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思春期の孤独感がネットの使いすぎにつながるリスクを増大~全国大規模調査で明らかに~

東邦大学の福屋吉史助教と国立成育医療研究センターの石塚一枝室長、森崎菜穂部長らの研究グループは、全国の10~16歳の子どもを対象とした大規模調査の結果を用いて、子どもの孤独感が問題のあるインターネット使用のリスクを高めるかについて解析しました。
その結果、思春期の子どもの孤独感が強いほど、問題のあるインターネット使用(Problematic Internet Use: PIU)(注1)のリスクが高まることが縦断研究によって明らかになりました。また、解析の結果から思春期の子どもの孤独感は、問題のあるインターネット使用のリスクを独立して高める可能性を示しました。
本研究成果は、子どもの問題のあるインターネット使用の予防に向けた新たな視点を提供するもので、2025年 10月14日に国際学術誌「International Journal of Mental Health and Addiction」に掲載されました。

(注1)問題のあるインターネット使用 (Problematic Internet Use: PIU)

家庭や学校などの日常生活に支障が生じるほどインターネットを使用している状況を指します。

発表のポイント

  • 近年、国内外で子どもの問題のあるインターネット使用が深刻化しています。
  • これまで様々な要因が問題のあるインターネット使用に関与すると示唆されてきましたが、思春期の子どもの孤独感との関係は十分に検証されていませんでした。
  • 本研究では、思春期の孤独感が高いほど、1年後の問題のあるインターネット使用リスクが増加することを明らかにしました(孤独感の点数が1点高くなるごとに14%増)。
  • 思春期の子どもの孤独感は問題のあるインターネット使用のリスクを独立して高める可能性が示唆されました。

発表内容

孤独感は子どものメンタルヘルスや行動に悪影響を及ぼす要因として注目されており、特にCOVID-19パンデミック後には欧米やアジア諸国において中等度の孤独感を感じる10代の子どもが増加していると報告され、ドイツの報告では孤独を感じる11~15歳の子どもが1.5倍に増えたと報告されています。

一方、問題のあるインターネット使用が国内外で社会問題となっており、日常生活や学業、メンタルヘルスへの悪影響が指摘されています。

本研究では、思春期の孤独感が1年後の問題のあるインターネット使用にどの程度関連するかを検証することを目的としました。

研究グループは、全国の自治体から無作為に選ばれた10~16歳の子ども528人と保護者を対象とし、2022年と2023年の2時点で質問紙調査を実施し、最終的に524人の子どもと保護者の調査結果を解析しました。今回の調査では、孤独感については、日本語版UCLA孤独感尺度短縮版を用いました。同尺度では、子どもに「あなたは、自分に仲間付き合いがないと感じることがありますか」「あなたは、疎外されていると感じることがありますか」「あなたは、他の人から孤立していると感じることがありますか」と3項目を質問し、各設問に「決してない」「ほとんどない」「時々ある」「常にある」の4項目で回答を得て、各項目の合計点を算出しています。

2023年時点で約5人に1人(n=98人:18.7%)が問題のあるインターネット使用の傾向を示しました(図1)。調査開始時点のうつ症状や問題のあるインターネット使用を考慮しても、孤独感が高いほど1年後の問題のあるインターネット使用のリスクは有意に高く、孤独感の点数が1点上がるごとにリスクが14%増加しました(図2)。

 今回の研究成果は、孤独感は思春期の子どもの問題のあるインターネット使用の独立したリスク要因であることが示唆されました。思春期の子どもの問題のあるインターネット使用を予防するために、家庭・学校・地域での人とのつながり作りや子どもの孤独感を軽減する取り組みが大切であると考えられます。

図1. 思春期の子どものインターネットの使用状況の割合 (n=524)

【図1. 思春期の子どものインターネットの使用状況の割合 (n=524)】

図2. 思春期の子どもの孤独感と問題のあるインターネット使用のリスク【図2. 思春期の子どもの孤独感と問題のあるインターネット使用のリスク】

発表論文情報

雑誌名:「International Journal of Mental Health and Addiction」(2025年10月14日)

論文タイトル:Association of Loneliness with Problematic Internet Use Among Adolescents Aged 10 to 16: a Longitudinal Study

著者:
福屋 吉史 (東邦大学医学部精神神経医学講座 助教)
須山 聡 (北海道大学病院 子どものこころと発達センター 特任助教)
小川 しおり (名古屋大学 総合保健体育科学センター 准教授)
山脇 かおり (国立障害者リハビリテーションセンター病院 小児科・児童精神科 第三診療部長)
森崎 菜穂 (国立成育医療研究センター 社会医学研究部 部長)
石塚 一枝 (国立成育医療研究センター 女性のライフコース疫学研究室 室長)

DOI番号:10.1007/s11469-025-01556-5

論文URL:https://doi.org/10.1007/s11469-025-01556-5



本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

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koho@ncchd.go.jp

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