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牛乳アレルギー治療(経口免疫療法)に対する有効性試験 (乳酸菌発酵果汁飲料を用いた二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験 -パイロット研究)TOY研究

食物アレルギーの原因食物に対する耐性を獲得することを目的とした治療に、食物経口免疫療法があります。本研究では重症牛乳アレルギーのお子さんに対する牛乳経口免疫療法に加え、加熱死菌乳酸菌(LP0132)発酵果汁飲料を24週間摂取することで、経口免疫療法の効果が変化するか、ランダム化比較試験で探索的に検討しました。24週後の牛乳アレルギーの閾値改善効果は得られませんでしたが、免疫のバランスはアレルギーの強い状態が弱まり耐性獲得の方向へシフトした傾向があり、それに腸内環境の改善が関与した可能性が考えられました。
このような研究が実施できましたのは、参加してくださった皆様のご理解と継続的なご協力のおかげです。あらためまして本研究に参加して下さったすべてのお子さまとご家族の皆様に、心より御礼申し上げます。
以下、論文を要約したものです。ご興味のある方はご一読ください。

背景

食物経口免疫療法とは、自然経過では食べられるようになる(耐性獲得)可能性が低い食物アレルギーの方に対し、アレルギー反応をおこさない程度に少量の原因食物を継続的に食べて頂き、脱感作状態・耐性獲得を目指す治療法です。牛乳アレルギーに対する経口免疫療法は、卵や小麦と比べて治療効果が低いことが知られています。
腸内環境とアレルギーは関わりがあることが近年報告されています。腸内フローラのバランスを改善し、人に有益な作用をもたらす生きた微生物のことをプロバイオティクスと呼びます。近年、食物経口免疫療法の効果や安全性を増やすことを目的として、経口免疫療法にプロバイオティクスを併用する試みがなされています。
Lactiplantibacillus plantarum YIT 0132(以下LP0132)は、これまでの臨床研究で、生菌ではなく加熱死菌の形態でも花粉症や通年性アレルギー性鼻炎に対し症状を改善させる効果があることが確認されている興味深い乳酸菌です。LP0132は食物アレルギーに対しても有効性を示すことが期待されますが、その有効性を調査した研究はまだありませんでした。

目的

重症の牛乳アレルギーのお子さんの牛乳経口免疫療法を行う際、LP0132発酵果汁飲料(みかん果汁をLP0132で発酵させた飲料)を24週間摂取することで、経口免疫療法の効果・安全性が改善するかを調べるため、パイロット研究としてランダム化比較試験で探索的に検討しました。

方法

  • 研究施設:国立成育医療研究センター
  • 対象:重症牛乳アレルギーを有する1歳-18歳の方
  • 目標登録者数:60名
  • 研究の流れ:牛乳経口負荷試験(最大 計14.25ml)をおこない、陽性と判定され牛乳アレルギーと診断されたお子さんを登録し、プラセボ群またはLP0132群へ割付けしました。両群とも研究期間中は牛乳の少量緩徐経口免疫療法(維持量0.1mlまたは1ml)を続け、それと並行してLP0132を含まない果汁飲料(プラセボ群)またはLP0132発酵果汁飲料(LP0132群)を24週間飲み、24週後に牛乳経口負荷試験をおこないました。また、登録時と24週後に血液検査・腸内細菌叢を評価しました。


研究方法のイメージ図

結果

    • 最終的な参加者はプラセボ群に30名、LP0132群に31名の 計61名 でした。
    • 登録時と比べ24週後に牛乳経口負荷試験の負荷量が増加した(閾値が改善した)参加者の割合はプラセボ群37.9%、LP0132群41.4%で、両群にちがいを認めませんでした。

研究結果のグラフ

    • 試験飲料の摂取や牛乳経口免疫療法は、両群とも決められたとおりに継続できました。

研究結果のグラフ

    • 安全性の評価の結果は、有害事象のほとんどは牛乳経口免疫療法に伴う口腔刺激症状(口やのどのイガイガなど)や皮膚症状など軽度のものでした。重篤な有害事象2例は本研究と関連のない牛乳誤食によるアナフィラキシーでした。

研究結果のグラフ

  • 牛乳関連の血中特異的IgE抗体価(アレルギーと関連)は、24週後に両群で違いはみられませんでした。βラクトグロブリン特異的IgG4抗体価(高いほうが耐性獲得しやすい)は、24週後にプラセボ群では低下しましたが、LP0132群では低下しませんでした。
  • 血中のサイトカイン・ケモカイン(細胞から分泌される生理活性物質)について、アレルギーと関連するインターロイキン5、インターロイキン9は24週後にプラセボ群で変化なく、LP0132群で低下しました。
  • 腸内細菌叢について、腸内細菌叢の多様性はLP0132群で24週後に増加しました。Lachnospiraceaeという菌種がLP0132群で24週後に増加しました。

考察

重症牛乳アレルギーのお子さんに対する牛乳経口免疫療法へ加熱死菌乳酸菌(LP0132)発酵果汁飲料を追加することで、24週後の牛乳アレルギーの閾値改善効果は明らかではありませんでした。一方で、耐性獲得と関連する特異的IgG4抗体価がLP0132群で低下しなかったこと、アレルギーと関連するサイトカイン・ケモカインがLP0132群で低下したこと、またLP0132群で腸内細菌叢の多様性が高く、Lachnospiraceae(食物アレルギー者より健常者で多い)が増加したことから、24週間で免疫のバランスについて潜在的にアレルギー体質が改善し耐性獲得の方向へシフトした可能性があり、それに腸内環境が関与したことが考えられました。本研究では重症の食物アレルギーのお子さんを対象としたこと、また探索的な研究であり24週間という短期間での評価であったことを考慮する必要があります。

結論

重症牛乳アレルギーのお子さんに対する牛乳経口免疫療法に加えて加熱死菌乳酸菌(LP0132)発酵果汁飲料を摂取することで、24週後の牛乳アレルギーの閾値改善効果は認められませんでしたが、腸内環境の変化により、免疫のバランスは潜在的にアレルギー体質が改善し耐性獲得の方向へシフトした可能性が考えられました。

研究発表

  • 2022年10月
    学会発表:第71回日本アレルギー学会(演題名:牛乳アレルギー経口免疫療法に対する加熱乳酸菌併用効果に関する第二相ランダム化比較試験)
  • 2022年11月
    論文受理:Beneficial Microbes誌 (論文名Combination of heat-killed Lactiplantibacillus plantarum YIT 0132 (LP0132) and oral immunotherapy in cow's milk allergy: a randomised controlled trial)
  • 2022年11月
    学会発表:2022 JSPACI-APAPARI Joint Congress (日本小児アレルギー学会とアジア小児アレルギー学会の合同開催)
  • 2023年2月
    論文掲載:Benef Microbes.2023 Feb 23;1-14. doi: 10.3920/BM2022.0064. Online ahead of print. PMID: 36815492

問い合わせ先

TOY研究事務局 電話番号:03-3416-0611 E-mail: allergy_research@ncchd.go.jp





本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時


※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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