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妊娠中の金属元素(鉛、カドミウム、水銀、マンガン)ばく露量の増加は4歳までの子どもの肥満と関連しないことが明らかに:子どもの健康と環境に関する全国調査 (エコチル調査)

国立成育医療研究センター エコチル調査研究部の羊利敏、佐藤未織、齋藤麻耶子、宮地裕美子、原間大輔、坂本慧、西里美菜保、熊坂夏彦、目澤秀俊、山本貴和子、大矢幸弘、深見真紀の研究グループはJECSグループと共同でエコチル調査データを用いて、母親の妊娠中血中金属元素濃度※1と4歳までの子どもの肥満との関連を調べました。肥満を4グループに分け分析した結果、水銀ばく露※2量の増加は、3-4歳時点での肥満、または持続性肥満と関連が低いことが明らかになりました。また、母親の妊娠中の血中金属元素濃度の上昇は子どもの肥満とは関連がないと結論付けました。
本研究の成果は、2025年9月6日付で国際的な学術誌『Environmental Research』に掲載されました。

※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。また、妊娠中の金属ばく露を推奨するものではありません。

※1 血中金属元素濃度:血液内に含まれる特定の金属元素の量を数値で示したもので、健康状態の指標としても利用されます。
※2 ばく露:食べたり、触れたり、吸い込むことで化学物質が体内に取り込まれること。本研究の場合は、金属を体内に取り込むことを指す。

発表のポイント

  • 鉛、カドミウム、水銀のばく露は、4歳までのzBMI※3が低くなる傾向を示しました。
  • 子どもの4歳までの肥満は、肥満なし群(74.7%)、早期肥満群(8.4%)、3-4歳肥満群(11.8%)、持続性肥満群(5.2%)の4群に分類しました。
  • 水銀ばく露量の増加は、3-4歳時点での肥満または持続性肥満と関連が低いことが明らかになりました。
  • 妊娠中の血中鉛、カドミウム、水銀、マンガン濃度が同時に上昇すると、4歳時点での肥満のリスクが減少することが分かりました。
  • 統計上母親の妊娠中の血中金属元素濃度が上昇すると小児肥満のリスクが減少することが認められましたが、その関連は極めて低いため、母親の妊娠中の血中金属元素濃度が小児肥満に大きな影響を与えることはないと結論付けました。

※3 zBMI:身長と体重からBMI(BMI:[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出される値)を算出し、居住国における同年齢・同性のBMI分布を基準として肥満度を数値化したスコアのこと。

研究の背景

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、「エコチル調査」)は、胎児期から小児期にかけての化学物質やその他環境因子へのばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査です。さい帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関連を明らかにしています。
エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施しています。
これまでも母親の妊娠中の血中金属元素濃度と子どもの成長との関連は研究されていましたが、その結果は一貫していませんでした。特に、金属ばく露は小児期における肥満発症リスクやzBMIと関連している可能性が示唆されてきました。今回私たちはエコチル調査で得られたデータを用いて、妊婦の血中金属元素濃度と子どもの肥満との関連について調べました。

研究内容と成果

本研究では、母子93,782組を解析対象としました。解析は3つに分けられ、まず水銀、鉛、カドミウム、マンガンの4つの金属ばく露それぞれと4歳までの小児肥満との関連を調べました。 次に、肥満を分類して、各金属と肥満の4グループとの関連を考察しました。最後に、4つの金属が同時に変化した際の、4歳時点での肥満リスクの変化を観察しました。
その結果、鉛、カドミウム、水銀のばく露は、4歳までのzBMIが低くなる傾向を示しました。子どもの4歳までの肥満は、肥満なし群(74.7%)、早期肥満群(8.4%)、3-4歳肥満群(11.8%)、持続性肥満群(5.2%)の4群に分類しました。水銀ばく露量の増加は、3-4歳時点での肥満または持続性肥満と関連が低いことが明らかになりました。妊娠中の血中鉛、カドミウム、水銀、マンガン濃度が同時に上昇すると、4歳時点の肥満のリスクが減少することが分かりました。統計上母親の妊娠中の血中金属元素濃度が上昇すると小児肥満のリスクが減少することが認められましたが、その関連は極めて低いため、母親の妊娠中の血中金属元素濃度が小児肥満に大きな影響を与えることはないと結論付けました。

発表論文

題名(英語):Maternal blood metal levels during pregnancy and body mass index z-score, overweight, and obesity among children: Findings of the Japan Environment and Childrenʼs Study
著者名(英語):Limin Yang1*, Miori Sato1, Mayako Saito-Abe1, Yumiko Miyaji1, Daisuke Harama1, Kei Sakamoto1, Minaho Nishizato1, Natsuhiko Kumasaka1, Hidetoshi Mezawa1, Kiwako Yamamoto-Hanada1, Yukihiro Ohya1,2, and Maki Fukami1, on behalf of the Japan Environment and Childrenʼs Study Group#
1:羊利敏、佐藤未織、齋藤麻耶子、宮地裕美子、原間大輔、 坂本慧、西里 美菜保、熊坂 夏彦、目澤秀俊、山本貴和子、深見真紀:国立成育医療研究センター エコチル調査研究部
2:大矢幸弘:名古屋市立大学 大学院医学研究科 環境労働衛生学分野
#グループ:エコチル調査運営委員長(研究代表者)、コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンターから構成
掲載誌:Environmental Research
DOI: https://doi.org/10.1016/j.envres.2025.122755



本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時


※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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