世界初・不妊症に対する新たな治療方法を開発~免疫の関与する不妊症に対して「タクロリムス」は安全かつ有効~
本研究結果は、2026年5月にJournal of Reproductive Immunologyに掲載されました。
【表1:全解析対象集団に対する有効性の調査結果】
プレスリリースのポイント
- 原因不明の不妊症により長期間の治療の後に断念し、心身ともに苦しんでいるカップルも少なくありません。研究チームはその問題解決へ向けて2010年頃より研究を開始しました。
- 不妊症全体の10~15%に存在する原因不明の不妊症の原因を調査研究したところ、母体の免疫が関与していることを見出しました。
- 妊娠は母親と父親の両方の遺伝情報をもつ受精卵を認識した上で受け入れるメカニズムがありますが、細胞性免疫が強いことにより受け入れが成立しない状態を改善することが必要であると考え「タクロリムス」を用いた世界初の免疫抑制療法の研究開発を進めました。
- 良好胚の移植を3回(合計4個以上)しても0%の生化学的妊娠確率であり、さらに細胞性免疫の強い不妊症患者さんを対象として臨床試験を行った結果、1回の治療で約60%の方が妊娠に至りました。
研究概要
2022年8月~2025年9月までの間、体外受精において既存の治療方法で、良好胚移植3回(合計4個以上)行っても妊娠に至らず、さらに細胞性免疫の強かった18歳から40歳の重症不妊症を対象に、免疫抑制薬である「タクロリムス」の経口投与療法を行いました。
1日2mg(低用量)または4mg(高用量)投与群を、2:1の比率で無作為に振り分け、胚移植の2日前から16日間経口投与しました。主要な評価項目は、胚移植3週間後の臨床的妊娠(胎嚢確認)の有無としました。その結果、妊娠率は、低用量群で 66.7%(95% CI、38.4-88.2)、高用量群で 55.6%(95% CI、21.2-86.3)となり(表1)、「タクロリムス」による免疫抑制療法は、母体免疫が関与する重症不妊症に対して有効であることがわかりました。
発表論文情報
タイトル:Efficacy of tacrolimus treatment in two-dose single-group controlled trial for patients with refractory infertility
執筆者:Michi Hisano1, Koji Nakagawa2, Masanori Ono3, Osamu Yoshino4, Takakazu Saito1, Yasushi Hirota5, Eisuke Inoue6, Shoko Imai7, Kayoko Kikuchi8, Hidefumi Nakamura9, Koushi Yamaguchi1
所属:
1)国立成育医療研究センター 女性総合診療センター2)杉山産婦人科
3)東京医科大学
4)山梨大学
5)東京大学
6)昭和医科大学
7)国立成育医療研究センター 臨床研究センター
8)藤田医科大学
9)国立成育医療研究センター 研究開発監理部
掲載誌:Journal of Reproductive Immunology
DOI:10.1016/j.jri.2026.104904
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