小児・AYA世代の難治性B細胞性急性白血病に対しブリナツモマブを使用した新たな移植後再発予防治療の可能性を示唆
[1]B細胞性急性白血病(B-ALL)とは、白血病の一種で、リンパ球の一種であるB細胞ががん化し、骨髄内で異常に増殖する病気のこと。
[2]第I相臨床試験とは、ごく少量から少しずつ投与量や投与回数を増やしながら体内での作用などを調べ、薬の安全性について評価すること。

プレスリリースのポイント
- 本研究は、JCCGの造血細胞移植・免疫細胞療法委員会が主導し、全国85施設が参加しました。難治性または再発性のCD19陽性B-ALL3で、第一寛解期を除く病期に同種造血細胞移植を受けた患者さんを対象に、移植後早期(30〜100日以内)にブリナツモマブを2コース(各4週間)投与し、その安全性を評価しました。
- 9人の患者さんが登録され、67%が予定された2コースの治療を完遂しました。Grade3以上の重篤な副作用は一部に認められたものの、全体として許容可能な安全性が確認されました。また、治療中および観察期間中に再発や死亡は1例も報告されませんでした。
- 本成果は、造血細胞移植後の再発リスク低減に向けた新たな治療戦略として、ブリナツモマブの活用可能性を示す重要な一歩です。今後は更なる臨床試験を通じて有効性の検証が進められる予定です。
背景と目的
小児・AYAの難治性または再発性CD19陽性B-ALLに対し、造血細胞移植は重要な根治療法ではあるものの移植後再発リスクが依然として高く、移植後維持療法は未確立です。本試験では、移植後30~100日以内にブリナツモマブを2コース(各4週間)投与する移植後維持療法について、主にその安全性を評価することを目的としました。
研究手法と成果
本研究は、JCCGの造血細胞移植・免疫細胞療法委員会が主導し、全国85の小児がん治療施設が参加した多施設共同第I相臨床試験です。再発性/難治性CD19陽性B-ALLの小児およびAYA世代の患者さんを対象に、同種造血細胞移植後の早期(移植後30〜100日以内)に免疫療法薬ブリナツモマブを投与し、その安全性および実施可能性を検証しました。主要な評価項目は治療完遂率(66%以上で次の試験に進行可能)とし、副次評価項目として治療関連有害事象(Grade3以上)を評価しました。
主な成果は以下のとおりです:
- 登録患者さん全員(9名)が第1コースを完了し、6名(67%)が計画通り2コースを完遂しました。事前に設定した安全性基準を達成し、次の試験への進行基準を満たしました。
- Grade3以上の有害事象は一部に認められたものの、致死的な合併症は認められず、ブリナツモマブの投与は全体として良好な忍容性を示しました。
- 治療期間中および観察期間内(中央値341日)において、再発・死亡は1例も発生しませんでした。
- 治療開始前に末梢血中に検出されていたCD19陽性B細胞は、治療後には全例で消失し、中央検査機関による骨髄評価でも、2コース終了時に評価可能であった8例すべてが微小残存病変4陰性を確認できました。
これらの結果は、移植後の早期にブリナツモマブを導入する方法が、安全かつ再発予防の有力な手段となり得ることを示唆しています。
[4]微小残存病変とは、患者さんの体内にまだ残っているであろうと想定されるがん病変のこと。
発表論文情報
論文タイトル:Post-transplant maintenance with blinatumomab for children, adolescents, and young adults with relapsed and refractory B-cell acute lymphoblastic leukemia: results of phase I in SCT-ALL-BLIN21
主な著者:坂口大俊1)、坂口公祥2)、加藤格3)、梅田雄嗣3)
所属:
1)国立成育医療研究センター 小児がんセンター 血液腫瘍科
2)浜松医科大学 医学部附属病院 小児科
3)京都大学大学院医学研究科 発達小児科学
掲載誌:Haematologica(https://haematologica.org/index)impact factor (2024): 7.9
DOI:10.3324/haematol.2024.286719
掲載日:Early view 2025年7月10日
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