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研究内容

単一遺伝子疾患研究

単一遺伝子疾患は、ゲノム上の一遺伝子の変異に起因する遺伝病です。私たちの研究室では、先天性疾患の患者さんを対象としてエクソーム解析やマイクロアレイ解析などを行い、疾患原因となる遺伝学的変化を探索しています。患者さんで疾患原因候補となる遺伝学的変化が検出された場合は、細胞実験や動物モデル解析などにより病因遺伝子の特定を進めています。さらに、単一遺伝子変異を持つ患者さんの臨床情報を解析し、その変異が疾患を招くメカニズムを研究しています。

最近の研究成果

  1. 性分化疾患・性成熟疾患・生殖機能障害における疾患成立機序の解明
  2. 性分化疾患の新規原因遺伝子MYRFの病的バリアントを複数の性分化疾患患者で見出し、その病態を明らかにしました (Hamanaka et al. Hum Mol Genet 2019)。また、PROKR2のフレームシフト変異が共在する野生型受容体の奇異性活性化を介して思春期早発症を招くこと (Fukami et al. J Cell Mol Med 2017, Fukami et al. Clin Endocrinol 2017) 、STX2が無精子症原因遺伝子であることなどを明らかとしました (Nakamura et al. Hum Mut 2018 Cover article)。

  3. 成長障害の病態解明
  4. ヒト下垂体機能低下症患者で同定されたPOU1F1 深部イントロンバリアントが、下垂体組織におけるスプライシング異常を介して疾患を発症することをマウスモデル、細胞モデルを用いて証明しました (Akiba et al. Endocrinology 2022)。また、20番染色体微細染色体欠失が、TTI1プロモーターとGHRH翻訳領域から成るキメラ遺伝子の形成を介して下垂体性巨人症を招くことを見出しました (Katoh-Fukui et al. Hum Mol Genet 2023 下図)。

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インプリンティング疾患研究

インプリンティング疾患は、親由来特異的に発現するインプリンティング遺伝子の発現異常により生じる疾患です(下図)。これには、Prader-Willi症候群やSilver-Russel症候群が含まれます。私たちの研究室は、インプリンティング異常症患者さんの試料や臨床情報を用いたトランスレーショナルリサーチや、患者由来iPS細胞やマウスモデルなどを用いた基礎研究を進めています。

最近の研究成果

  1. 生殖補助医療(ART) のインプリンティング異常症発症リスクの解明
  2. 配偶子や受精卵に人工的な操作を加えるARTはインプリンティング異常症発症リスクであると予想されてましたが、ARTに関連する両親の年齢の高齢化の評価はされていませんでした。われわれは、ARTがエピ変異によるインプリンティング疾患発症のリスク因子と成り得ること、母親の高齢化は片親性ダイソミーによるインプリンティング疾患発症のリスク因子と成り得ることを明らかとしました (Hara-Isono et al. Clin Epigenetics 2020, 2023)

  3. DNAメチル化可変領域 (DMR) のメチル化維持機構の解明
  4. インプリンティング遺伝子発現調節領域であるDifferentially methylated region (DMR) のDNAメチル化維持因子であるZNF445変異を持つインプリンティング疾患患者さんを発見しました。これにより、ヒトにおけるDMRメチル化維持にZNF445が重要な役割を果たすことを明確にしました(Kagami et al. Clin Epigenetics 2019, 2021)。

  5. 偽性副甲状腺機能低下症 (PHP) 1B発症機構の解明
  6. 20番染色体GNAS領域のDMRのメチル化異常を示すPHP1B家系例の全ゲノムシーケンシングで、レトロトランスポゾン挿入を同定しました。さらに患者iPS細胞の解析によって、母アレルレトロトランスポゾン挿入がNESP55転写を低下させ、GNAS A/B-DMRのメチル化を低下させたことが判明しました。これにより、A/B transcriptが増加してGsα産生が抑制され、PHP1Bが発症したと推測されます(Kawashima et al. J Bone Miner Res 2022)。

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多因子疾患研究

小児の疾患には、遺伝的因子と環境因子の両者が組み合わさることによって生じる多因子疾患が含まれます。私たちの研究室では、さまざまな多因子疾患患者さんの遺伝学的解析と臨床情報解析を行い、多因子疾患の発症に関与する因子を探索しています。さらに、患者さんの解析で得られた仮説を細胞や動物モデルの実験で検証しています。また、健常な小児の発達や発育に影響を与える遺伝的因子と環境因子の同定も行っています。

最近の研究成果

  1. 胆道閉鎖症に関与する因子の探索
  2. 胆道閉鎖症患者と胆道閉鎖症以外の肝移植患者さんの母子間マイクロキメリズムの頻度と程度を検討し、胆道閉鎖症における母子間マイクロキメリズムの寄与は限定的であることを明らかにしました (Tamaoka et al. J Pediatr Gastroenterol Nutr 2021、下図)。一方、MFHAS1バリアントが胆道閉鎖症のリスク因子である可能性を見出しました(Tamaoka et al. Hepatology Res 2023、下図)。

  3. 性成熟と思春期発来のメカニズム解明
  4. 健常な小児の思春期発来の最初の徴候が、末梢組織における女児特異的アロマターゼ活性化であることを明らかにしました(Igarashi et al. Endocr Connect 2021)。また、胎盤がアンドロゲン前駆体の供与体として男性胎児の性分化に関与している可能性を見出しました。(Yoshida et al. Eur J Endocrinol 2021)。

  5. 新規ヒト男性ホルモンの病的意義の解明
  6. ヒトで近年見出された非古典的男性ホルモン (11-oxygenated C19 steroids) が、多嚢胞戦卵巣症候群(PCOS)女性における男性化症状の一因になっていることを見出しました (Yoshida et al. Endocr J 2018)。さらに、11-oxygenated C19 steroidsの妊娠母体での過剰産生が46,XX胎児の外性器男性化を招くことを明らかにし、性分化疾患の新たな原因を見出しました。(Nagasaki et al. Hum Reprod 2020)

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染色体・ゲノム異常症研究

減数分裂時の染色体分配異常や体細胞における染色体喪失などは染色体異数性の原因となります。また、組み換え異常、DNAの複製エラーなど様々な要因によってゲノム構造が変化します。染色体異数性やゲノム構造変化は、ヒト疾患原因の一つとして重要です。私たちの研究室では、染色体異常やゲノム構造変化に関する研究を進めています。

最近の研究成果

  1. 体細胞性染色体喪失の機序の解明
  2. 私たちは、体細胞におけるモザイクY染色体喪失(mLOY)の発生機序の一つとして、Y染色体パリンドローム構造により生じた2動原体染色体形成が関与する可能性を見出しました (Miyado et al. Cytogenet Genome Res 2018)。また、高齢男性160人のY染色体MLPA解析によって、mLOYと長腕AZF領域のコピー数多型の間に関連がないことを明らかにしました(Ogiwara et al. J Hum Genet 2021)。

  3. ゲノム構造異常の新規発症メカニズムの解明
  4. 私たちは、2000例をこえる先天性疾患症例に対して染色体マイクロアレイ解析を行ってきました。複雑ゲノム再編成症例に対して合成ロングリード全ゲノムシークエンシング解析を含めた包括的解析を行い、減数分裂前に複数の染色体に複雑染色体構造異常を生じる「多焦点性ゲノムクライシス」を発見しました (Hattori et al. BMC Med Genomics 2019、下図) 。

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医療・社会への貢献

わたしたちの研究室は、医学研究を通じて社会に貢献することを目指しています。

活動内容

  1. クリニカルシークエンスの社会実装化
  2. クリニカルシークエンスとは、患者さんの遺伝子やゲノムを解析し、その結果を診断や治療方針選択の補助とする検査法のことです。わたしたちは、日本小児内分泌学会遺伝子診断委員会、成育衛生検査センターやかずさ遺伝子検査室と連携し、正確なクリニカルシークエンスの実施と普及に努めています。

  3. 成育疾患研究の基盤整備
  4. これまでに国内外の連携研究機関より15,000を超える臨床検体を収集し、検体バンキングとデータベース構築を行っています。また、遺伝子組み換えやゲノム編集技術によりヒト疾病を再現したモデル動物や細胞を作出し、成育疾患研究を推進しています。

  5. 若手研究者の育成・支援
  6. 次世代の医学研究を担う若手研究者の育成を目的とし、多くの大学や専門学校、医療機関から大学院生・インターン生、基礎医学研究に興味のある臨床医を積極的に受け入れています。成育疾患の基礎・臨床研究を通じて、医学研究の基本を理解し、キャリアの方向性に沿ったスキルを身に着けられるようサポートします。

  7. 情報報発信と国際連携
  8. わたしたちは、研究成果を学術論文や学会発表、講演などの形で社会に積極的に発信しています。また、国内外の研究班やコンソーシアムへの参画を通じ、診療の手引きやコンセンサスガイドラインの作定などに貢献しています。

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