国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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新型コロナウイルス感染症と母乳育児について

最終更新日:2022/3/31

当院では新型コロナウイルスに感染しているお母さん(疑い例や無症状陽性例を含む)や、濃厚接触者となったお母さんの母乳育児について、現時点での国内外からの報告や声明に基づき以下のように考えております。皆さんのご参考になれば幸いです。

※現在の流行の中心であるオミクロン株が諸外国で観測され始めたのは2021年11月頃からであり、オミクロン株が母乳や母乳育児にどのような影響を与えるのかはまだよく分かっていません。以下の内容は、株によらず、新型コロナウイルス全般についてこれまでに集積された知見に基づいたものです。今後も新たな変異株が出現してウイルスの性質が大きく変わる可能性はありますし、国内での感染対策指針も随時更新されていくものと思われますので、その都度、信頼できる公的な情報源からの最新情報もご参照ください。

※コロナ禍での医療業務を優先するため、お電話などでのお問い合わせはお控えください。質問などがございましたら、外来受診時に担当医にお尋ねください。

新型コロナウイルスが初めて確認されて以来、母乳中の新型コロナウイルスについて世界中で様々な研究が行われてきましたが、母が新型コロナウイルスに感染していてもその母乳中に新型コロナウイルスの断片が含まれること自体が稀であり、しかも感染力を有したままの新型コロナウイルスが検出されたことはありません。一方、感染者の母乳には中和抗体(新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染するのを妨げうる物質)が含まれていたという報告は複数あります。

新型コロナウイルスについてすべてが解明できているわけではありませんが、上記のような科学的データと母乳育児が元来持つ様々なメリットとを根拠として、WHO(世界保健機関)やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)、日本小児科学会などの専門家組織は、母親が新型コロナウイルスに感染中であってもできる限り母乳育児を継続することを推奨しています。

当院としても同様に、新型コロナウイルスに感染中のお母さんにも、出産後できるだけ早期に母乳育児を開始し、継続することを推奨しております。ただし、授乳や搾乳に際して、お母さんの飛沫が手、搾乳器、容器などを介して赤ちゃんに伝わり感染を引き起こすリスクもあるため、十分な感染対策を行うことも必要です。以下、お母さんの状況に応じた対応についてご説明いたします。

なお、自宅療養に関する全般的な注意点については、東京都の資料が参考になります。事前によく読んでおきましょう。


当院に入院中のお母さんについて

当院では、入院中のお母さんについて、母乳育児をお手伝いするととともに院内感染対策へのご協力をお願いしております。
詳細はこちらをご覧ください。


ご自宅やご実家など、医療施設や療養施設以外でお過ごしのお母さんについて

① 赤ちゃんへの授乳方法

赤ちゃんへの授乳の方法として、感染対策の観点からは大きく分けると以下の3通りが考えられます。A、B、Cの順に感染者(お母さんを含む)と赤ちゃんとの接触時間が短くなりますが、その分、母乳育児が続けにくく母乳栄養によるメリットを得にくくなります。お母さんの病状や、他のご家族の健康状態、ご自宅の構造(隔離のしやすさ、動線の確保)等を踏まえて、いずれかを選択しましょう。

※ 実際にはこれらとは別の手段を選択せざるを得ないこともありえます(例:母が授乳できるほど体調が良くはなく、しかも家族全員陽性者である場合は「搾乳して、母とは別の陽性者が授乳する」など)。判断に迷った場合にはかかりつけ医等にご相談ください。

A) 直接授乳を行う

母乳育児を継続しやすく、母乳栄養による様々なメリットを享受できることが利点です。お母さんが感染者である場合には、お母さんが作った新型コロナウイルスに対する抗体を、母乳を介して赤ちゃんに届けることもできます。一方、飛沫や接触によりお母さんから赤ちゃんへウイルスが伝播する可能性があるため、マスク着用や入念な手指消毒など、適切な感染対策が必要です。

B) 搾乳して、感染していない介護者が授乳する

母乳栄養の利点を残しつつ、お母さんと赤ちゃんとの接触(距離と時間)を最小限にすることで感染のリスクも下げうる方法です。他のご家族の協力が必要です。感染対策が不十分だと、お母さんから介護者へ、さらに赤ちゃんへと感染が拡がる可能性があります。

C) 人工乳を用い、感染していない介護者が授乳する

母乳を与えない間はお母さんから赤ちゃんへの母乳を介した免疫物質の移行等は期待できませんが、お母さんから介護者や赤ちゃんへと感染が拡がる可能性を最小限に抑えうる方法です。しかし、特に周囲で感染者が増えているようなときには、介護者が何らかの経路で新型コロナウイルスに感染し、さらに赤ちゃんにも拡がる可能性はあります。感染症が治った後に母乳育児を開始、再開するためには人工乳を与えている間も1日8~12回の搾乳を続けて母乳分泌を維持しておくことが重要です。

② 授乳の手順

お母さんや介護者など授乳に関わる方は全員、

  • 清潔なマスクを着用し、しっかりと顔にフィットしていることを確認しましょう。咳やくしゃみなどをして汚れたら、新しいものに替えましょう。
  • 流水と石鹸で20秒以上かけてしっかりと手を洗いましょう。目に見える汚れがなければアルコール性手指消毒剤(アルコール濃度60%以上のもの)で消毒することも有効です。
  • 準備中や授乳中はマスクや自分の顔、周囲のもの(スマートフォンなども含む)に触れないようにしましょう。触れてしまったら、その都度、手洗いか手指消毒を繰り返しましょう。

A) 直接授乳を行う場合

  • 乳輪回りを清浄綿(赤ちゃんの肌や口周りに使えるもの)で拭いてください。
    ※ 通常(新型コロナウイルス感染症の疑いが無いとき)は拭く必要はありません。
  • あとはいつもと同じように直接授乳を行います。

B) 搾乳して、感染していない介護者が授乳する場合

  • 乳輪回りを清浄綿(赤ちゃんの肌や口周りに使えるもの)で拭いてください。
    ※ 通常(新型コロナウイルス感染症の疑いが無いとき)は拭く必要はありません。
  • 搾乳器(電動でも手動でも可)で搾乳し、搾乳した母乳を介護者に預けます。
  • 介護者は母乳を受け取り、授乳します。
  • お母さんも介護者も、母乳の受け渡しの前後には手洗いか手指消毒をしっかりと行いましょう。
  • 搾乳器は毎回、洗浄と消毒を行うことが理想的です。
  • 冷凍庫保管の場合は、以下2点を推奨します。
    1. ① 食品保存容器などで2重にする(破損などにより漏れる可能性があるため)。
    2. ② 冷凍庫に入れる前に、外側をアルコール含有消毒綿などで消毒してから入れる。

C) 人工乳を用い、感染していない介護者が授乳する場合

  • 粉ミルクを正しく調乳しましょう。
    ※ 新型コロナウイルス感染症の有無に関係なく、常に以下の事項には気をつけましょう。
    1. ① 製品に記載された量を守って粉ミルクを入れましょう。
    2. ② やけどしないように注意しながら、70℃以上のお湯を入れて溶かす(粉ミルクは無菌ではありませんので、必ず70℃以上のお湯で溶かして殺菌してください)。
    3. ③ できあがったミルクは大人の腕の内側などに垂らして、熱すぎないことを確認してから赤ちゃんにあげてください。
    4. ④ 調乳後2時間以内に使用しなかったミルクは、細菌が繁殖しますので破棄してください。

当院以外の医療施設や療養施設でお過ごしのお母さんについて

お母さんから赤ちゃんへの感染を防ぐとともに、施設全体としての感染対策が必要ですので、入院先、滞在先の方針に従ってください。どのような方針を取るにしても、感染症が治った後に母乳育児を開始、再開するためには、1日8~12回の搾乳を続けて母乳分泌を維持しておくことが重要です。