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3歳時の子どもの粒子状物質(PM)ばく露と甲状腺ホルモン値との関連:子どもの健康と環境に関する全国調査 (エコチル調査)

国立成育医療研究センター エコチル調査研究部の羊利敏、佐藤未織、齋藤麻耶子、宮地裕美子、原間大輔、坂本慧、西里美菜保、熊坂夏彦、目澤秀俊、山本貴和子、大矢幸弘、深見真紀の研究グループはJECSグループと協同でエコチル調査データを用いて、幼児期における粒子状物質ばく露※1と甲状腺ホルモン値との関連を調べました。その結果、統計上3歳時の屋内および屋外の粒子状物質PM10-2.5と4歳時の遊離サイロキシン※2濃度の間に極めて弱い関連を示しましたが、公衆衛生や臨床の視点から、このわずかな変化が人の健康に重大な影響を及ぼす可能性は極めて低いと考えられ、日常生活において粒子状物質ばく露が甲状腺ホルモン値に重大な影響を与えることはないと結論付けました。
本研究の成果は、2025年8月6日付で国際的な学術誌『The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism』に掲載されました。
※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。

※1 ばく露:食べたり、触れたり、吸い込むことで化学物質が体内に取り込まれること。本研究の場合は、大気粒子状物質を体内に取り込むことを指す。
※2 遊離サイロキシン:甲状腺ホルモンの一つで、血中の量を測定することで甲状腺機能の異常に関わる病気の発見に役立てることができる。

発表のポイント

1.5歳時の屋内および屋外の粒子状物質(以下PM)ばく露はいずれも、2歳時の遊離サイロキシン(以下fT4)および甲状腺刺激ホルモン(以下TSH)値と有意な関連を示しませんでした。
3歳時の屋内および屋外のPM10-2.5ばく露は、4歳時のfT4濃度と有意に負の関連を示しました。
統計上PM10-2.5とfT4濃度の間に負の関連を示しましたが、その関連性は極めて低いため、日常生活においてPMが甲状腺ホルモン値(以下TH)に重大な影響を与えることはないと結論付けました。

研究の背景

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、「エコチル調査」)は、胎児期から小児期にかけての化学物質やその他環境因子へのばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査です。さい帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関連を明らかにしています。
エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施しています。
PMばく露は、子癇前症、早産、アレルギー性疾患、自閉症スペクトラム障害などの発症と関連が報告されています。先行研究によると、PMばく露はTHの調節と機能に影響を及ぼし、さらに、成人を対象とした研究では、PMばく露とTH値との間に関連があることが報告されています。
本研究では、エコチル調査の詳細調査データを用いて、2~4歳の小児におけるPMばく露と血中fT4およびTSH濃度との関連を調べました。

研究内容と成果

本研究では、約10万人の参加者のうち、詳細調査にご協力いただいた約5,000人を対象とし、2歳と4歳の甲状腺ホルモン値を分析しました。2つの年齢群について別々のデータセットとして解析しました。甲状腺ホルモン値のデータが欠損している参加者、双子、親が報告した内分泌疾患のある子ども、先天性甲状腺機能低下症、妊娠前または妊娠中に甲状腺疾患の病歴のある母親、血液検査当日に病気がある子どもは解析から除き、2歳児群3,599人と4歳児群3,431人の甲状腺ホルモン値を分析に使用しました。
1歳6か月時と3歳時の2回、家庭訪問を行い、環境測定から入手した室内と室外PM測定値をばく露として使用しました。PMばく露と甲状腺ホルモン値との関連を一般化線形モデル※3を用いて検討を行いました。
検討の結果、1.5歳時の屋内および屋外のPMばく露はいずれも、2歳時のfT4およびTSH値と有意な関連を示しませんでした。その一方、3歳時の屋内および屋外のPM10-2.5ばく露は、4歳時のfT4濃度と有意に負の関連を示しました、屋内のPM10-2.5が2倍になると、fT4濃度は0.007ng/dL減少しました。

※3 一般化線形モデル:複数の影響要因を探る際に使う解析手法の一種。

発表論文

題名(英語):Association Between Particulate Matter Exposure and Thyroid Hormone Levels in Early Childhood: Results from JECS
著者名(英語):Limin Yang1*, Miori Sato1, Mayako Saito-Abe1, Yumiko Miyaji1, Daisuke Harama1, Kei Sakamoto1, Minaho Nishizato1, Natsuhiko Kumasaka1, Hidetoshi Mezawa1, Kiwako Yamamoto-Hanada1, Yukihiro Ohya1,2, and Maki Fukami1, on behalf of the Japan Environment and Childrenʼs Study Group#
1:羊利敏、佐藤未織、齋藤麻耶子、宮地裕美子、原間大輔、 坂本慧、西里美菜保、熊坂夏彦、目澤秀俊、山本貴和子、深見真紀:国立成育医療研究センター エコチル調査研究部
2:大矢幸弘:名古屋市立大学 大学院医学研究科 環境労働衛生学分野
#グループ:エコチル調査運営委員長(研究代表者)、コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンターから構成
掲載誌:The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
DOI: 10.1210/clinem/dgaf446

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時


※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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