妊娠中のネオニコチノイド系殺虫剤ばく露と小児アレルギー 疾患の関連について:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)
国⽴成育医療研究センター エコチル調査メディカルサポートセンター チームリーダーの⼭本貴和⼦らの研究グループは、⼦どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査︓JECS)のデータを⽤いて、妊娠中のネオニコチノイド系殺⾍剤(※1)ばく露(※2)と、⼦どものアトピー性⽪膚炎およびぜん鳴の発症経過との関連を検討しました。その結果、現在の⽇本における⼀般的な環境ばく露レベルでは、妊娠中のネオニコチノイド系殺⾍剤ばく露と⼩児アレルギー疾患との間に強い関連を⽰す証拠は認められませんでした。⼀⽅で、本研究の限界として、尿中濃度を妊娠中2時点で測定したため妊娠期間全体の累積ばく露を⼗分反映していない可能性があること、⽐較的低ばく露の集団であったことから、⾼ばく露集団への⼀般化には注意を要することなどが挙げられます。
本研究成果は、環境保健分野の国際学術誌「Environmental International」に掲載されました。
※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。
※1 ネオニコチノイド系殺⾍剤︓昆⾍の神経系に作⽤する殺⾍剤の⼀群。世界各国で農薬として登録され、農業や家庭菜園で使⽤可能なほか、⼀部の成分では家庭や建物の害⾍駆除などに使⽤できる製品も販売されている。
※2 ばく露:食べたり、触れたり、吸い込むことで化学物質が体内に取り込まれること。

発表のポイント
- ⽇本全国約8,900組の⺟⼦を6歳まで追跡した⼤規模前向き出⽣コホート(※3)研究です。
- 妊娠初期および中期の⺟体尿中ネオニコチノイド系殺⾍剤濃度を測定し、⼦どものアトピー性⽪膚炎・ぜん鳴の発症経過を解析しました。
- 潜在クラス成⻑分析(LCGA)(※4)により、疾患経過を「早期発症型」「遅発型」「持続型」「⾮発症型」の4つの経過パターン(トラジェクトリー)に分類しました。
- ⼀部の殺⾍剤で⽰唆的な関連がみられたものの、⼀貫性や⽤量反応関係は認められず、調整後のデータではいずれも統計学的有意性はありませんでした。
- 現在の⽇本における⼀般的な環境ばく露レベルでは、ネオニコチノイド系殺⾍剤が⼩児アレルギー疾患の持続的発症の主要因である可能性は低いことを⽰唆しました。
- ネオニコチノイド系殺⾍剤の環境リスク評価に資する重要な疫学的エビデンスです。
※3 前向き出⽣コホート︓妊娠中や出⽣時の⺟親と⼦どもを対象にグループ(コホート)を作り、将来に向かって⻑期間追跡し、環境や⽣活習慣が⼦どもの健康に与える影響を調べる医学・疫学の研究⽅法。
※4 潜在クラス成⻑分析(LCGA)︓時間の経過に伴う変化のパターン(軌跡)が似ている個⼈を、統計的にいくつかのグループ(潜在クラス)に分類する縦断データの解析⼿法。
研究の背景
アトピー性⽪膚炎やぜん鳴は、⼩児期に多くみられる代表的なアレルギー疾患です。その有病率は世界的に増加しており、遺伝的な要因だけでは説明できないことから、妊娠期を含む早期ライフステージにおける環境要因の影響が注⽬されています。
ネオニコチノイド系殺⾍剤は、世界中で広く使⽤されている殺⾍剤です。近年、ヒトの尿や環境中からも検出されることが報告されており、健康への影響に関⼼が⾼まっています。
しかし、妊娠中のばく露が⼦どものアレルギー疾患の⻑期的な発症経過にどのような影響を及ぼすかについては、これまで⼗分な疫学的エビデンスがありませんでした。
研究内容と成果
本研究は、環境省が実施するエコチル調査(⼦どもの健康と環境に関する全国調査︓JECS)のデータを⽤いた全国規模の前向き出⽣コホート研究です。
対象︓約8,900組の⺟⼦。
ばく露評価︓妊娠初期および中期の⺟体尿中ネオニコチノイド系殺⾍剤濃度。
アウトカム︓1 歳から6 歳までのアトピー性⽪膚炎およびぜん鳴症状。
解析⼿法︓潜在クラス成⻑分析(LCGA)。
解析⽬的︓ネオニコチノイドばく露と⼩児アレルギー疾患の発症・経過パターンとの関連を評価し、環境リスク評価に資する科学的根拠を提供すること。
結果︓
アトピー性⽪膚炎、ぜん鳴ともに、⼦どもの成⻑に伴う4 つの異なるトラジェクトリー(早期発症型、遅発型、持続型、⾮発症型)が確認されました。
妊娠中のネオニコチノイド系殺⾍剤ばく露と疾患のトラジェクトリーとの関連について解析した結果、
- ⼀部の殺⾍剤と特定のトラジェクトリーとの間で⽰唆的な関連が観察されましたが、その関連はばく露時期や殺⾍剤の種類によって⼀貫していませんでした。
- ⽤量反応関係を⽀持する結果は認められませんでした。
- 多重検定補正後には統計学的に有意な関連は認められませんでした。
発表論文
題名(英語)︓Prenatal exposure to neonicotinoid insecticides and childhood allergic disease trajectories:A nationwide risk assessment from the JECS birth cohort著者名(英語)︓Yamamoto-Hanada K, Yang L, Harama D, et al.(JECS グループ)
掲載誌︓Environmental International
DOI: 10.1016/j.envint.2026.110509
- 本件に関する取材連絡先
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国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
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