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腹部CT

小児腹部CT撮影の最適化のために

小児腹部領域における画像診断の第一選択は、超音波検査です。よってCT検査は超音波検査で診断が得られなかった場合や、超音波所見と身体症状に乖離があった場合に行われます。特に超音波検査は、全体像の把握が困難な場合や腫瘍性病変で全身の精査が必要な場合、患者状態が悪く早急な検査が必要な場合に施行されます。また超音波検査は施行する術者の技術差が大きいこともあり、腹部CT検査は治療方針決定のために必要な場面が多く、頭部CTに続いて2番目に施行頻度が高い検査です。しかしながら、小児のCT検査にあたっては単純CT検査なのか、それとも造影CTなのか、ダイナミック造影CTなのか、成人以上にその適応をよく吟味する必要があり、放射線被ばく・鎮静といったリスクを考慮し、本当に必要な検査のみを行うことが重要です。特にCT検査の適応がある場合、as low as reasonably achievable(ALARA)原則に則り、放射線被ばくを最小限に抑える必要があります1 - 3)。本章では、小児腹部CT検査の適応と検査に対する心構え、および被ばく低減技術について表1, 2にまとめました。

表1 小児腹部CT検査の適応・被ばくのリスク・検査前準備4)

適応疾患(疑いを含む) 急性腹症(急性虫垂炎疑いを含む)、腹部鈍的外傷、炎症(不明熱、腹膜炎)、腹部腫瘤、小児がんや白血病、悪性リンパ腫の腹部浸潤の評価、固形腫瘍の初回や治療後のフォローアップ、腸閉塞、炎症性腸疾患(IBD、 クローン病、潰瘍性大腸炎など)、消化管出血、腎・尿路結石、腎盂腎炎、虐待の可能性など
小児特有の身体的特徴 腹腔内の脂肪量が非常に少なく、成人と比較し臓器間や腸管との境界が不明瞭
キーとなる項目 造影剤の投与
患者のポジショニング
被ばく低減の工夫
協力が得られれば呼吸停止で行う
多断面再構成画像(MPR)の構築
放射線被ばくのリスク 放射線誘発性がんのリスク推定:成人に比べ2から3倍脆弱
検査前準備の必要性 精神的準備(患児、両親)、鎮静の有無、造影CTの準備(総論部分の記載を参照してください)

表2 小児腹部CT検査の撮影技術4)

患者の位置 ガントリー中心に配置、フィートファースト、固定用ベルト装着
撮影範囲 横隔膜頂部~座骨 可能であれば呼吸停止を行う
撮影回数 情報量を考慮し最小限に抑える、単相撮影(造影CT1相のみ)が基本
放射線被ばく管理 小児には必要最低限の被ばく線量で検査を行うこと
可能な限りCT-AECを使用する
多相撮影,造影晩期撮影を極力避ける
線量決定に必要な画質の設定(noise index, quality reference mAs, SDなど)に注意を払うこと
再構成画像 冠状断、矢状断の再構成画像は有用、ただし多くのデータが生じることになる。放射線科医と相談で決定。積極的な逐次近似画像再構成の選択
スライス厚 z軸の解像度およびノイズ低減を考慮
Scan field of view (SFOV) 体格に見合ったSFOV
管電圧 (kVp) ノイズ、コントラスト、被ばく低減を考慮
管電流 (mA) auto exposure controlの活用
管球回転速度 0.5秒を推奨
ヘリカルスキャン over beaming, over ranging, pitch factorを考慮
Dose index 診断参考レベル(DRL)を意識した検査
以下に米国ACRの診断参考レベル(2017,表3)5)、欧州(2018,表4)6)および最新の日本の診断参考レベル(2020,表5)7)を示す

表3 米国医学物理学会(AAPM)の推奨する小児腹部CTのCTDIvolの目安(2017年)

平均年齢 CTDIvol (mGy)
<1歳 2.5 - 3.5
1-5歳 3.5 - 4.6
5-10歳 4.2 - 5.9
10-15歳 4.9 - 6.7
15歳< 6.6 - 11.2

32㎝ファントムでの数値を示す

参考文献:The American Association of Physicists in Medicine (AAPM): Routine pediatric abdomen and pelvic CT protocols (2017 July 21)

表4 欧州の小児腹部CT 診断参考レベル(EDRL、N°185、2018年)

体重 CTDIvol (mGy) DLP (mGycm)
5kg以下 (欠番) 45
5-15kg以下 3.5 120
15-30kg以下 5.4 150
30-50kg以下 7.3 210
50-80kg以下 13 480

32㎝ファントムでの数値を示す

参考文献:European guidelines on diagnostic reference levels for pediatric imaging (N°185) 2018

表5 最新の日本の診断参考レベル(Japan DRL 2020)小児腹部CT (年齢区分)

1歳以下 1-<5歳 5-<10歳 10-<15歳
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
10
(5)
220
(110)
12
(6)
380
(190)
15
(7.5)
530
(265)
18
(9)
900
(450)

16㎝ファントムの数字を示し( )は32㎝ファントムでの数値を示す

表6 最新の日本の診断参考レベル(Japan DRL 2020)小児腹部CT (体重区分)

5kg以下 5-<15kg 15-<30kg 30-<50kg
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
5
(2.5)
130
(65)
12
(6)
330
(165)
13
(6.5)
610
(305)
16
(8)
720
(360)

16㎝ファントムの数字を示し( )は32㎝ファントムでの数値を示す

参考文献:医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME); 日本の診断参考レベル (2020 年版)令和2年7月3日


参考文献

  1. The ALARA (as low as reasonably achievable) concept in pediatric CT intelligent dose reduction: multidisciplinary conference organized by the Society of Pediatric Radiology, August 18-19, 2001. Pediatr Radiol 2002; 32:217-313.
  2. 日本放射線技術学会撮影部会:X線CT撮影における標準化〜GALACTIC〜(改訂2版).京都:日本放射線技術学会,2015
  3. 小児CTガイドライン : 被ばく低減のために(ガイドライン)。 日本放射線技術学会雑誌2005;61: 493-495
  4. The American Association of Physicists in Medicine (AAPM): Routine pediatric head CT protocols (2017 July 21) https://www.aapm.org/pubs/CTProtocols/
  5. ACR-AAPM-SPR Practical parameter for diagnostic reference levels and achievable doses in medical X-ray imaging https://www.acr.org/-/media/ACR/Files/Practice-Parameters/Diag-Ref-Levels.pdf
  6. European guidelines on diagnostic reference levels for pediatric imaging (N°185) 2018 http://www.eurosafeimaging.org/wp/wp-content/uploads/2018/09/rp_185.pdf
  7. 医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME); 日本の診断参考レベル(2020 年版)令和2年7月3日
庄司 友和(東京慈恵会医科大学附属病院 放射線部)
宮嵜 治(国立成育医療研究センター 放射線診療部 診療部長)

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