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アジア太平洋地域における超早期発症型炎症性腸疾患(VEO-IBD)の診療基盤となるレビューを発表~早期の内視鏡検査と遺伝子検査が重要~

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)消化器科の新井勝大診療部長と竹内一朗医師は、アジア太平洋地域における超早期発症型炎症性腸疾患1(VEO-IBD)の現状と課題を網羅的にまとめた国際レビュー論文を発表しました。VEO-IBD は、6 歳未満で発症する小児IBD の一群ですが、成人や年長児のIBD と比較して患者さんの数が少ないため、診断・治療等の基盤となるデータが乏しいのが現状です。一方で、単一遺伝子変異によるモノジェニックIBD2 が高頻度に含まれますが、そのいくつかは、病態に則った治療により完治する可能性もあり、効果的かつ正確な診断が望まれています。そのような中、各国の医療体制を考慮した上で、アジア太平洋地域特有の遺伝的背景、地域特性を踏まえた診療指針を支えるレビュー論文の作成が求められていました。本レビュー論文では、アジア太平洋地域12 か国・地域の小児IBD のエキスパートが協力して、同地域のVEO-IBD に関する疫学、遺伝的背景、診断プロセス、治療戦略について包括的に発信しています。
本論文は、国際的な学術誌「Intestinal Research」に掲載されました。

[1]炎症性腸疾患(IBD)とは、腸管に慢性的な炎症が起こる病気の総称で、成人では主にクローン病や潰瘍性大腸炎が含まれます。小児のIBD は発症年齢や症状、背景が多様であり、特に6 歳未満で発症する超早期発症型炎症性腸疾患(VEO-IBD)は、成人とは異なる特徴を持つことが知られています。
[2]モノジェニックIBD とは、特定の遺伝子変異が原因となる炎症性腸疾患のこと。多くは免疫不全や自己炎症性疾患と関連しており、発症機序や治療方針が一般的なIBD とは異なるため早期診断が特に重要です。

図1:VEO-IBD・モノジェニックIBD の包括的診断フロー【図1:VEO-IBD・モノジェニックIBD の包括的診断フロー】


図2:アジア地域と欧州・北米から報告されているモノジェニックIBD の種類の比較

【図2:アジア地域と欧州・北米から報告されているモノジェニックIBD の種類の比較】

プレスリリースのポイント

  • VEO-IBD(6歳未満発症の小児炎症性腸疾患)に関するアジア太平洋地域初の包括的レビューを発表しました。
  • VEO-IBDに含まれる遺伝性疾患(モノジェニックIBD)に関して、アジア太平洋地域と欧米における種類と頻度の違いを提示しました(図2)。アジア太平洋地域からの報告では、モノジェニックIBD の半数以上をIL-10・IL-10受容体欠損症が占めています。この疾患では炎症を抑制するIL-10シグナルがうまく働かないため生後早期から重篤な肛門病変を伴う腸炎を発症しますが、造血細胞移植により根治が見込めます。一方、欧米からの報告ではこの頻度は比較的低く、代わってIPEX 症候群やTTC7A欠損症など免疫調節異常や上皮バリア障害を主体とする疾患が多く報告されています。これらの結果は、モノジェニックIBDの診断・治療に地域ごとの遺伝的背景と臨床像を考慮することの重要性を示しています。
  • VEO-IBD・モノジェニックIBDの診断の鍵となる「早期の内視鏡検査」と「遺伝子検査の重要性」を強調しています。

VEO-IBD診療における重要なポイント

  • 6歳未満という低年齢の小児であってもIBDを発症することがある。VEO-IBDが疑われた場合には診断のために速やかに内視鏡検査を施行する。
  • VEO-IBDと診断した場合には、単一遺伝子異常であるモノジェニックIBDである可能性を念頭に置いた診療を行う。
  • 特に難治な経過をたどる患者さんや腸以外の病気も合併している患者さんでは、モノジェニックIBDが強く疑われるため早期に遺伝子検査を行う必要がある。

発表論文情報

タイトル:Asian - Pacific perspectives on the management of very early-onset inflammatory bowel disease
執筆者:竹内一朗、新井勝大
所属:国立成育医療研究センター 小児炎症性腸疾患センター・消化器科
掲載誌:Intestinal Research(オンライン掲載日:2025年10月28日)
DOI:https://doi.org/10.5217/ir.2025.00082

本件に関する取材連絡先

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koho@ncchd.go.jp

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