国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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ビタミンAの代謝物質であるレチノイン酸が、2型自然リンパ球を制御性自然リンパ球に変えることを発見

国立成育医療研究センター研究所、免疫アレルギー・感染研究部の森田英明アレルギー研究室長、松本健治部長らの研究グループは、Swiss Institute of Allergy and Asthma ResearchのProf. Cezmi Akdisらとの共同研究により、ビタミンAの代謝物質であるレチノイン酸が、アレルギー性炎症の増悪に関与する2型自然リンパ球を、炎症抑制機能を持つ制御性自然リンパ球に変換することを発見しました。この研究成果は、世界で最も権威のある臨床医学雑誌の一つで、米国アレルギー喘息免疫学会の公式機関誌であるJournal of Allergy and Clinical Immunology (impact factor 13.25)より2019年1月23日に原稿体のまま速報されます。

【発表論文情報】

  • 著者:Hideaki Morita MD, PhD,1,2,3* Terufumi Kubo MD, PhD.,1,2 Beate Rückert Sci Tec,1 Avinash Ravindran Msc,4 Michael B. Soyka MD,5 Arturo Ottavio Rinaldi Msc,1 Kazunari Sugita MD, PhD,1,2 Marcin Wawrzyniak PhD,1,2 Paulina Wawrzyniak PhD,1,2 Kenichiro Motomura MD, PhD,3 Masato Tamari MD, PhD,3 Keisuke Orimo MD,3 Naoko Okada PhD,3 Ken Arae PhD,3,6 Kyoko Saito MD,3 Can Altunbulakli PhD,1,2 Francesc Castro-Giner PhD,1,7 Ge Tan PhD,1,7 Avidan Neumann PhD,1 Katsuko Sudo PhD,8 Liam O’Mahony PhD,1,9 Kenya Honda MD, PhD,10,11, Susumu Nakae PhD,12,13, Hirohisa Saito MD, PhD,3 Jenny Mjösberg PhD,14 Gunnar Nilsson PhD,4 Kenji Matsumoto MD, PhD,3 Mübeccel Akdis MD, PhD,1,2 Cezmi A. Akdis MD,1,2*
  • 所属:1 Swiss Institute of Allergy and Asthma Research (SIAF), University of Zurich, Davos 7270, Switzerland, 2 Christine Kühne-Center for Allergy Research and Education, Davos, Switzerland, 3 Department of Allergy and Clinical Immunology, National Research Institute for Child Health and Development, Tokyo, Japan, 4 Immunology and Allergy, Department of Medicine, Karolinska Institutet and Karolinska University Hospital, Stockholm, Sweden, 5 Department of Otorhinolaryngology, Head- and Neck Surgery, University Hospital Zurich and University of Zurich, Zurich, Switzerland, 6 Department of Immunology, Faculty of Health Science, Kyorin University, Tokyo, Japan, 7 Functional Genomics Center Zurich, ETH Zurich/University of Zurich, Zurich, Switzerland, 8 Animal Research Center, Tokyo Medical University, Tokyo, Japan, 9 Department of Medicine and Microbiology, APC Microbiome Ireland, University College Cork, Cork, Ireland, 10 Department of Microbiology and Immunology, Keio University School of Medicine, Tokyo, Japan, 11 RIKEN Center for Integrative Medical Science (IMS), Kanagawa, Japan, 12 Laboratory of Systems Biology, Center for Experimental Medicine and Systems Biology, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo, Tokyo, Japan, 13 Precursory Research for Embryonic Science and Technology (PRESTO), Japan Science and Technology Agency, Saitama, Japan, 14 Center for Infectious Medicine, Department of Medicine, Karolinska University Hospital Huddinge, Karolinska Institutet, Stockholm, Sweden
  • 題名:Induction of human regulatory innate lymphoid cells from group 2 innate lymphoid cells by retinoic acid
  • 掲載誌:The Journal of Allergy and Clinical Immunology (Official Journal of American Association of Allergy, Asthma and Immunology)

プレスリリースのポイント

  • ビタミンAの代謝物質であるレチノイン酸が、アレルギー性炎症の増悪に関与する2型自然リンパ球を、炎症抑制機能の有する制御性自然リンパ球に変換することを明らかにしました。
  • この発見は、気管支喘息に対する新たな治療法の開発につながる可能性があります。

背景

一旦発症したアレルギー疾患を完全に治すことができる治療は現時点では存在しないため、詳細な病態の理解に基づく新たな治療法の開発が期待されています。特に慢性的な炎症が病態の主体とされている気管支喘息やアトピー性皮膚炎では、慢性炎症を抑制する機構の解明が必須であると考えられています。近年、理化学研究所の小安氏、茂呂氏らによって新たに発見された2型自然リンパ球は、アレルギー疾患における炎症の増悪に深く関与していることが明らかにされ注目を集めています。そこで本研究では、アレルギーの新たな治療法開発を目的として、2型自然リンパ球の活性を抑制する方法の開発を目指しました。


研究成果

ヒト2型自然リンパ球をレチノイン酸とIL-33で刺激すると、抑制性のサイトカインであるIL-10を産生する制御性自然リンパ球に変化することが分かりました。このIL-10産生性制御性自然リンパ球は、IL-10を介して2型自然リンパ球やT細胞の増殖を抑制することも判明しました。更に、気道上皮細胞が、2型自然リンパ球が産生するIL-13の刺激を受けて、より活性の強いレチノイン酸をビタミンAから合成することも明らかにしました。

以上の結果から、2型自然リンパ球は、IL-5やIL-13等の2型サイトカインの産生を通して、喘息様の気道炎症の増悪に関与し、その一方でIL-13により上皮細胞で合成されたレチノイン酸を介して、自身を制御性自然リンパ球へと変換し、過剰な炎症を制御するという性質を持っていることを明らかになりました(下図)。

レチノイン酸自体は急性前骨髄球性白血病という特殊な白血病の治療薬として既に承認されています。レチノイン酸は様々な細胞の分化を誘導し、催奇形性などが報告されている物質ですので、アレルギー疾患に対してそのまま臨床応用することは困難ですが、今後はこのメカニズムを活用した新たな治療法の開発が期待されます。

本件に関する連絡先

国立成育医療研究センター(代表)

03-3416-0181

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時


取材に関すること: 企画戦略局 広報企画室