小児集中治療室(PICU)に入室した子どもと家族のメンタルをサポート Web PICUダイアリーの実現可能性について検証
国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区、理事長:五十嵐隆)集中治療科の壷井薫と株式会社ディー・エヌ・エーの子会社である株式会社アルム(所在地:東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO:大谷駿明、以下 アルム)は、「小児集中治療後症候群(以下:PICS-p(ピックスピー))」の軽減に寄与する可能性のある「PICUダイアリー」の作成をデジタルで行えるようにし、システム構築や技術的な課題の検証、ご家族の満足度について評価する研究を開始しました。
PICUダイアリーは、PICUに入室している子どもの治療過程や日々の出来事などを、子どもだけでなく、ご家族や医療スタッフが記録する日記です。PICUに入室している子どもは治療に使う麻酔などを含む鎮静剤の影響による記憶の欠損や、治療に対する恐怖心などを持つ場合があります。また、保護者は、自分の子どもが生命の危機にさらされている中、面会制限などで子どもと過ごせる時間が制約されるため、強い精神的ストレスを受けます。Web PICUダイアリーを使うことで、自分の子どもがおかれている状況を自身のスマートフォンやタブレットで確認できるようになり、医療従事者とのコミュニケーションの促進も期待されます。また、お子さんとの面会が困難な状況にあるごきょうだいや遠方にお住まいのご家族もWeb PICUダイアリーの閲覧や投稿を通して闘病中のお子さんの支援に参加することができるようになります。お子さん自身にとっても、PICUダイアリーを通して自分が治療を頑張っている様子を振り返ったり、保護者・医療従事者からの励ましのメッセージを読むことで、自己肯定感を高めたり、PICS-pの症状軽減の助けになると考えられています。
【PICUダイアリーの概念図】
背景
医療技術の進歩によりPICUでの救命率が向上した一方で、急性期の治療を乗り越え、PICUを退室したお子さんやそのご家族の多くに、身体機能やメンタルヘルスなどに問題が生じてくる小児集中治療後症候群(PICS-p)があります。例えば、メンタルヘルスにおいては、お子さんやご家族に、急性ストレス反応、不安、抑うつといった精神症状がみられることがあります。
欧米のPICUでは、お子さんのご家族に加え、医療従事者が共同で作成する日記「PICUダイアリー」が広く利用されています。PICUダイアリーには、お子さんの日々の様子や励ましの言葉、ご家族の思いなどが記入されます。近年、このPICUダイアリーが、ご家族と医療チームとの間のコミュニケーションを促進し、ご家族の心理的な支援に有用であるとの報告があります。しかし、日本国内ではPICUダイアリーの作成・維持に人的・時間的な負担が大きいため、導入している施設はほとんどありません。
そのため、セキュアな環境で管理されオンライン投稿が可能なシステムの構築によって、ご家族・医療従事者の負担軽減や、従来のPICUダイアリーの課題を解決することが求められています。
研究概要
研究対象
国立成育医療研究センターで生体肝移植、人工心肺を使用した心臓外科手術を受け、国立成育のPICUに入室した6歳以下の子どもとそのご家族、20組。
研究方法
アルムが開発している健康・治療生活サポートアプリ「MySOS」に搭載されたダイアリー機能を研究対象者に利用してもらい、その満足度を調査する。
評価指標
「Client Satisfaction Questionnaire 8」日本語版
研究期間
2025年6月~2026年3月
【PICUダイアリーの画面イメージ】
- 本件に関する取材連絡先
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国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
03-3416-0181(代表)
koho@ncchd.go.jp
月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時
※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。