小児アトピー性皮膚炎における角層構成成分の特徴を解析 皮膚バリア機能に関係する"天然保湿因子"と"カスパーゼ-14"の低下が明らかに
国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)皮膚科の吉田和恵、福田理紗と、マルホ株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:杉田淳)の研究グループは、アトピー性皮膚炎の小児と、そうでない小児(対照群)を比べ、「天然保湿因子(natural moisturizing factor: NMF)[1]」と「カスパーゼ-14(タンパク質分解酵素)」にどのような違いがあるのかを研究しました。
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下することで起こるのが特徴の病気で、天然保湿因子やカスパーゼ-14は、このバリア機能を正常に保つことに重要だと考えられています。
研究の結果、アトピー性皮膚炎の小児は対照群と比べて、天然保湿因子およびカスパーゼ-14が低下していることが分かりました(グラフ1)。さらに年齢別に見ると、カスパーゼ-14は、2~5歳の低下がより顕著でした。これらの結果により、カスパーゼ-14を含むフィラグリン分解経路[2]の変化が、幼児期における皮膚のバリア機能の低下に関係することが示されました。
これらの知見によって、アトピー性皮膚炎において、フィラグリン分解経路に着目した新しい治療戦略につながることが期待されます。
本研究成果は、欧州皮膚科・性病学会の公式学術誌「Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology」のオンライン版に公開されました。
[1] 天然保湿因子(NMF):皮膚の角層にある保湿成分の総称。水分を保持して、皮膚のバリア機能を保つために働く。
[2] フィラグリン分解経路:皮膚の角層を形成する際に重要な役割を果たすタンパク質であるフィラグリンが、タンパク質分解酵素であるカスパーゼ‐14によって分解され、天然保湿因子となる経路のこと。

【図1:角層中の天然保湿因子(NMF)とカスパーゼ14の年齢群別の変化】
プレスリリースのポイント
- アトピー性皮膚炎の小児は、天然保湿因子とカスパーゼ-14が低下しており、これらが皮膚のバリア機能の低下と関係していることが分かりました。この関係が小児において明らかになったのは、世界で初めてとなります。
- 特に、2~5歳の幼児期では天然保湿因子およびカスパーゼ-14の低下がより顕著でした。
- アトピー性皮膚炎の小児において、天然保湿因子とカスパーゼ-14の低下は、皮疹(赤み、湿疹などの皮膚の炎症)がある部位だけでなく、皮疹がない部位にも見られ、臨床的には正常に見える「皮疹のない部位」にも皮膚のバリア異常が及んでいる可能性が示唆されました。
- 天然保湿因子の解析では、アトピー性皮膚炎の小児の「皮疹がある部位」では、2~5歳、6~10歳と年齢に関わらず低い値でした。本来、皮膚のバリア機能は発達によって6歳前後で成人と近い状態になります。それが低い値が継続しているということは、より早い段階から皮膚のバリア機能を正常に保つ必要性があることが示唆されます。
- 本研究結果は、カスパーゼ-14を含むフィラグリン分解経路が、2~5歳の幼児期における皮膚のバリア機能の低下に関係することを示しました。これらの知見によって、小児アトピー性皮膚炎における幼児期からのフィラグリン分解経路を標的とした新たな治療戦略につながることが期待されます。
研究概要
研究期間(対象者登録および測定期間):2020年9月~2023年4月
研究対象:アトピー性皮膚炎の小児26人(2~5歳:13人、6~10歳:13人)
アトピー性皮膚炎でない小児(対照群)11人(2~5歳:6人、6~10歳:5人)
評価項目:天然保湿因子→共焦点ラマン分光法[3]で角層の構成成分を解析
カスパーゼ-14→テープストリッピング法[4]で解析
研究方法:それぞれの評価項目について、アトピー性皮膚炎の小児、対照群の小児で調査。アトピー性皮膚炎の小児では、皮疹のある部位と、皮疹のない部位の2カ所を調査。
[3] 共焦点ラマン分光法:レーザー光を当てて、その跳ね返りから分子構成を分析する方法。皮膚の水分量や天然保湿因子を測定できる。共焦点は、皮膚の深さごとにその数値を調べられる。
[4] テープストリッピング法:粘着テープを皮膚表面に貼り、はがすことで、皮膚の成分を解析する方法。
発表論文情報
題名:Age-Dependent Reductions in Natural Moisturizing Factor and Caspase-14 in Pediatric Atopic Dermatitis
著者:福田理紗1)、朴慶純2)、安田葉月1)、河合智子3)、秦健一郎3,4)、持丸奈央子1)、竹之内茉里絵1)、田中諒1)、
橋本玲奈1)、上田勇輝5)、橋本晋5)、島崎啓輔5)、吉田和恵1,6)
所属:
1)国立成育医療研究センター 皮膚科
2)国立成育医療研究センター 臨床研究センター生物統計ユニット
3)国立成育医療研究センター 周産期病態研究部 胎児発育研究室
4)群馬大学大学院医学系研究科 遺伝医科学
5)マルホ株式会社 京都R&Dセンター
6)国立成育医療研究センター アレルギーセンター
掲載誌:Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology
掲載日:2026年3月19日
DOI:10.1111/jdv.70417
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