投与
  4. 妊娠の終了(分娩)

妊娠34週以降で重症PIHの場合や、妊娠34週未満で妊娠継続が母体にとって危険と判断された場合や、胎児機能不全がある場合には分娩とします。(妊娠34週は早産期ではありますが、児の成熟がある程度期待できるため分娩とします。)
分娩の方法は帝王切開になることが多いです。満期(妊娠37週以降)の場合は経腟分娩をめざします。(この場合は母体の痛みによるストレスを減らすために無痛分娩を行うことも可能です。)


国立成育医療研究センターの診療体制

妊娠高血圧症候群(PIH)はお母さんと赤ちゃんの両方のリスクがあるため、産科母性内科麻酔科新生児科とで密に連携し管理を行っています。


診療実績


受診方法

※過去10日以内に発熱(37.5℃以上)している場合には、まずは救急センターへお越しください。


外来は、救急センターを除いてすべて予約制ですので、当院で受診される方は『事前予約』が必要です。

国立成育医療研究センターでは、事前予約制を導入しております。当院での受診を希望の方は他院からの診療情報提供書(紹介状)をお手元にご用意の上、予約センター(電話 03-5494-7300)で予約をお取りになってからご来院ください(予約取得時に、紹介状の確認をしております)。紹介状をお持ちでない場合、別途選定療養費がかかります。詳しくは、予約センターにお問い合わせください。

なお、現在他の病院で治療を受けている場合や緊急で受診が必要なときは、現在かかっている医療機関の医師から直接、医療連携室(TEL:03-5494-5486 (月~金 祝祭日を除く 8時30分から16時30分))へご連絡をお願い致します。

※救急センターは24時間365日診療をおこなっています。診療をご希望の方は、直接救急センターへお越しください。

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