"アレルギーマーチ"に沿ったアレルギー性鼻炎は、遺伝的要因が関係 ~エコチル調査を使った全国大規模調査による報告~
国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区 理事長:五十嵐隆)エコチル調査研究部の原間大輔、齋藤麻耶子、山本貴和子、深見真紀らの研究グループは、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の4歳までのデータを用いて、先行するアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎や食物アレルギー)の有無によって、アレルギー性鼻炎の発症に関わる要因に違いがあるかどうかを調査しました。
その結果、アレルギー性鼻炎よりも先に、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症していた(アレルギーマーチ)場合、性別(男性)や親のアレルギー歴といった遺伝的な要因がより強く関係していました。その一方で、先にアレルギー疾患を発症しておらず(アレルギーマーチを介さない)アレルギー性鼻炎のみを単独で発症している場合は、環境要因がより強く関係していることが分かりました。
これまでアレルギーには、遺伝的要因と環境要因が関係していると言われていましたが、アレルギーマーチという視点を通すことで、アレルギーマーチの有無によってアレルギー性鼻炎の発症要因に違いがあることが分かりました。
本研究成果は、科学雑誌『Allergy』に2025年10月21日付けで掲載されました。
※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省および国立環境研究所の見解ではありません。

【図1:多変量解析による、主な要因の調整オッズ比】

【表2:1歳までの発熱回数とアレルギー性鼻炎との関連(単変量解析)】
プレスリリースのポイント
- "アレルギーマーチ"の視点から、アレルギー性鼻炎の発症に関わる要因を解析したのは世界で初めてです。
- アレルギーマーチに沿って鼻炎を発症する(アレルギー性鼻炎よりも先に、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症している)グループでは、性別(男性)や親のアレルギー歴などが、強く関与していました。
- アレルギーマーチに沿っている(先行してアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症していた)グループでは、1歳までの発熱回数が多い子どもほど、アレルギー性鼻炎になりやすい傾向が見られました。一方で、アレルギーマーチに沿っていないグループでは、発熱回数が多いほどアレルギー性鼻炎になりにくい、逆の関係性が見られました。
- さらに、アレルギーマーチに沿っている(先行してアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症していた)グループでは、スギ、ダニ、イヌ、ネコへのアレルギー反応(特異的IgE抗体への感作)があると、アレルギー性鼻炎になりやすい傾向も見られました。
研究概要
使用データ:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の4歳までの88,307人分のデータ。
調査対象*:4歳までにアレルギー性鼻炎があった613人
調査グループ分け:
➀アトピー性皮膚炎を発症後に、アレルギー性鼻炎を発症(301人)
➁食物アレルギーまたは気管支喘息を発症後に、アレルギー性鼻炎を発症(119人)
➂アレルギー性鼻炎を単独で発症(193人)
*アレルギー性鼻炎とは、鼻炎症状があり、かつ血液検査で特異的IgEへの感作が認められた方です。
*グループ分けに相当する、それぞれのアレルギー疾患の発症時期が判明している方のみを対象としました。
調査方法:出生から4歳まで、質問票による継続した調査や、採血・診察などを組み合わせて診断。そのデータを基に、アレルギー性鼻炎とその要因との関連について単変量および多変量解析を行いました。
発表論文情報
論文タイトル:Not All Rhinitis Follows the Atopic March: Early-Life Risk Factors and Implication of Infectious Disease Across Three Phenotypes in JECS Cohort
雑誌名:Allergy
DOI:10.1111/all.70103
著者:原間大輔、齋藤麻耶子,朴慶純、岩元晋太郎、佐藤未織、宮地裕美子、坂本慧、目澤秀俊、西里美菜保、羊利敏、熊坂夏彦、大矢幸弘、深見真紀、山本貴和子.
所属:国立成育医療研究センター
- 本件に関する取材連絡先
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国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
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