妊娠前の女性の「やせ」が出産時の母子の健康に影響 ~低出生体重児や早産の可能性が高まることが明らかに~
国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)の社会医学研究部の小林しのぶ研究員、糸井しおり研究員、森崎菜穂部長らの研究グループは、日本人女性における妊娠前低体重(BMI<18.5 kg/m²)が周産期の健康状態に与える影響について、過去に発表された5,000件を超える研究論文をスクリーニングし、最終的に34研究(約76万人分)のデータを用いた初めての包括的メタ解析1を行いました。
その結果、妊娠前に低体重だった母親から生まれた子どもは、低出生体重児が発生する可能性の比が約1.6倍、早産が約1.2倍、在胎不当過小児(以下、SGA)2が約1.6倍に増加することが明らかになりました。また、出生体重は平均で約115グラム低下していました。日本では妊娠可能年齢の女性の約20%が低体重といわれ、諸外国に比べ著しく高い割合となっています。その影響は肥満が問題となっている欧米諸国と同様にあり、低体重が多い集団であっても、周産期における母子の健康への影響は減少しないことを示しています。
本研究成果は、疫学分野の学術誌 Journal of Epidemiology に論文として掲載されました。
[1]メタ解析とは、複数の独立した研究結果を統計的に統合・分析し、より客観的で信頼性の高い結論を導き出す手法のこと。
[2]在胎不当過小児(SGA; Small for Gestational Age)とは、妊娠週数に対して出生体重が平均より小さい赤ちゃんのこと。
プレスリリースのポイント
- 本研究は、日本人女性に特化した初めての包括的なメタ解析です。
- 2000年1月から2024年2月までの日本人女性を対象とした34研究、総計約76万人分の妊娠データを分析しました。
- 妊娠前低体重(BMI 18.5未満)の母親から生まれた子どもは、低出生体重児が発生する可能性の比が1.61倍(95%CI:1.38-1.86)、早産が1.23倍(95%CI:1.19-1.26)、SGA児が1.59倍(95%CI:1.55-1.63)に増加しました(表)。
- 出生体重は標準体重(BMI 18.5以上25.0未満)の母親と比較して平均115.02グラム低下(95%CI:-128.05~-101.99)していました。
- 日本における妊娠可能年齢の女性の約20%が低体重であるという高い割合にもかかわらず、その影響は肥満が問題となっている諸外国の国際的な報告と同様であり、集団内で低体重が一般的であっても母子の健康に関わるリスクは減少しないことが明らかになりました。
背景・目的
妊娠前の体格は母子の健康に重要な影響を与えることが知られています。欧米では肥満への関心が高い一方、日本では若い女性の「やせ」が深刻な公衆衛生上の問題となっています。 国民健康・栄養調査によると、日本の20~30代女性の約20%がBMI18.5未満の低体重です。これは欧米諸国と比べ突出して高い割合です。この特異な状況が周産期の健康状態にどのような影響を与えるかは、これまで系統的に評価されていませんでした。
本研究は、日本人女性に特化した初めての包括的なメタ解析であり、妊娠前の女性の低体重が母子の健康に与える影響を定量的に評価しました。
研究概要
対象データの選別方法:6つの論文データベース(MEDLINE, EMBASE, CINAHL, PsycINFO, Cochrane Library, 医学中央雑誌)から、2000年1月から2024年2月までの間に公開された、日本人女性の単胎妊娠を対象としている研究論文を検索しました。5,003件の論文から、本研究で設定した評価項目が報告されている研究論文を選別し、最終的に34件(総計761,511妊娠)の論文データを対象データとして扱いました。
評価項目:低出生体重児(2,500g未満)、SGA児、早産(37週未満)、出生体重、妊娠期間、母体合併症など
分析方法:対象となった論文から、評価項目に関するデータを抽出し統合して分析する方法、系統的レビューとメタ解析を行いました。今回用いた対象データは、年齢など他の考えられる影響を調整(交絡因子の調整)することはできなかったため、特に母体の合併症(妊娠高血圧症候群、帝王切開、等)の結果は、慎重な解釈が必要となります。
発表論文情報
題名:Impact of Maternal Underweight on Infant and Maternal Outcomes in Japanese Women: A Systematic Review and Meta-analysis
著者:小林しのぶ1)、糸井しおり1)2)3)、Drishti Shrestha4)、森崎菜穂1)
所属:
1) 国立成育医療研究センター 社会医学研究部
2) 国立成育医療研究センター 女性総合診療センター 不妊診療科
3) 東京大学大学院医学系研究科 産婦人科学
4) 聖路加国際大学大学院 公衆衛生学研究科
掲載誌:Journal of Epidemiology
DOI:https://doi.org/10.2188/jea.JE20250483
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国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
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