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ロングリードシーケンシングを用いた インプリンティング疾患の新たな診断法を開発 原因不明の疾患の早期診断と発症メカニズム解明に貢献

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)の分子内分泌研究部・浦川立貴研究員・鏡雅代室長らのグループは、ロングリードシーケンシング(LRS)[1]という新技術を用いたインプリンティング疾患に対する診断法を開発し、その有用性を明らかにしました。 
インプリンティング遺伝子とは、どちらの親から受け継いだかによって働きが異なる遺伝子です。インプリンティング遺伝子の発現は、親由来依存性にDNAメチル化[2]状態の異なるメチル化可変領域 (DMR) [3]によって制御されています。インプリンティング疾患は、インプリンティング遺伝子の異常によって引き起こされる希少疾患で、多くの場合でDMRのメチル化状態の異常を伴います。これまでインプリンティング疾患の診断はDMRのメチル化状態を調べるメチル化解析に加えて、複数の解析方法を組み合わせて行われてきました。近年開発されたLRSは、さまざまな異常を同時にかつ詳細に評価することのできる技術ですが、インプリンティング疾患に対する実験・解析の体系的なシステムはこれまで存在しませんでした。
本研究では、インプリンティング疾患に関連するDMRも含むすべてのDMR (78 DMR) とインプリンティング疾患と関連する22遺伝子の異常を正確に捉え、診断や研究につながる新たなLRS実験・解析システムを開発し、その有用性を実証しました。さらに、親由来毎の詳細なDMRメチル化状態の評価が可能となり、LRSがインプリンティング疾患の発症メカニズムの解明に大きく寄与することを示しました。
本研究成果は、国際的な学術誌「Genome Medicine」に掲載されました。

[1] ロングリードシーケンシング(LRS)とは、DNAの塩基配列を読む際に、従来の短い断片を読む手法に比べ、より長いDNA配列を連続的に読み取ることができる次世代解析技術で、遺伝子の構造異常や複雑な領域の解析に有用です。
[2] DNAメチル化とは、遺伝子の発現を抑制するために、DNAの特定の塩基(シトシン)にメチル基が付加されます。このメチル化パターンによって、片方の親の遺伝子だけが発現し、もう片方は抑制される仕組みのこと。
[3] メチル化可変領域 (DMR)とは、個体間でDNAメチル化のレベルが異なる領域のことで、遺伝子の発現を制御する役割を持つと考えられています。



LRSによるDMRのメチル化解析結果

【図1.LRSによるDMRのメチル化解析結果】

プレスリリースのポイント

  • ロングリードシーケンシングを用いたインプリンティング疾患の体系的な診断法を開発しました。
  • DNAメチル化状態の詳細な評価が可能となり、これまで原因不明であった疾患の診断や発症メカニズムの解明、根治的治療の開発につながります。

研究概要

まず、インプリンティング疾患に関する78のDMRと22の遺伝子を含む領域を設計し、6人の対象者に対してONT社のLRSを行いました。そのデータをもとに、親由来ごとのDMRの連続したメチル化状態の基準値を算出し、LRS実験・解析システムを構築しました。その後、2名の既診断のインプリンティング疾患症例および9名の未診断のインプリンティング疾患疑い症例に対してLRSシステムを適用し、既存の検査法と同様に正確に遺伝子診断できることを実証しました。

今後の展望・発表者のコメント

  • 原因不明のインプリンティング疾患疑いの症例を早く効率的に診断することができるようになります。
  • 詳細なDMRメチル化状態の評価ができるようになり、疾患発症の鍵となる領域が正確にわかるようになり、発症メカニズムの解明につながることが予想されます。
  • 発症メカニズムの解明は、疾患の根治的治療法の確立につながります。

発表論文情報

英文タイトル: 『A comprehensive long-read sequencing system to assess DNA methylation at differentially methylated regions and imprinting-disorder-related genes』
和文タイトル: 『メチル化可変領域およびインプリンティング異常関連遺伝子におけるDNAメチル化を評価するための包括的なロングリードシーケンシングシステム』

著者名: 浦川立貴1), 2)、服部 淳1), 3)、荻原康子1)、増渕颯1)、五十嵐瑞穂1)、中村紗佑里1), 4)、原香織1)、石渡啓介5)
緒方広子5)、嘉村浩美5)、黒木陽子3), 6), 7)、中林一彦5)、深見真紀1), 3)、鏡雅代1)

所属:
1) 国立成育医療研究センター 研究所 分子内分泌研究部
2) 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 小児科
3) 国立成育医療研究センター 研究所 ダイバーシティ研究室
4) 国立成育医療研究センター 教育研修センター
5) 国立成育医療研究センター 研究所 周産期病態研究部
6) 国立成育医療研究センター 研究所 ゲノム医療研究部
7) 国立成育医療研究センター 研究所 共同研究管理室

掲載誌:Genome Medicine
DOI:10.1186/s13073-025-01559-w

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

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※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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