医師の働き方改革が小児科専攻医に及ぼす影響を調査 ~5年間で勤務時間・日数の減少と精神衛生が有意に改善~
2019年度から働き方改革関連法案が順次施行され、2024年度に医師の働き方改革が施行されました。これは医師の時間外労働の上限を原則的に年間960時間に規制し、医療の質、安全を担保することを骨子としています。そこで2019年から、2024年度の医師の働き方改革施行に向けて小児科専攻医の労働環境の改善を行い、横断調査を実施しました。その結果、5年間で勤務時間の減少と精神衛生の有意な改善が見られました。

プレスリリースのポイント
- 本研究は当センターの小児科専攻医の働き方改革の内容とその影響に関する報告です。
- 働き方改革の取り組みにより、勤務時間と精神衛生は5年間で有意に改善しました。
- 研修時間の減少に伴う、専攻医の医学的知識・スキル・患者ケアオーナーシップの低下等が懸念されており、それらへの対処も含めて今後も調査・取り組みを続けていきます。
背景・目的
2019年度から施行された働き方改革は、業務の特性や慣行を理由として、建設業、運搬業、医師、砂糖製造業の4部門が5年間猶予されていましたが、2024年度にこれらの4部門も対象になり、時間外労働の上限規制が全業種に及びました。医師の各科、各施設でも現場でさまざまな対応が行われていますが、その報告や、医師に及ぼす影響についての調査はまだ非常に少ない状況です。
当センターには小児科専門医を目指す3年間の専攻医制度があり、各学年で11~14人、合わせて40人程度の国内最大規模の小児科専門研修を行っています。3年間の専攻医研修のうち、半分程度を総合診療部病棟での研修が占めており、夜勤や休日出勤など、時間外労働が月100時間を超える専攻医もいるなど、過酷な労働環境が以前から問題となっていました。そこで、当センターの小児科専攻医に対する働き方改革の取り組みを行い、その影響を調査し報告しました。
発表論文情報
タイトル:Work style reform for pediatric residents
執筆者:中尾 寛1)2)、野村 理1)、利根川 尚也1)、窪田 満2)、石黒 精1)
所属:
1) 国立成育医療研究センター 教育研修センター
2) 国立成育医療研究センター 総合診療部 総合診療科
掲載誌:JMA Journal (日本医師会の英文誌)
DOI:10.31662/jmaj.2024-0419
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国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
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