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身体症状の「数」が思春期の抑うつ症状の早期発見につながる可能性 〜10~15歳の小児の全国大規模調査で判明〜

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)教育研修センターの新野一眞、および女性のライフコース疫学研究室の石塚一枝、社会医学研究部のAurelie Piedvache、森崎菜穂らの研究グループは、全国の10歳〜15歳の小児を対象とした大規模調査を解析し、身体症状がどのくらいの「頻度」や「数」で現れる場合に抑うつ症状と関連するのかを調査しました。
本研究では頭痛や腹痛といった身体症状を訴える「数」が多いほど、抑うつ症状を併発するリスクが著しく高まることを明らかにしました。月に1回以上経験する身体症状が4種類ある子どもは、症状がない子どもと比較して、抑うつ症状のリスクが16.4倍に達しました(図1)。また抑うつ症状がある子どもの約86%が、何らかの身体症状を月に1回以上経験していました。
本研究成果は、子どもたちが言葉で表現しにくい心の不調を、保護者や教師、かかりつけ医など周りの大人が身体のサインから早期に気付き、適切なサポートに繋げるための重要な手がかりとなります。この発見は、思春期のメンタルヘルス課題に対する新たな視点を提供するものです。
本研究成果は、小児科領域の国際的な学術誌「European Journal of Pediatrics」に2025年8月20日付で論文として掲載されました。
図1:身体症状の「数」と抑うつ症状のリスク【図1:身体症状の「数」と抑うつ症状のリスク】

プレスリリースのポイント

  • 頭痛、腹痛、背部痛、めまいといった複数の身体症状を月に1回以上訴える子どもは、抑うつ症状を持つリスクが顕著に高いことがわかりました。症状が4つある場合のリスクは、症状がない子どもの16.4倍に達します(図1)。
  • 抑うつ症状のある子どものうち約86%が、何らかの身体症状を月に1回以上経験していました。これは、身体の不調が心の健康状態を反映している可能性を示唆します。
  • 子どもの訴える身体症状の「数」や「頻度」に注目することが、見過ごされやすい抑うつ症状の早期発見に役立ち、家庭や学校、プライマリケアの現場で活用できる簡便なスクリーニング方法になる可能性を示しました。

背景・目的

思春期の抑うつ症状は世界的に増加しており、学業不振や不登校、将来の精神疾患、さらには自殺にも繋がる深刻な健康問題です。しかし、子ども自身が心の不調をうまく言葉にできなかったり、助けを求めることをためらったりするため、周りの大人が気付きにくいという課題がありました。
一方で、抑うつ症状を抱える子どもは、頭痛や腹痛といった身体症状を伴うことが多いことが知られています。そこで本研究は、これらの身体症状がどのくらいの「数」や「頻度」で現れる場合に抑うつ症状と強く関連するのかを科学的に検証し、早期発見に役立つ指標を作ることを目的としました。

研究概要

本研究は、全国の自治体から無作為に選ばれた10歳から15歳の小児2,268人を対象とした質問票調査のデータを用いて行われました。調査では、過去6ヶ月以内における4種類の身体症状(頭痛、腹痛、背部痛、めまい)の経験頻度と、国際的に広く用いられている思春期用の質問票(PHQ-A)を用いて抑うつ症状の程度を評価しました。これらの情報を用いて、身体症状の「数」や「頻度」と抑うつ症状との関連を統計学的に分析しました。

発表論文情報

題名(英語):Frequency and number of somatic symptoms in association with depressive symptoms in Japanese children aged 10-15: a population-based study
著者名:新野一眞1-3、石塚一枝4、Aurelie Piedvache2、森崎菜穂2,3
所属:
(1) 国立成育医療研究センター 教育研修センター
(2) 国立成育医療研究センター 社会医学研究部
(3) 東京大学大学院医学系研究科 生殖発達加齢医学
(4) 国立成育医療研究センター 女性のライフコース疫学研究室
掲載誌:European Journal of Pediatrics
DOIhttps://link.springer.com/article/10.1007/s00431-025-06399-9



本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

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