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生後2歳までに抗菌薬使用歴があると 5歳時にアレルギー疾患があるリスクが高いことを示唆

国立成育医療研究センターアレルギー科の大矢幸弘医長、山本貴和子医師らのグループは、2歳までの抗菌薬の使用と5歳におけるアレルギー疾患の有症率との間には有意な関連があり、抗菌薬を使用した群でアレルギー疾患の発症リスクが高くなることを成育医療研究センター内の出生コホートデータを使用した解析で見いだしました。
この研究成果は、2017年7月に米国のアレルギー・喘息・免疫学会誌であるAnnals of Allergy, Asthma and Immunologyより発表されました。

▸ 発表論文情報

プレスリリースのポイント

  • 国立成育医療研究センターアレルギー科の大矢幸弘医長、山本貴和子医師らのグループは、同センターで出生した児が参加する成育コホート研究で、2歳までの抗菌薬の使用と5歳におけるアレルギー疾患の有症率との間には有意な関連があり、抗菌薬を使用した群でアレルギー疾患の発症リスクが高くなっていることを発見しました。
  • 本研究の強みは、病院を受診したお子さまを調査したのではなく、当院で出産した一般集団の子どもを前向き研究として追跡した縦断的な調査からの成果であることです。これにより、エビデンスレベルが後ろ向き研究としてカルテデータを集積した研究結果と比べて高くなります。今後、5歳の子どものアレルギー疾患が5歳以降どのように関連していくのかに関しても、さらなる長期間の追跡が必要であると考えています。
  • 本研究は疫学的に2歳までの抗菌薬使用とその後の5歳時のアレルギー疾患の有症率とを検討したものです。本研究で示唆された結果は、抗菌薬曝露がアレルギー疾患に関与する機序の解明など、今後の課題も残しています。多くの細菌感染症では抗菌薬の使用が必要になりますが、一般的な風邪のほとんどはウィルス感染症で抗菌薬が効きません。抗菌薬を使用することにより、腸内細菌が乱れて下痢をしたり、抗菌薬が効かない耐性菌が増えたりすることが知られています。今回の研究結果もあわせ、抗菌薬使用のリスクとベネフィットを考慮して抗菌薬使用を適切に決定することが重要です。

背景・目的

アレルギーの発症リスクを増やす要因として、性別・アレルギー素因などの個体要因に加えて、妊娠中の母親の喫煙に始まる胎児期から小児期の受動喫煙や大気汚染への曝露など様々な因子が関わっているとされています。海外から抗菌薬使用によるアレルギー発症のリスクが上がるとの報告があり、日本の子供たちでも同様なのかどうか生後2歳までの抗菌薬使用と5歳時のアレルギー疾患の関連について検討しました。

研究手法と成果

本研究は国立成育医療研究センターで出産を予定した一般集団の妊婦さん(1701名)や生まれたお子さま(1550名)をリクルートした出生コホート研究(成育コホート研究:主任研究者 大矢幸弘)のデータを使用して行いました。2003年から2005年に妊娠したお母さまを登録し、現在もお母さまとそのお子さまを継続的に追跡調査しています。この追跡調査より、妊娠中や小児期の様々な曝露や生活様式などが子供たちにどのように与える影響を調査することが可能です。
今回の検討においては、2歳時に保護者か回答するアンケート調査にて抗菌薬の使用歴について調査をしました。5歳時にアレルギーがあるかどうかについてもアンケート調査を用いて評価しました。質問紙の回答が得られなかった参加者の方などは除外して解析しました。回答が得られた902人を2歳までの抗菌薬使用の有無と5歳時のアレルギー疾患の有症率を比較しました。また、抗菌薬の種類別の使用の有無とアレルギー疾患の有症率の比較も行いました。アレルギー疾患に影響を与える因子を調整して解析を行いました。

研究結果

  1. 2歳までの抗菌薬使用歴と5歳時の気管支喘息の罹患については調整オッズ比1.72、5歳時のアトピー性皮膚炎の罹患の調整オッズ比1.40、アレルギー性鼻炎の罹患の調整オッズ比1.65と統計学的に有意な関連がありました(表1)。
  2. 抗菌薬の種類別の検討では、 2歳までのセフェム系の抗菌薬使用歴 は、5歳時の気管支喘息の罹患の調整オッズ比1.97やアレルギー性鼻炎の罹患の調整オッズ比1.82と関連がありました。また、マクロライド系の使用歴は、5歳時のアトピー性皮膚炎の罹患の調整オッズ比と関連がありました(表1)。
研究結果の画像

今後の展望

本研究は疫学的に2歳までの抗菌薬使用とその後の5歳時のアレルギー疾患の有症状況とを検討したものです。本研究で示唆された結果は、抗菌薬曝露がアレルギー疾患に関与する機序の解明など、今後の課題も残しています。

感染症科 宮入 烈医長のコメント

多くの細菌感染症では抗菌薬の使用が必要になりますが、一般的な風邪のほとんどはウィルス感染症で抗菌薬が効きません。抗菌薬を使用することにより、腸内細菌が乱れて下痢をしたり、抗菌薬が効かない耐性菌が増えたりすることが知られています。
今回の研究結果もあわせ、抗菌薬使用のリスクとベネフィットを考慮して抗菌薬使用を適切に決定することが重要です。
本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時


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