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国内最大の新型コロナウイルス感染症レジストリを使って デルタ株流行期の"小児コロナ患者"の実態を解明

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区、理事長:五十嵐隆)感染症科の庄司健介(医長)は、国立国際医療研究センター(略称:NCGM、所在地:東京都新宿区、理事長:國土典宏)の秋山尚之主任研究員らの研究チームと合同で、デルタ株流行期における小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を、デルタ株が流行する以前と比較検討しました。これは、国立国際医療研究センターが運営している国内最大の新型コロナウイルス感染症のレジストリ「COVID-19 Registry Japan (COVIREGI-JP)」(主任研究者:大曲貴夫)を利用したもので、日本における小児COVID-19患者の特徴を、デルタ株流行期とそれ以前とで比較した研究は、今回が初めてです。

本研究は、2020年10月~2021年5月までをデルタ株以前、2021年8月~10月までをデルタ株流行期とし、それぞれの期間に登録された18歳未満の小児新型コロナウイルス感染症入院例1,299人(デルタ株以前:950人、デルタ株流行期:349人)を対象に実施しました。その結果、デルタ株流行期は、デルタ株以前に比べて患者年齢が低いこと(中央値 7歳 vs 10歳)、基礎疾患のある患者の割合が高いこと(12.6% vs 7.4%)、集中治療室(ICU)入院を要した患者が多いこと(1.4% vs 0.1%)などが明らかとなりました。これらの分析結果は、小児の新型コロナウイルス感染症患者の絶対数が増えると集中治療を要する患者も増えることを示唆しており、オミクロン株が爆発的に流行している現在において、また今後日本の小児に対する新型コロナウイルス感染症対応を考える上で貴重な情報といえます。

2つのナショナルセンターが連携して取り組んだ本研究結果は、日本感染症学会/日本化学療法学会の英文機関誌であるJournal of Infection and Chemotherapy (JIC)に公開されました。

※本研究は、オミクロン株がまだ存在しなかった時期に実施されているため、その影響は検討できていないこと、患者それぞれからデルタ株が証明されているわけではなく、あくまでデルタ株が国内の主流であった時期の患者とそれ以前の患者を比較した研究であること、それぞれの期間で入院適応が異なっている可能性があり、入院率の違いの解釈には注意が必要であること、COVIREGI-JPに登録された患者は日本全体の患者の一部であり、すべての新型コロナウイルス感染症患者が登録されているわけではないことなどに注意が必要です。

【表1:重症度の比較(全患者)】

プレスリリースのポイント

  • 2020年10月~2021年5月(デルタ株以前)と比較し、2021年8月~10月(デルタ株流行期)に登録された小児の新型コロナウイルス感染症患者では集中治療室に入院した患者が多くみられました(デルタ株以前0.1%、デルタ株流行期1.4%)
  • ICUに入院した患者の半数(3/6名)に基礎疾患(喘息または肥満など)を認めました。
  • それぞれの時期で入院適応が異なっていた可能性があり、集中治療室入院率の違いの解釈には注意が必要ですが、少なくとも小児の新型コロナウイルス感染症患者が増えると、集中治療を要するような患者も増えてしまうということはいえるかと思われます。
  • 一方で、COVIREGI-JPに登録された患者の中にはデルタ株流行期を含め、人工呼吸管理を要す患者、死亡した患者は認めませんでした。
  • 本研究結果は今後の小児への新型コロウイルス感染症の対応を考えていく上で貴重な基礎資料となると考えられます。
【表2:患者背景】

今後の展望・発表者のコメント

今回の研究により、日本の小児新型コロナウイルス感染症の入院症例の実態がデルタ株流行の前後でどのように変化したのかが明らかになりました。今後、小児の入院適応やワクチン接種の対象などを考えていく上で、本研究の結果がその基礎データとして利用されることが期待されます。このように、その時に流行している株の違いや、その時の社会情勢、医療環境により新型コロナウイルス感染症入院例の疫学的、臨床的特徴が異なる可能性があるため、オミクロン株の与える影響など、引き続き検討していく必要があると考えられます。

本研究結果からは、小児の新型コロナウイルス感染症患者の絶対数が増えると、集中治療を要するような小児患者も増えることが予想され、オミクロン株が流行している現在においても、小児患者について注意深く診ていくことが求められます。

発表論文情報

和文タイトル:
「小児COVID-19入院例の臨床的特徴についてのデルタ株流行前後での比較:COVID-19 Registry Japanからの報告」
英文タイトル:
「Comparison of clinical characteristics and outcomes of COVID-19 in children before and after the emergence of Delta variant of concern in Japan」
著者名:
庄司健介1), 秋山尚之2), 都築慎也2,3), 松永展明2), 浅井雄介2), 鈴木節子3), 岩元典子3), 船木孝則1), 大曲貴夫2,3)
所属:
1) 国立成育医療研究センター感染症科
2) 国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンター
3) 国立国際医療研究センター国際感染症センター
掲載紙:
Journal of Infection and Chemotherapy
URL:
https://www.jiac-j.com/article/S1341-321X(22)00022-8/fulltext
DOI:
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2022.01.009
COVID-19 Registry Japan (COVIREGI-JP)

国立国際医療研究センター大曲貴夫(国際感染症センター長)が主任研究者を務め、新型コロナウイルス感染症において重症化する患者の特徴や経過など、様々な点について明らかにすることを目的とした研究です。患者の生年月日や入退院日などの「基本情報」、症状や意識レベル、酸素療法の状況といった「臨床情報」など、様々な情報を集めており、新型コロナウイルス感染症関連のデータベース(レジストリ)としては国内最大のものです。

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時


※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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