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洗濯用洗剤の吸入が抗原に対するアレルギー反応を促進させる 喘息の気道炎症を悪化させることを発見

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)免疫アレルギー・感染研究部の長野直子、松本健治、森田英明らの研究グループは、マウスに洗濯用洗剤と抗原を同時に吸入させる実験を行い、「特定の抗原(ダニなど)によって引き起こされる気管支喘息」に洗濯用洗剤やその主成分である界面活性剤がどのように関係しているのかを調べる研究を行いました。
その結果、洗濯用洗剤と抗原が気道を通して体内に取り込まれると、抗原に対する感作[1](抗原特異的IgE抗体[2]の産生および、抗原特異的Th2細胞[3]の誘導)が促進されることを明らかにしました。さらに、一旦抗原に対する感作が成立すると、その後抗原だけにさらされた場合でも喘息のような気道炎症が悪化することを確認しました。
これらの成果は、アレルギー疾患の発症メカニズムの理解を深め、将来的な予防・治療戦略の基盤となることが期待されます。
本研究成果は、欧州アレルギー・臨床免疫学会の学術誌「Allergy」に2026年2月5日付で掲載されました。

[1] 感作:体内に入ってきた異物(抗原)に対して、免疫応答(体の防御反応)の結果、抗原に対するIgE抗体が作られること。
[2] IgE:体内に入ってきた異物を見つけて免疫反応を引き起こす「免疫グロブリン」の一種で、免疫細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどアレルギー症状を引き起こす化学物質を放出させる。
[3] Th2細胞:体内の免疫応答を担当するヘルパーT細胞の一種で、主にアレルギー反応や寄生虫感染に対して働く。

注意:本研究は、洗濯用洗剤・界面活性剤に気道を通してさらされた場合、アレルギーを引き起こす可能性があることを動物モデルで示したもので、日常生活において洗濯用洗剤の使用がただちにヒトの喘息発症や悪化につながることを示すものではありません。

研究の概念図

プレスリリースのポイント

  • マウスを用いた実験により、洗濯用洗剤と抗原が気道を通して同時に吸入されると、抗原に対するIgE抗体が生み出され、抗原特異的Th2細胞の誘導が活発になり、抗原に対するアレルギー反応を起こす準備状態が作られることが分かりました(感作の成立)。
  • 洗濯用洗剤と抗原の吸入によって感作が成立したマウスに、その後抗原のみを吸入させると、喘息のような気道炎症が起きることが確認されました。
  • こういった感作や、喘息のような気道炎症には、洗濯用洗剤の吸入によって上皮細胞から放出される炎症物質「IL-33」と「IL-13」が関与していることを明らかにしました。
  • 本研究グループはこれまでに、洗濯用洗剤に含まれる界面活性剤が生活環境中の埃にも一定量存在していることや、洗濯用洗剤や界面活性剤が気道上皮細胞から炎症物質(IL-33)を誘導することにより、抗原とは関係なく直接、喘息のような気道炎症を引き起こすことを報告しています[4]

    [4] プレスリリース:https://www.ncchd.go.jp/press/2023/0516.html

研究の背景

アレルギー疾患が世界的に増加した原因の一つに、生活の近代化に伴ってさらされる機会が多くなった環境物質が関与している可能性があると考えられています。中でも、人間の体が外界と接する部分に存在する細胞(上皮細胞)のバリア機能を傷つける物質にさらされることがアレルギー疾患の発症につながるという「上皮バリア仮説」は近年注目されています。
研究グループは、上皮細胞を傷つける物質として洗濯用洗剤とその主成分である界面活性剤に注目し、研究を行ってきました。先行研究では、マウスを用いた実験により、洗濯用洗剤が気道に吸入されると、気道上皮細胞からIL-33という炎症誘導物質が放出され、活性化した2型自然リンパ球から産生されるIL-5やIL-13を介して喘息のような気道炎症を引き起こすことを見出しました。これにより、洗濯用洗剤の作用により、ダニなどの抗原と無関係に喘息の症状が生じるメカニズムが明らかとなりました。しかし、古くから気管支喘息は特定の抗原(ダニなど)に繰り返しさらされることで引き起こされることも知られていますが、先行研究では喘息症状と洗濯用洗剤の関連は明らかではありませんでした。

研究の成果

本研究では、マウスに抗原と一緒に洗濯用洗剤を吸入させ(感作相)、のちに同じ抗原を吸入させる(チャレンジ相)ことによって、抗原の感作や、抗原に関連した気道炎症に及ぼす影響を検討しました。その結果、感作相で抗原とともに洗濯用洗剤を吸入させると、抗原単独を吸入させたマウスに比べ、抗原に対するIgE抗体の産生やTh2細胞の誘導が促進され、感作が成立しやすくなることがわかりました。さらに、洗濯用洗剤の吸入によってIgE抗体やTh2細胞が作られるようになったマウスにチャレンジ相で同じ抗原を吸入させると、好酸球性気道炎症が誘導されることが明らかになりました。好酸球性気道炎症がみられるマウスでは、気道過敏性が強くなり、気道周囲の炎症細胞浸潤[5]・粘液の産生が活発になるなど、喘息の病態に合致した所見を示すことが分かりました。この結果から、洗濯用洗剤が経気道感作を促進するアジュバント[6]として作用すると考えられました。
また、IL-33とIL-13について、特定の遺伝子を持たないノックアウトマウスと阻害抗体を用いた実験を行い、IL-33は感作相において抗原感作と気道炎症を引き起こすことに関与する一方で、チャレンジ相での関与が乏しく、IL-13は感作相・チャレンジ相の両方においてIgE抗体産生や気道炎症を悪化させることに寄与することを明らかにしました。

[5] 炎症細胞浸潤:体の防御反応として、炎症を起こしている部分に白血球などの炎症性細胞が集まること。
[6] アジュバント:体内の免疫応答を強化・持続させる物質

研究者のコメント

本研究により、洗濯用洗剤がアレルギー疾患の発症や喘息の増悪に関与している可能性が示されました。これまでにも日常生活で使用・曝露する製品とアレルギー疾患発症・増悪との関連を報告した研究はありますが、いたずらにこれらの製品の使用を控えることを推奨するわけではありません。こうした研究をさらに発展させることで、将来的なアレルギー疾患発症予防法の開発や治療基盤の確立へと繋げていくことが期待されます。

発表論文情報

英題:Laundry detergents enhance sensitization to co-inhaled allergens and exacerbate airway inflammation in mice
邦題:洗濯用洗剤は同時に吸入した抗原の感作を促進し、気道炎症を増悪させる

執筆者:長野直子1,2、溜雅人1、山本夏倫1,3、中﨑寿隆1,4、藤多慧1,5、林優佳1,6、本村健一郎1,7
Sanne Johanna Maria de Bruijn1,8、新江賢1,9、久保輝文10、生谷尚士11、須藤カツ子12、鹿毛秀宣2、斎藤博久1、中江進11、松本健治1、Cezmi A. Akdis13、森田英明1,14

所属:

  1. 国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部
  2. 東京大学医学部附属病院 呼吸器内科
  3. 自治医科大学 産科婦人科学講座
  4. 慶應義塾大学医学部 小児科学教室
  5. 東京慈恵会医科大学 小児科学講座
  6. 東京大学医学部附属病院 小児科
  7. 国立成育医療研究センター 女性の健康総合センター 女性免疫バイオメディカル研究室
  8. Department of Computer Science, Vrije Universiteit Amsterdam
  9. 杏林大学 保健学部
  10. 札幌医科大学医学部 病理学第一講座
  11. 広島大学大学院 統合生命科学研究科
  12. 東京医科大学医学総合研究所 疾患モデル研究センター
  13. Swiss Institute of Allergy and Asthma Research (SIAF), University of Zurich
  14. 国立成育医療研究センター アレルギーセンター

掲載誌:Allergy


掲載日:2026年2月5日


DOI:10.1111/all.70245

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

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