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更年期症状のある母親の家庭では子どものメンタルヘルスが悪化 ~中等度以上の更年期症状があっても医療機関の受診率は10%未満~

国立成育医療研究センター(東京都世田谷区、理事長:五十嵐隆)女性の健康総合センターの森崎菜穂、小宮ひろみらの研究グループは、全国の10~16歳の子どもとその保護者を対象とした大規模調査の結果を用いて、子育て中の母親の更年期症状と、思春期の子どものメンタルヘルスやリスク行動の関連を調べる研究を行いました。
1,541組の母子ペアを分析した結果、母親の約2人に1人(650人:42.2%)が更年期症状を自覚していました。また、約4人に1人(408人:26.5%)は医師の診察が望ましい、中等度以上の更年期症状を抱えていました。しかし、実際に医療機関を受診し治療を受けていた母親は全体のわずか4.6%(71人)にとどまり、中等度〜重度の症状がある母親でも受診していたのは9.1%(37人)に過ぎませんでした。
さらに、更年期症状の治療を受けていない母親では、その症状が強いほど、思春期の子どもへの関わりに難しさを感じやすく、子ども自身も孤独感・不安・抑うつが高く、インターネット依存の傾向がより強く示されました。
また、更年期症状の3つの領域(血管運動症状・心理症状・身体症状)のうち、心理的な更年期症状が、子どもの健康の悪化と最も強く関連していることも明らかになりました。
本研究では、日本の思春期の子どもと保護者の全国データを用いて、母親の更年期症状と子どものメンタルヘルスとの関連を初めて包括的に明らかにしました。日本では、更年期症状を自覚していても医療機関を受診していない母親が多数を占めています。今後、更年期に関する正しい知識の普及と、適切な支援につながる環境整備が進むことで、母親自身の健康だけでなく、思春期の子どもの健やかな発達にも寄与することが期待されます。
なお、本研究は横断的なデザインであるため因果関係を直接示すものではありませんが、本研究の知見が周知されることで、家族支援・思春期支援・女性の健康施策を連携した予防的アプローチとして進める一助となることも期待されます。

本研究成果は、更年期医療と女性の健康を専門とするアメリカの学会 The Menopause Society の公式学術誌『Menopause』に掲載されました(2026年1月20日Web先行公開)。

母親の更年期症状の重さと子どものメンタルヘルスの関連のグラフ



母親の更年期症状の重症度と受診率の割合のグラフ

プレスリリースのポイント

  • 母親の約4人に1人(26.5%)が中等度〜重度の更年期症状を抱えていましたが、実際に医療機関を受診していたのは中等度〜重度の方でも9.1%にとどまりました。
  • 更年期症状が重い母親ほど、思春期の子どもとの関わりに難しさを感じやすいことが明らかになりました。
  • 母親の更年期症状が強い場合、思春期の子ども自身は孤独感・不安・抑うつが高く、インターネット依存の傾向がより強く示されました。
  • 母親の更年期症状の中でも「心理症状」が、子どものメンタルヘルスの悪化と最も強く関連していました。

    母親の更年期症状の重さと子どものメンタルヘルスの関連のグラフ2

研究概要

研究対象

日本全国の自治体から住民基本台帳に基づき無作為に抽出された思春期の子どもとその保護者を対象とした 2023年の全国調査のデータ[1]を使用しました。調査対象3,367世帯のうち1,805世帯が回答し、そのうち回答した保護者が女性であった1,541世帯が対象となりました。

[1] 2023年の全国調査:国立成育医療研究センターのコロナ×こども本部が行った「新型コロナウイルス感染症流行による親子の生活と健康への影響に関する実態調査」

研究方法

調査内容
母親:年齢、家族構成、更年期症状、子どもの行動・情緒の評価
子ども:孤独感、不安、抑うつ、インターネット依存傾向、生活習慣、健康状態など

A) 更年期症状の評価:母親の更年期症状は、日本の臨床現場で使用されている「Simplified Menopausal Index(SMI)」を用いて評価し、ほてりや発汗などの血管運動症状、寝つきなどの心理症状、めまいなどの身体症状の 3 領域について 0~100 点で算出しました。スコアに基づき、症状の重さを ➀症状なし/軽症、➁軽症~中等度、➂中等度、➃中等度~重度、⑤重度の5 段階に分類しました。

B) 子どものメンタルヘルスの評価:子どもの心理状態は、国際的に広く使われている尺度(SDQ、UCLA 孤独感尺度、Short-CAS、PHQ-A、YDQ)を用い、国際基準に従って得点化しました。

統計解析

母親の更年期症状(SMI)と、子どものメンタルヘルス指標との関連を多変量モデルで解析。母親の年齢、世帯収入、子どもの性別・年齢などを統計学的に調整した上で関連を検討。SMI をカテゴリと連続値でそれぞれモデル化。さらに「血管運動症状」「心理症状」「身体症状」ごとの影響も分析。家族構成(両親同居の家庭のみ)や症状の自覚の有無で層別した追加分析、治療中の母親のみの分析も実施。

発表者からのコメント

本研究結果は、母親の更年期症状が本人の健康だけでなく、思春期の子どものメンタルヘルスにも関連する可能性を示しています。更年期症状は多くの女性が経験する身近な健康課題であるにもかかわらず、受診率は10%未満ときわめて低く、適切な支援につながっていない現状が明らかになりました。思春期は心の発達にとって重要な時期であり、保護者の健康状態に対する理解や支援が、家庭全体のウェルビーイングを支える上で重要です。今後は、更年期症状への早期対応や相談支援体制の整備、女性の健康への意識向上を図ることが、間接的に子どものメンタルヘルス支援にもつながる可能性があると考えられます。本研究では、全国代表サンプルの思春期の子どもと母親を対象として解析を行い、家庭単位での健康状態を包括的に評価できたことが強みです。
一方で、本研究は横断的なデザインであり、時間的因果関係までは明らかにできないこと、また更年期症状は自己申告に基づいている点が限界として挙げられます。さらに、治療中の母親がごく少数であったため、治療効果や症状緩和が子どもにどのような影響を与えるのかについては今後の研究が必要です。今後は、縦断研究を通じて、母親の更年期症状の変化が子どもの心理状態にどのように影響するかを検証し、家庭支援・女性の健康政策に資する実証データの蓄積が期待されます。

発表論文情報

タイトル:Associations Between Female Caregivers' Climacteric Symptoms and Adolescent Mental Health: Findings from a National Japanese Cohort

執筆者:森崎菜穂1,2、糸井しおり2,3,4、Aurélie Piedvache2、石塚一枝5、下田茉莉子2、小宮ひろみ6

所属:
1) 国立成育医療研究センター 女性の健康総合センター 女性の健康推進研究室
2) 国立成育医療研究センター 社会医学研究部
3) 東京大学医学部附属病院 産婦人科学教室
4) 国立成育医療研究センター 不妊診療科
5) 国立成育医療研究センター 女性の健康総合センター 女性のライフコース疫学研究部
6) 国立成育医療研究センター 女性の健康総合センター

掲載誌:Menopause
DOI:10.1097/GME.0000000000002722

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

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