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αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植 ファンコニ貧血の男児に対し日本初の実施、重い合併症なく無事退院

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)の小児がんセンター 井口晶裕、藤森健太郎、牛腸義宏、坂口大俊、富澤大輔、出口隆生、 松本公一、遺伝子細胞治療推進センター 内山徹、小野寺雅史らのグループは、HLA[1]の合致するドナーがいないファンコニ貧血[2]の男児に対し、父親(HLAが半分合致)をドナーとした「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」を行いました。
「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」とは、HLAが半分合致するドナーの造血幹細胞からαβT細胞とB細胞を除去して移植する治療法です。αβT細胞を除去することで、ドナー由来のリンパ球がレシピエントの正常な臓器を異物とみなして攻撃する「移植片対宿主病(GVHD)」を回避することができ、移植後の免疫抑制療法も最小限で済ませることができます。本移植を受けた男児は、大きな合併症はなく順調に経過し、移植後およそ2か月で無事退院することができました。現在は、100%ドナー型の造血となっており免疫抑制剤は使用していませんがGVHDの発症はなく経過しています。
「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」は、欧州では小児を中心に実臨床で行われていますが、日本ではほとんど行われておらず、今回の治療はファンコニ貧血に対する日本で初めての移植成功例となります。

[1] HLA:身体の様々な細胞にある、ヒト白血球抗原という型。造血幹細胞移植や臓器移植の際には、HLAが合致しないと異物として認識し攻撃してしまう。
[2] ファンコニ貧血:生まれつきDNA修復障害のある病気で、加齢とともに造血障害が進行します。病状がさらに進行すると白血病を発症する危険性や、思春期以降は固形がんを発症する危険性も次第に高くなります。年間の発症数は5~10人前後で難病に指定されています。造血障害が進行している患者には、造血幹細胞移植を行います。


「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」のイメージ図

プレスリリースのポイント

  • ファンコニ貧血の男児に対して、日本で初めて「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」を行い、大きな合併症なく経過して無事退院することができました。
  • 「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」は、造血幹細胞から移植片対宿主病(GVHD)を引き起こすαβT細胞を除去することで、重症GVHDや移植後の大量の抗がん剤投与を回避することができます。
  • ファンコニ貧血の患者は、大量の抗がん剤投与や放射線治療ができないため、「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」が有効な治療法として期待されます。
  • 少子化の影響によりHLAが合致するドナーが見つかりにくくなっている中、「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」はHLAが半分合致するドナーからの移植の安全性を高める治療法と言えます。

背景

ハプロ移植はHLAが半分合致するドナーからの移植で、一般的には移植片対宿主病(GVHD)や生着不全の危険性が高い移植です。ハプロ移植ではHLAの不一致とそれに伴う合併症に対応するため、移植後に抗がん剤であるシクロフォスファミドを大量に使用したり、強い免疫抑制療法で制御したりしてきました。しかし移植前処置の抗がん剤や放射線治療に加えて移植後に大量のシクロフォスファミドを投与することは、治療関連毒性や晩期合併症のリスクが増加する問題があります。また、移植後に行う強度の免疫抑制療法は感染症の危険が高くなること、腎障害や微小血管障害など免疫抑制剤自体の副作用という問題もあります。
さらに、少子化でHLAが合致するドナーを見つけにくくなっている現状もあり、ハプロ移植の安全性を向上させることが求められています。

ファンコニ貧血とαβT細胞&B細胞除去ハプロ移植について

ファンコニ貧血は、DNA修復障害のため重大な臓器障害を引き起こす危険性が高く、大量の抗がん剤(特にシクロフォスファミドなどのアルキル化剤)や放射線治療ができません。また、ファンコニ貧血では移植後の重症GVHD発症は、将来の固形がん発症の危険性をさらに高めてしまうことも知られています。そのため、これまで日本でファンコニ貧血の患者さんにハプロ移植を行う場合には、免疫抑制療法を強化した移植とせざるをえず、感染症やGVHDなどの移植合併症の危険が高い移植となっていました。
しかし、「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」では、HLAが半分合致するドナーの造血幹細胞から、GVHDを引き起こすαβT細胞を除去して移植するため、抗がん剤である移植後大量シクロフォスファミドは不要となり、治療関連毒性や晩期合併症を軽減することができます。また移植後の免疫抑制療法も、最小限で済ませることができます。移植細胞からαβT細胞は除去されますがγδT細胞は残存した状態で移植するので、残存するγδT細胞が感染症に働き、また抗腫瘍効果も保持できるとされています。B細胞の除去は移植後のリンパ増殖性疾患の発症を抑制する目的があります。

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

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※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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