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20〜35歳では「胃がん」は男性より女性の方が多い 女性の健康総合センターが疾患別性差の可視化レポートを公開 ~性差に合わせて適切な医療を設計する未来を目指して~
国立成育医療研究センター(東京都世田谷区、理事長:五十嵐 隆)に設置された女性の健康総合センター(センター長:小宮
ひろみ)の女性の健康推進研究室(室長:森崎菜穂)とデータセンター準備室(室長:中野孝介)は、ナショナルセンター医療研究連携推進本部(JH)による「6NC連携のNDB研究基盤による重点疾患の疫学・政策研究の推進」研究グループと連携し、匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を活用して疾患性差を可視化する研究を行い、報告書を公開しました。
その結果、胃がんは「男性に多い」という一般的なイメージとは異なり、若年層(20~35歳)では、男性より女性の方が多い傾向が認められました。また、クモ膜下出血は女性に多いとされますが、女性が多くなる傾向は年齢とともに上がっていくことが明らかになりました。さらに乳がんについては、30歳以降のすべての年齢層で女性が圧倒的に多いものの、55歳以降は男性の患者数が増加し男女差が徐々に縮小することが示されました。
本研究は、全国規模の医療保険データを用いて疾患別性差を包括的に可視化した初めての取り組みで、今後の政策立案や健康施策の基盤情報として活用されることが期待されます。
【図1:胃がんとクモ膜下出血の2疾患の有病者数男女比ヒートマップ】
<表の見方>
・病名別・年齢階級別有病者数の男女比率を表示しています。
・有病者数の男女比率は、女性の有病者数/男性の有病者数で示しています。
・4倍を超える比率の場合は、最も濃い配色で表示しています。
【図2:全疾患の有病者数男女比ヒートマップ】
<表の見方>
➀病名別有病者数の積み上げ棒グラフ
・病名別の有病者数を表示しています。
・男性の患者数を水色、女性の患者数をオレンジで表示しています。
・総有病者数の降順で表示しています。
➁病名別年齢階級別有病者数の男女比率のヒートマップ
・病名別、年齢階級別有病者数の男女比率を表示しています。
・有病者数の男女比率は、女性の有病者数/男性の有病者数で示しています。
・総有病者数の降順で表示しています。
・4倍を超える比率の場合は、最も濃い配色で表示しています。
・心筋梗塞、急性大動脈解離は0~19歳までの年齢は、5歳ごとの有病者数データが存在しないため表示していません。
プレスリリースのポイント
- 女性の健康総合センター 女性の健康推進室および、データセンター準備室は、がん・糖尿病・循環器疾患・神経筋疾患の性差に関する可視化レポートを作成しました。
- 本レポートの作成では、JHの研究グループがまとめている2012年~2020年度の匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)から算出した性別・年齢階級別の各疾患の患者数などのデータを使用しました。
- 胃がんなどは「男性に多い」という一般的なイメージとは異なり、若年層(20~35歳)では、男性より女性の方が多い傾向が認められました。
- 女性に多いとされるクモ膜下出血、乳がんなどについても、年齢ごとの性差の変化パターンが明らかにされました。
- 乳がんの最も多い年齢層は近年では65歳以降にシフトしていき、また55歳以降は男女さんが徐々に縮小していくことが分かりました。
- 今後も女性の健康センターの各研究室および、データセンター準備室は、ライフコース全体を視野に入れ、さまざまなデータを活用しながら性差に着目した健康データ解析を継続していきたいと考えています。
研究概要
「6NC連携のNDB研究基盤による重点疾患の疫学・政策研究の推進」研究グループが2012~2020年度の匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)の特別抽出データから算出した性別・年齢階級別の各疾患の患者数、および総務省統計局のオープンデータによる年齢別総人口を用いて、有病者数と有病率の性比(男性/女性)および年齢階級ごとの変化を算出・可視化しました。
<対象疾患(2025年6月時点)>
がん(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、肝がん)、糖尿病、循環器疾患(脳梗塞、脳内出血、クモ膜下出血、心筋梗塞、急性大動脈解離、心不全)、神経・筋疾患(デュシェンヌ型筋ジストロフィー・ベッカー型筋ジストロフィー・ミオチューブラーミオパチー・脊髄性筋萎縮症)
<留意点>
本研究はレセプト情報の二次解析であり、実際の有病者数を直接示すものではありません。
受診歴のない患者、公的医療保険を利用していない患者、全額公費負担で医療を受けている患者は本データに含まれません。
レセプト上の傷病名と実際の診断名には乖離が生じる可能性があり、疾患定義の工夫が必要です。
【図3:乳がんの経年変化のヒートマップ】
【グラフ1:性別・病名別の有病数の年度推移】
ナショナルセンター 医療研究連携推進本部について
ナショナルセンター医療研究連携推進本部(Japan Health Research Promotion Bureau:JH)は、日本の6つのナショナルセンターの資源・情報を集約し、それぞれの専門性を生かしつつ有機的・機能的連携を行うことによって、世界最高水準の研究開発・医療を目指した新たなイノベーションを創出することを目的とし、2020年4月に発足した横断的組織です。
- 本件に関する取材連絡先
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国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
03-3416-0181(代表)
koho@ncchd.go.jp
月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時
※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。