国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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新しい検査法を発見 食物アレルギーの診断、経口免疫療法の効果判定に有用 ~患者の身体への負担がなく、軽微なアレルギー症状を判別できる尿を用いた検査法に期待~

< お詫びと訂正について >

2021年9月8日に公開いたしましたプレスリリースの図に誤りがございました。関係者の方々にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げるとともに以下のように訂正いたします。

修正するグラフ【経口免疫療法中の尿中PGDM濃度の図】

  1. <誤>黒字「負荷試験陰性 脱感作獲得出来なかった児」⇒<正>黒字「負荷試験陰性 脱感作獲得できた児」
  2. <誤>赤字「負荷試験陰性 脱感作獲得を獲得できた児」⇒<正>赤字「負荷試験陰性 脱感作獲得できなかった児」
  3. <誤>負荷試験が陽性だった児では、陰性だった児に比較して免疫療法中の尿中PGDMが有意に低かった。⇒
    <正>負荷試験が陽性だった児では、陰性だった児に比較して免疫療法中の尿中PGDMが有意に高かった


国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)アレルギーセンターの大矢幸弘センター長と東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 村田幸久准教授らのグループは、食物アレルギーの検査や治療効果に有用な新しい侵襲(研究対象者の身体に負担が生じること)のない検査法(尿中のPGDM:プロスタグランジンD2の代謝物測定)の臨床研究を行いました。

この研究では、国立成育医療研究センターで卵、牛乳、小麦に対して二重盲検食物経口負荷試験(食物の性質を、医師からも患者からも不明にして行う方法)を行った子どもと、鶏卵の経口免疫療法を行っている子どもを対象に、尿中のPGDM(プロスタグランジンD2の代謝物)を東京大学大学院農学生命科学研究科で測定しました。その結果、負荷試験でアレルギー症状が誘発された際に尿中PGDMは上昇しました。さらに食物アレルギーの治療で少しずつアレルゲンを経口摂取する経口免疫療法において、尿中PGDM濃度が上昇しなかった患者は、脱感作(アレルゲンをごく少量摂取し、次第にその量を増して過敏性を減弱させる)状態を獲得して免疫療法の治療効果が得られやすいことが分かりました。

食物経口負荷試験において、患者の症状が軽微な場合や主観的な症状のみが出る場合は、判定が難しくなります。そのため、尿中PGDMのような軽微なアレルギー症状を判別できる侵襲のない検査法の普及が期待されます。また、尿中PGDM濃度を継続的にモニタリングすることによって、経口免疫療法の治療効果を評価できるようになると期待されます。

これらの成果論文は、Clinical & Experimental Allergy(二重盲検食物経口負荷試験)とThe Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice(経口免疫療法)にそれぞれ公表されました。

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プレスリリースのポイント

  • 尿中バイオマーカー(病状の変化や治療の効果の指標となるもの)であるプロスタグランジンD2代謝物(以下、尿中PGDM)は、軽微な症状の発症に至るアレルギー反応のみならず、症状の発現に至らないようなわずかな体の反応をも検出することができることが分かりました。
  • 自宅で経口免疫療法中の尿を測定することにより、食物アレルギーの治っていく過程で獲得する脱感作の起きていない人は、起きている人に比べて尿中のPGDMが上昇していることを見つけました。
  • 小さな子どもからでも採取しやすい尿を用いることで、より安全・安心、客観的に食物アレルギーを診断でき、治療をモニタリングできる技術であることが証明されました。

背景・目的

食物アレルギーは、全世界で社会問題となるほど、患者数が急増していますが、現状では診断法は食物経口負荷試験、治療法は、少量の食物そのものを食べ続ける経口免疫療法があります。

食物アレルギーの検査方法

食物経口負荷試験では、アナフィラキシーのリスクを伴う侵襲性のある検査です。心理的影響でアレルギーの症状が出ることもあり、軽微な症状の場合は判定が難しい場合があります。この研究では、尿中PGDMを測定することで、食物経口負荷試験中のアレルギー症状を正しく検出できないか検証しました。

食物アレルギーの治療効果方法

経口免疫療法がうまくいくと、脱感作を経て耐性を獲得し、食物アレルギーを克服した状態になります。治癒一歩手前とも言える、この脱感作の状態を獲得できたかどうかを判定するには、経口免疫療法として家で摂取している何十倍もの食物を食べられるかどうかを確認する「食物経口負荷試験」を行う必要があります。しかし、負荷試験時にアナフィラキシーを含むアレルギー症状が出現することが患者にとって大きな負担となっています。そこで、尿中PGDMを測定することによって、負荷試験を行わずに経口免疫療法中の患者さんの脱感作状態を予測できないか検証しました。


研究手法

食物アレルギーの検査方法

国立成育医療研究センターで2018年11月~2020年9月の間に卵、牛乳、小麦の二重盲検食物負荷試験を行った5~20歳の小児39人を対象に行いました。負荷試験前と、負荷試験開始4時間後の尿を採取し、尿中PGDMの比とアレルギー症状の関係を調べました。

食物アレルギーの治療効果方法

国立成育医療研究センターにおいて2016年6月~2018年7月の間に加熱卵白1gの経口免疫療法を行っている5~18歳の小児24人を対象に行いました。1年間の免疫療法後、摂取後の尿を採取した後、40gの卵白を摂取する経口負荷試験を行い、経口免疫療法中の尿中PGDMの値と脱感作状態の有無を確認しました。

どちらの研究も患者家族に研究参加の同意をいただいたうえで、尿を採取し、東京大学大学院農学生命科学研究科の村田准教授の研究室でLC-MS/MSを用いて解析を行いました。


今後の展望・発表者のコメント

  • 今回の研究成果のよって、尿中のPGDM(プロスタグランジンD2の代謝物)はアレルギー症状を正確に検出できることが明らかとなりました。
  • 食物経口負荷試験はアナフィラキシーのリスクを伴う検査であるため、尿中PGDMのような軽微なアレルギー症状を判別できる侵襲のない検査法の普及が期待されます。
  • 尿中PGDM濃度を継続的にモニタリングすることによって、非侵襲的に経口免疫療法の治療効果を評価できるようになると期待されます。
  • 患者に負担なくより安全に行うことができる食物経口負荷試験や経口免疫療法の確立に寄与できると考えています。

発表論文情報

著者:
犬塚 祐介(国立成育医療研究センター アレルギーセンター 医師)
山本 貴和子(国立成育医療研究センター アレルギーセンター 医長)
中村 達朗(東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 特任講師)
下澤 達雄(国際医療福祉大学 医学部 臨床検査医学 教授)
村田 幸久(東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 准教授)
大矢 幸弘(国立成育医療研究センター アレルギーセンター センター長)

掲載誌:Clinical & Experimental Allergy
題名:Detection of allergy reactions during oral food challenge using noninvasive urinary prostaglandin D2 metabolites
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/cea.14006
著者:
稲垣 真一郎(国立成育医療研究センター アレルギーセンター・日本医科大学 小児科 非常勤講師)
中村 達朗(東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 特任講師)
夏目 統(浜松医科大学医学部付属病院 小児科 助教)
山本 貴和子(国立成育医療研究センター アレルギーセンター 医長)
福家 辰樹(国立成育医療研究センター アレルギーセンター 医長)
成田 雅美(国立成育医療研究センター アレルギーセンター・杏林大学医学部小児科学教室教授・診療科長)
下澤 達雄(国際医療福祉大学 医学部 臨床検査医学 教授)
村田 幸久(東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 准教授)
大矢 幸弘(国立成育医療研究センター アレルギーセンター センター長)

掲載誌:The Journal of Allergy and Clinical Immunology In Practice. S2213-2198(21)00771-6/ in press
題名:Urinary prostaglandin D2 metabolite appears to be a useful biomarker for evaluating the status of egg oral immunotherapy in children
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2213219821007716

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

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koho@ncchd.go.jp

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