国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

代表: 03-3416-0181 / 予約センター(病院): 03-5494-7300
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患者・ご家族の方へ Patient & Family

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合併症妊娠外来

診療日:毎週水曜日午後

様々な合併症を持ち妊娠された方の周産期管理や、妊娠前のカウンセリングを行う外来です。また当センターでは小児期に重症の病気を克服された方も多く、妊娠、出産にあたっての情報収集を行っています。

V-Pシャント留置を受けられた方の妊娠について

一番数の多い報告として2000年のものがあります。
これはシャント留置を受けられた方70人(V-Aシャントも含む)、のべ138妊娠、143胎児の報告です。これによるとシャント留置の合併症のために妊娠の中断を選択せざるを得なかった方は4症例のみでした。100人の方は正期産で生まれ、5人は早産で生まれています。残念ながら、流産を30例に認めましたが、これらは一般的な流産率と大きな違いはありません。
以上より無事に妊娠、出産できる可能性は高い、と考えます。

妊娠、出産を考える前に

かかりつけの脳神経外科、産科を受診し、今後の妊娠出産に関してご相談いただくようお願いいたします。特に脳神経外科では妊娠前にシャントが機能しているか確認すること、またできれば画像評価(脳室が拡大していないか確認する)を受けておかれることをお勧めいたします。

妊娠中の合併症について

一番問題になるのはシャント機能不全です。これらは特に妊娠の後半(28週以降)に起こりやすい、という報告が多いようです。症状としては頭痛、めまい、吐き気、視野障害などのいわゆる頭蓋内圧亢進症状がみられるようです。これらの症状に注意して、変化があった場合には医療機関にご相談ください。

分娩方法について

普通に出産できるという報告がほとんどで、帝王切開術での分娩は産科的適応がある場合に考慮されます。

産後について

出産を終えられれば、その後のトラブルは少ないようです。しかし産後にシャント機能不全の症状が出現する、またシャントトラブルが発生する、などの報告もあります。出産後に一度脳神経外科でシャントの位置、機能の確認を受けられることをお勧めします。

関係してくださる医療関係者のみなさまへ

  1. 妊娠中のシャント機能不全に関してはまずは保存的に経過をみることが多いようです。その際にはpumping、aspirationなどの処置を行います。しかし処置を行っても症状が軽快しない、もしくは処置が頻回になる場合には感染のリスクが高まりますのでシャント再留置を考慮する必要があるようです。
  2. 帝王切開術や分娩第2期の努責を回避するための器械分娩(鉗子分娩、吸引分娩)は基本的には必要ないようです。しかしシャントがうまく機能していない場合、また産科的適応で上記が必要となります。
  3. 分娩時の麻酔については、脊髄髄膜瘤術後の方以外では硬膜外麻酔は禁忌ではありません。過度の努責を避けるために併用することが望ましい、という文献もみられます。
  4. 出産時の予防的抗生剤投与に関して、通常以上に行うべきとするエビデンスはありません。しかし感染を起こした場合のリスクが高いのでエビデンスはないものの投与を推奨する文献が多いようです。その際は産褥感染症で多くみられるグラム陰性菌や、皮膚の常在菌であるStaphylococcus albusやStaphylococcus epidermidisを対象とした抗生物質を使用することが望ましいとされています。また感染のリスクが高いため、心弁膜疾患のある方、人工物が挿入されている方にも抗生剤使用を勧める文献が多いようです。また帝王切開後のシャント機能不全(フィブリン沈着など)の報告もありますのでご留意ください。

2011/3/10現在

肝移植手術を受けられた方の将来に妊娠・出産につきまして

これから今後の妊娠・出産について、また妊娠・出産をお考えになった場合にお気を付けいただきたいことをお話しさせていただきます。

肝移植を受けた女性は赤ちゃんを産めるの?

肝移植を受けられた方がご出産されたのは、今から50年前が最初といわれています。現在では、多くの肝移植を受けられた患者さんが妊娠・出産をご経験されています。まとまった報告としては、アメリカより121人の女性の方の202妊娠が報告されています。この報告では74%の方が無事に赤ちゃんをご出産され、21%の方が流産され、5%の方が妊娠中絶を選択されています。一般に流産率は20-30%と報告されており、肝移植を受けたことが流産率の増加につながっている訳ではないといえます。これから元気に赤ちゃんを産んでもらうことが十分期待できるといえそうです。

肝移植から妊娠までどれくらい待たないといけないの?

これまでの報告をみると1年以上は待って妊娠する必要がありそうです。イギリスからの45人の女性の71妊娠の報告では、1年以内に妊娠した場合には早産や急性拒絶反応のリスクが増加すると報告されています。また別の報告では、1年以内に妊娠した場合に7妊娠の内6妊娠(86%)で流産され、対して2年以上間隔が開いた場合には23妊娠中18妊娠(78%)で無事にご出産されています。

妊娠した場合にはどのようなリスクがあるの?

母体のリスクとしては、高血圧・妊娠高血圧症候群のリスクが一般より高いと報告されています。血圧上昇が著明な場合には、妊娠継続が危険である場合があり早産となる可能性が高くなります。先ほどご紹介した、アメリカからの報告でも35%で早産(一般で12%程度)になっています。 しかし、近年未熟児医療も進歩しておりますので、妊娠28週(妊娠8か月)まで妊娠が継続されれば95%以上で無事に赤ちゃんが成長していくことが望めます。

お産は普通に産んであげられるの?

これまでの報告からは肝移植を受けているからといって、帝王切開術でお産しなければならないということはありません。一般の方たちと同様に普通に赤ちゃんを産んであげることができます。

免疫抑制剤は赤ちゃんには影響しないの?

薬剤の種類によって想定される赤ちゃんの影響は異なります。しかし、免疫抑制剤により一般の奇形発生率(2-3%)を増加させるという報告の方が少なくなっています。
無事に赤ちゃんを産むためには、妊娠・出産中も適切な投薬は受けていただくことが必要となります。
妊娠をお考えになった場合には妊娠前に使用している投薬の影響をご相談いただくようにお勧めいたします。

以上、簡単にご説明いたしましたが医療・医学の進歩により内容が変化する場合があります。
今後、妊娠・分娩について話が聞きたい場合にはご相談いただければ対応させていただきます。


2011年4月7日現在

小児腫瘍治療後の方の妊娠について

治療方法(手術療法、化学療法、放射線治療、またそれらの組み合わせ)によってその影響は異なります。

  1. 手術療法
    両側卵巣摘出術後の場合、残念ながら妊娠の可能性はなくなります。また卵巣からの女性ホルモンの分泌がありませんので、骨や血管に対する女性ホルモンの働きを補うためホルモン補充療法が必要になります。
  2. 化学療法
    使用された薬剤の種類、投与量、投与された期間、投与を受けられた時のあなたの年齢などが関係してきます。一時的に卵巣機能が低下しても月経はいずれ再開し、妊娠できれば、妊娠、分娩に関してはあまり影響を与えないとする報告がほとんどのようです。しかし早発閉経といって、月経が40歳未満に終了してしまうことがあります。
  3. 放射線治療 
    これも照射線量、照射部位、治療を受けられた時のあなたの年齢が関係してきます。また直接的影響(卵巣、子宮を含む骨盤、腹部への照射)と、間接的影響(視床下部-下垂体という卵巣の機能を調節する部位を含む頭部への照射)に分けられます。直接的影響についてはさまざまな文献がありますが卵巣への20Gy以上の照射量で卵巣機能不全との関連が、また子宮への14〜30Gyの照射量では、治療を受けられた時のあなたの年齢にもよりますが、子宮の発育不全が起こり、妊娠に影響を及ぼすとする報告があります。頭部照射による間接的影響では18〜24Gyでは黄体機能不全による流産が、24Gyを越えると思春期遅発症や無月経がみられるとする報告があります。
  4. 実際の報告
    アメリカとカナダ合同の2006年の研究(CCSS ;The childhood Cancer Survivors Study)では小児腫瘍克服者1264人の2201妊娠について検討しています。これによると早産率は21.1%と対照群とくらべ、有意に多くなっています。また特に子宮に5Gy以上という高線量の治療を受けられた方は早産率、低出生体重児を出産される率やSGA児といって週数に比して体重が小さい赤ちゃんを出産される率が高いと報告しています。英国の2009年の報告(小児腫瘍克服者10483人、うち女性4113人の報告)も同様で、腹部への放射線治療を受けられた方では、早産率が3.2倍、低出生体重児出産が1.9倍、12週以降の流産率が1.9倍と高くなると報告しています。しかし73%の方は生産児獲得に至っています。また2010年のオランダの報告では215人の小児がん克服者のうち64人が妊娠し、そのうち40人は生産児を出産できたと報告しています。この報告では腹部への放射線治療を受けられた方の平均分娩週数は34.9週と一般と比べ早産傾向があると報告しています。

妊娠、出産を考える前に

あなたの受けられた治療内容に関する情報が大切になります。病気の診断日、腫瘍の組織型、腫瘍ができていた部位、行われた治療法とその内容などが妊娠をご希望された場合には重要になります。治療を受けられた病院でこれらの内容をご確認ください。

妊娠、出産を考える前に

あなたの受けられた治療内容に関する情報が大切になります。病気の診断日、腫瘍の組織型、腫瘍ができていた部位、行われた治療法とその内容などが妊娠をご希望された場合には重要になります。治療を受けられた病院でこれらの内容をご確認ください。

妊娠中の合併症について

小児腫瘍治療後の方には妊娠合併症として、高血圧、児の胎位異常、流産、死産、早産、低出生体重児が多いなどの報告があります。しかし治療を受けられた時のあなたの年齢、治療内容、お薬や放射線の投与量によって状況は異なってきます。化学療法に関しては妊娠、児への影響はほとんどないとする報告が多いものの、お薬の種類によっては心筋に影響を及ぼし妊娠中に心不全を起こされた方の報告などもありますので、注意が必要です。放射線治療に関しても、その後の子宮の発育に影響を及ぼすことがありこれも注意が必要です。 なお赤ちゃんに関しては、出産された児に先天奇形が多い、などの報告はほとんどみられません。また赤ちゃんの腫瘍発生率も、家族性腫瘍(患者個人の家系内に多くみられる腫瘍)を除き、一般と変わりありません。
しかしWilms’腫瘍といって腎臓腫瘍のため側腹部より放射線治療を受けられた方では(特に25Gy以上の高線量)赤ちゃんの先天奇形の確率がやや増えるとする報告もあります。

分娩方法について

分娩方法に関する指定はありません。産科的適応がある場合に帝王切開分娩が考慮されます。

産後について

分娩方法に関する指定はありません。産科的適応がある場合に帝王切開分娩が考慮されます。


2011年4月11日現在
今回ご紹介した内容は2011/4/10現在の知見です。 今後医学の発展により新しい知見が加わる可能性があります。

真性多血症を合併されている方の妊娠について

これまでのところ報告はまだ少なく、海外での報告を中心に50妊娠程度と限られています。これはこのご病気自体が20-34歳の女性の発症率は0.04/100,000人、また35-39歳の女性では0.25/100,000人と少ないことも関係していると考えられます。

一番症例数が多いものは2005年の報告で、8人の方の計18妊娠、19胎児(双胎が一組含まれる)の妊娠予後について検討したものがあります。この結果では、治療を行わなかった7妊娠では生産は1人のみ(胎盤機能不全のため34週の早産)で、その他流産3人、死産3人、新生児死亡1人と予後は厳しいものでした。しかし、積極的に治療を行いながら妊娠された11妊娠においては10人の方が生産にいたりました(9人は満期産)。しかし積極的に治療を行ったにも関わらず、産後に肺塞栓が発症した方もいらっしゃいます。

これまでの報告をまとめると、生児獲得率は約60%、妊娠初期の流産率は約20%、母体合併症率は約45%となります。 妊娠、出産に関しては、予め医療機関と相談され、計画的にされる方がよいと考えられます。

妊娠、出産を考える前に

かかりつけの血液内科、産科を受診し、今後の妊娠、出産に関してご相談いただくようお願いいたします。妊娠に関して併行して行う治療方針について相談し、それが実施可能な施設かどうか検討する必要があります。

妊娠中の合併症について

妊娠中の問題点としていくつかあげられます。
妊娠初期;流産
妊娠中期以降;子宮内胎児発育遅延、子宮内胎児死亡、母体妊娠高血圧症候群
分娩時;産後出血
妊娠期間を通じて;母体血栓症などがあり、これらに特に注意して経過観察する必要があります。
なお赤ちゃんに関しては、出産された児に先天奇形が多い、などの報告は現在までのところありません。

分娩方法について

帝王切開術を行う必要がある、という報告はなく、普通に出産していただくことになります。しかし産科的適応で帝王切開分娩となることもあり、その場合は特に抗血栓治療が必要になります。

産後について

産後にも血栓症を起こすリスクは高く、抗血栓療法を行う必要があるようです。文献によっては産褥6週間まで抗血栓療法を勧めているものもあります。

妊娠中の治療について

このご病気は血球が増え、血液の粘度が高まることでさまざまな症状が現れます。また粘度が高まることで血栓ができやすいだけでなく、出血もおこしやすいという特徴があります。妊娠中は血液が通常より固まりやすい状態にありますので特に、血液を固まりにくくする抗血栓療法が必要となります。
また真性多血症と似た疾患として本態性血小板血症という疾患がありますが、こちらの疾患の方が妊娠と関連した報告例も多く、妊娠中に問題となる点も似通っているため、これに準じた治療を行います。

現在まで行われてきた治療としては
① アスピリン内服(抗血栓治療として行います)
② 瀉血(ヘマトクリットを一定に保つようにします)
③ 低分子ヘパリン(抗凝固療法)
④ インターフェロンα(細胞増殖抑制)
⑤ ハイドロキシウレアなどの代謝拮抗剤
⑥ 葉酸補充
などです

血栓症の既往がある方、骨髄増殖性疾患のための出血の既往がある方、妊娠合併症(3回以上の初期流産、妊娠中期以降の流死産など)の既往がある方、血小板が150万/μl以上の方などはハイリスク妊娠として、通常行われる①、②の治療に③、④、⑤などを追加で行う方がよいとする報告が多いようです。

ここで⑤のハイドロキシウレアについて説明します。
これは抗腫瘍薬の一つで、骨髄増殖性疾患に用いられてきたお薬です。抗腫瘍薬のため、赤ちゃんへの影響が心配され妊娠中には使用するべきではない、とされてきましたが、本態性血小板血症や真性多血症、また鎌状赤血球症などの血液疾患をお持ちの方がこのお薬を実際に使用中に妊娠が確認された症例が報告されつつあります。現在までの報告では50例程度で、このうち約8割は胎児の器官形成期を含む妊娠判明時や妊娠初期に使用されていましたが、胎児に大奇形を認めた、という報告はありません。症例数が限られているため慎重に判断する必要がありますが、治療法の選択肢の一つとして考えられるかもしれません。


2011/6/1現在
今回ご紹介した内容は2011/6/1現在の知見です。 今後医学の発展により新しい知見が加わる可能性があります。

弁置換(生体弁、器械弁)を受けられた方の妊娠について

人工弁は生体弁と器械弁の2種類に分類されます。

生体弁について

生体内に異物が挿入されることで生じる血栓のリスクが少ないメリットがあります。しかし、弁としての寿命が限られていること、また弁構造自体が破壊され再留置手術が必要になることがあります。女性の50%は初回手術から約10年で再留置手術が必要になるという報告や、若い女性ほどリスクは高く、10年たっても弁構造が正常である人は30歳以下の女性では30%程度、とする報告もあります。また妊娠はこの弁構造の破壊を促進させる、という報告もあります。

器械弁について

生体弁と異なり、弁自体がこわれてしまうリスクは非常に少ないとされています。しかし血栓症がおこりやすいため、大事な臓器を血栓でつまらせてしまうことで、場合によっては母児ともに致命的となることがあります。これまでには、血栓が血流にのって全身に流れてしまうことで脳卒中や心筋梗塞が、また弁そのものに血栓がつまってしまったとの報告があります。
妊娠すること自体が血液を凝固しやすい状態にすること、血栓症は致命的となることもあることから、特にこの血栓に関する問題が一番大きな問題といえそうです。その他にも感染性心内膜炎には注意が必要です。

妊娠中の治療について

血栓予防の治療には大きく分け以下の2種類があります。

  1. ワーファリンなどの経口抗血栓薬(クマリン系抗凝固薬)
    文献にもよりますが、妊娠中に使用した場合、血栓症の発生は4%程度とされています(一般の方の場合、抗凝固療法としてワーファリンを使用していると血栓発生のリスクは1%程度、抗凝固療法を行ってない場合4%程度、と報告されています)。胎児への影響として、器官形成期である妊娠6-9週頃に使用すると約4-10%の赤ちゃんに胎児ワルファリン症候群(軟骨発育不全による鼻骨低形成、点状骨端症、子宮内胎児発育遅延、精神発達遅滞など)と称される一連の異常が発生します。その他にも中枢神経系の異常や、非常にまれですが妊娠中期以降に使用することで赤ちゃんの脳内出血や死産の報告もあります。この児への影響については用量依存性で、一日の投与量が5mg以上の方に特に多いとする報告もあります。
    その他初期流産率は約25%、死産率が約7%と報告されています。
  2. ヘパリン(抗凝固薬)
    未分画ヘパリンと低分子ヘパリンがあります。どちらの薬剤も胎盤通過性がなく妊娠中でも安全に使用することが可能です。
    未分画ヘパリンのみで妊娠中管理した場合、胎児奇形の発生の報告はありませんでしたが、その血栓発生率は10-33%とされており、血栓予防に対する効果はワーファリンと比べ弱いと考えられています。低分子ヘパリンはヘパリンを使用することで起こるとされる副作用(血小板減少、骨粗鬆症、出血など)が少なく、また血液状態のモニターが必要ない、といった特徴より最近使用報告症例が増えつつあります。しかし今までの未分画ヘパリンと同様に、ワーファリンと比べると血栓予防に対する効果は弱く、厳重にモニターし、使用量を適宜増量することで、よい成績を収めたとする報告もあります。

補足)アスピリン(抗血小板薬)
よりハイリスク症例の方(心房細動がある、右房の拡大が見られる、などの方)には併用を勧めている文献もあります。

実際の抗血栓治療について

上記のような治療法の特徴から二つ、方法があります。

  1. アメリカを中心にヘパリンを中心に使用(妊娠13-36週ではワーファリン投与も考慮)
  2. ヨーロッパを中心に全妊娠期間中、ワーファリンを使用
    またその中間策として抗血栓効果の強いワーファリンを中心に、胎児の器官形成期に当たる時期はヘパリンを中心に変更する、という治療法も考えられています。具体的には妊娠6-12週までと、出血のリスクが高く、また児への影響も想定される分娩周辺期は(誘発分娩での出産とし、分娩日程を予め設定するなどして、その2-3週間前から薬を変更します)ヘパリンで治療を行い、その他の期間はワーファリンで加療する、という方法です。この方法では母体の血栓症発生率は9.5%、初期流産率約20%、死産率は9%と報告されています。

妊娠、出産を考える前に

かかりつけの循環器外科、産科を受診し、今後の妊娠出産に関してご相談いただくようお願いいたします。また出産はリスクを伴いますので、受け入れ可能な施設かどうか、検討する必要があります。

分娩方法について

帝王切開術を行う必要がある、という報告はなく、帝王切開術での分娩は産科的適応がある場合に考慮されます。ワーファリン使用中に分娩となった際には赤ちゃんの出血のリスクがあるため吸引分娩や鉗子分娩などは避けた方がよいとする文献もあります。

産後について

出産を終えられれば、出産方法にもよりますが、血栓予防の治療を速やかに再開することになります。産後出血(子宮出血、会陰縫合部の出血、帝王切開創部の出血など)のリスクがすくなければ4-12時間後にはヘパリンを再開、また速やかにワーファリン内服を再開することを勧める文献が多いようです。


2011/6/12現在
今回ご紹介した内容は2011/6/12現在の知見です。 今後医学の発展により新しい知見が加わる可能性があります。

ファロー四徴症に対する手術を受けられた方の妊娠について

ファロー四徴症とは、心室中隔欠損・右室流出路狭窄・右室肥大・大動脈騎乗の4つの心臓構造上の問題を合併しているご病気です。ただ、重症度はさまざまで最も重症の方は、肺動脈流出路が完全に閉鎖している肺動脈閉鎖例とされています。以前には心内修復手術は5歳以上で行われることが多かったようですが、最近は1歳前後で手術を行います。

ファロー四徴症はチアノーゼ性先天性心疾患のなかでは最も多く、先天性心疾患全体の5%程度とされています。心内修復手術は1950年代より行われており、手術成績も向上してきた現在、多くの方が出産適齢期に達しているといえます。

妊娠成績について

ファロー四徴症修復手術後の長期生存成績はよく、妊娠も注意して管理をうけていただければ特に問題ないとする報告がほとんどです。しかし、報告そのものがまだ少ないのも現状です。

最近の報告では妊娠率は一般の方と変わらないとされています。妊娠初期の流産は報告によって様々ですが、19-27%と一般の方とほぼ同じ、もしくは少し高い、と報告されていますがその理由ははっきりしていません。産科合併症である早産率は一般の方と変わらないとする報告が多いようです。しかし、妊娠中にお母さんに合併症が起こった方(肺動脈逆流や不整脈、心不全など)や、修復手術を受けられず妊娠された方の赤ちゃんは発育が小さくなりやすいとする報告もあります。またお子さんへのご病気(先天性心疾患)の再発率は2-6%と一般の方よりは高く、関連があるとする報告が多いようです。

これらの報告では最重症タイプである肺動脈閉鎖の方は除かれての検討が多く、重症タイプの方は当てはまらない場合もあります。

妊娠中に問題となること

妊娠すると、赤ちゃんを子宮内で育てるため循環血液量や1回の心拍出量、心拍数が増え、全身の血管抵抗は減少するなどの変化が起こります。そういった妊娠による変化も関連して母体に心血管系の合併症が起こると報告されています。報告によってさまざまですが、合併症が起こる方は1割くらいからもう少し高いとする報告が多いようです。合併症としては不整脈、肺動脈逆流による右心拡大、右心不全などが多いと報告されています。これらの合併症を認める場合には、抗不整脈薬や、利尿剤、強心剤などの投与を必要とする場合や、重症の場合には妊娠の中断を選択せざるを得ないこともあります。

NYHA分類Ⅰ度(心機能を自覚症状から分類したもので、Ⅰ度は日常生活には支障がないレベルを指します)の方や、妊娠前に薬物治療を必要としていない方、肺動脈逆流を認めていない方はこれらの合併症が起こる可能性は低いと考えられています。

妊娠、出産を考える前に

かかりつけの医師(小児循環器科、循環器内科、循環器外科、または産科)を受診し、今後の妊娠出産に関してご相談いただくようお願いいたします。また出産はリスクを伴いますので、受け入れ可能な施設かどうか、検討する必要があります。

分娩方法について

帝王切開術分娩を選択すべき、という報告はなく、帝王切開術での分娩は産科的適応がある場合に考慮されます。しかし帝王切開率は2-3割と、結果的に帝王切開術分娩となった方の割合は一般の方より高いようです。これは母体の心臓への影響を考慮して、帝王切開術が選択された場合が多いためではないかと考えられています。

産後について

出産を終えられれば、その後のトラブルは少ないようです。産後出血が多い、などの報告はありません。

関係してくださる医療関係者のみなさまへ

  • 肺動脈逆流が強い場合、妊娠前に肺動脈弁置換を行うことを考慮する、という報告もあるようです。
  • 帝王切開術や分娩第2期の努責を回避するための器械分娩(鉗子分娩、吸引分娩)は基本的には必要ないようです。
  • 出産時の予防的抗生剤投与に関して、通常以上に行うべきとするエビデンスはありません。ただ、肺動脈弁逆流・狭窄が存在する場合は、感染性心内膜炎のリスクを考慮して投与を行うのが一般的です。

2011/8/22現在
今回ご紹介した内容は2011/8/22現在の知見です。 今後医学の発展により新しい知見が加わる可能性があります。

胆道閉鎖症術後妊娠について

現在までのところ、報告例はまだ少ないのが現状です。まとまった報告としては2005年の当センター小児外科からの報告で、葛西手術後の自己肝で妊娠された5人の報告が、また2007年に東北大学から9人の妊娠、出産の報告がある程度です。1950年代に葛西手術が始まり、広く行われる様になって成績が向上し始めたのが1970年代から1980年代と言われています。そのため今、ようやく成人期を迎えられる方たちが増えてきていると考えられます。また手術を受けられた方たちが増えてこられ、手術後長期間経過したあとの問題点が明らかになってきています。本稿では、葛西手術後に自己肝で(肝移植を行わず)成人期を迎えられた方たちの妊娠、出産について説明させていただきます。

妊娠中に問題となること

妊娠中に問題になることとして多く報告されていることは以下の3つのようです。

① 肝不全
妊娠中から肝機能の上昇(悪化)を認める場合もありますが、産後に悪化し、肝移植が必要になった、という報告もあります。妊娠中から注意して経過観察することが大切です。

② 消化管出血
門脈圧亢進症のため妊娠後半(多くは妊娠20週すぎ)に食道や胃に静脈瘤ができる方がいらっしゃいます。これらの静脈瘤は悪化しますと大出血を起こします。そのため妊娠を中断せざるを得なかったという報告例もあります。門脈圧亢進については腹部超音波検査や、血液検査で、消化管の静脈瘤に関しては内視鏡検査などを行い、必要時には早めに治療を行う方がよいとされています。

③ 胆管炎
はっきりとした原因は分かっていませんが、妊娠中にも繰り返すことがあるようです。抗生剤による治療が必要となります。

これらの合併症は、妊娠までの経過が落ち着いていらっしゃっても、起こる場合も報告されています。また肝機能がよくないと低タンパク血症となりやすく、そのため妊娠高血圧症候群(昔の名前では妊娠中毒症といいます)を起こしやすくなる、という報告もあります。いずれにしても、注意深い経過観察が必要となります。
また出生されたお子さんに関しては、先天異常が多いとする報告はありませんが、少し発育が小さめのお子さんが多い、との報告もありますので、赤ちゃんのお腹の中での発育も注意してみてあげる必要があるでしょう。

妊娠、出産を考える前に

かかりつけの外科、産科を受診し、今後の妊娠出産に関してご相談いただくようお願いいたします。葛西手術後の方には月経に関するトラブルを認める場合もある、という報告もありますので、産婦人科で相談されるとよいかもしれません。また妊娠、出産はリスクを伴いますので、受け入れ可能な施設かどうか、検討する必要があります。

分娩方法について

帝王切開術を行う必要があると決まっているわけではありませんが、門脈圧亢進症を認める方や、肝機能が悪い場合には帝王切開分娩を選択した方がよい場合があります。

産後について

出産後に肝機能の悪化を認めた方の報告もありますので、注意深い経過観察が必要と考えられます。


2011/11/18現在
今回ご紹介した内容は2011/11/18現在の知見です。 今後医学の発展により新しい知見が加わる可能性があります。

特発性血小板減少性紫斑病を合併されている方の妊娠について

この病気は後天性の免疫疾患と考えられていて、血小板が10万/μl以下に減少する病気です。はっきりとした原因は分かっておらず、血小板が減少するその他の疾患を除外することも、この病気の診断には重要となります。30歳から60歳の年代においては女性に多い病気で、1,000妊娠に1から10,000妊娠に1の割合で妊娠に合併すると推定されており、妊娠によって一般的には増悪することが知られています。

日本では2011年に大阪大学からITP患者さま88人、127妊娠の報告がされています。この報告も他の今までの報告と同様で、一般的に妊娠、出産、赤ちゃんの予後はよいと報告しています。この報告によると母体の約4割の方がステロイド治療を受け、また約2割の方が分娩前に血小板数を増やす目的で血小板輸血を受けられました。しかし実際、出産時の出血のため輸血治療が行われた方は2名のみでした。これらの88人の方の分娩週数は平均39週、赤ちゃんの出生体重は平均2960g程度と報告されています。この病気の原因とされている抗血小板抗体はお母さんの胎盤を通過し、赤ちゃんの血小板数にも影響を及ぼすとされていますが、実際に出生時の赤ちゃんの血小板数が10万/μl以下であったのは約15%で、そのうち実際に赤ちゃんに治療を要した症例はその約半数と報告されています。頭蓋内出血が認められた赤ちゃんは一人であったと報告されています。

現在までのいずれの報告も、妊娠、出産に関して一般的に予後は良好であるとするものの、血小板数の確認や、必要な治療を行うことが大切であるとされています。また上のお子さんの血小板数が少なかった方は、次のお子さんも血小板数が少なくなる可能性が高いことが知られていますので、注意が必要です。

妊娠、出産に関しては、予め医療機関と相談され、計画的にされる方がよいと考えられます。

妊娠、出産を考える前に

かかりつけの血液内科、産科を受診し、今後の妊娠、出産に関してご相談いただくようお願いいたします。妊娠に関して併行して行う治療方針について相談し、それが実施可能な施設かどうか検討する必要があります。また出生後の赤ちゃんも、血小板数によっては治療が必要となる場合がありますので、赤ちゃんの管理も行える施設である必要があります。

妊娠中の管理について

血小板は血を止めることに作用しますので、特に出血が問題となります。母体は特に分娩時の血小板数が問題となります。

母体;
妊娠の初期、中期では出血の症状がなく、血小板数が2~3万/μl以下に減少することがなければ特に治療をすることはありません。しかし、出血を伴うような処置が必要であるときには、処置に応じて血小板数を維持する必要があります。妊娠後半になると今度は出産にむけて血小板数をコントロールする必要があります。一般的には分娩時の血小板は5万/μl以上が望ましいとされており、帝王切開手術の際にも血小板数5万/μl以上が望ましいと考えられています。また硬膜外麻酔や脊椎麻酔といった手術に対する麻酔が必要な場合は、脊髄神経の近くを穿刺する処置が必要となりますので、血腫などを形成しないためにも血小板数7.5万/μl以上が望ましいとする報告が多いようです。

赤ちゃん;
抗血小板抗体は胎盤を通過するといわれていますので、赤ちゃんの血小板数にも影響を及ぼすことが知られています。 生後に皮下出血や下血などの症状がないか確認を行います。また出血の症状として最も重症なものに頭蓋内出血があります。以前は出産方法を決めるために胎内の赤ちゃんの血小板数を調べようと、臍帯を穿刺して赤ちゃんの血液を採取し、血小板数を確認する方法がとられていたこともありましたが、赤ちゃんの頭蓋内出血のリスクは1%以下とされており、臍帯穿刺もリスクを伴いますので(検査による赤ちゃんの死亡率は1-2%とされています)、最近では行われていません。しかし、頭蓋内出血を認めた赤ちゃんの予後は不良とされており、子宮内胎児死亡の報告例もあります。

分娩方法について

基本的には経膣分娩を行っていただきます。産科的適応がある場合には帝王切開術分娩が考慮されます。ただ、出産にむけ母体の血小板数をコントロールしておく必要はあります。以前はお腹の中の赤ちゃんの血小板数を知ることが難しかったため、赤ちゃんの頭蓋内出血を心配して帝王切開分娩が選択されていましたが、最近の報告では、経膣分娩を行った場合の赤ちゃんの死亡率は0.6%程度とされていて、赤ちゃんの安全性確保のために帝王切開術を行うべき、という報告は最近ではほとんどありません。

産後について

血小板数のコントロールがついていれば、母体の産後出血が特別増加するという報告はありません。赤ちゃんの血小板数は生後数日して最も低い数値となることが多いため、生後数日は特に注意して経過観察が必要です。

妊娠中の治療について

① ステロイド
通常は10~20mg/日(プレドニゾロン)内服から開始し、血小板数を確認しながら量を調節していきます。

② 免疫グロブリン静脈内投与療法 (IVIg)
ステロイド治療に反応しない場合や、ステロイド治療の副作用が強い場合に考慮されます。 これらの治療が無効である場合には、大量ステロイド投与や免疫抑制剤の使用などが考慮されます。また血小板は脾臓で破壊されるので、脾臓摘出が考慮される場合もあります。もしも脾臓摘出が必要である場合は妊娠の中期で行うことが多いようです。


2012/1/4現在
今回ご紹介した内容は2012/1/4現在の知見です。 今後医学の発展により新しい知見が加わる可能性があります。