国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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「胎児虐待」について、児と母を守るため診療ガイドで対応に言及

日本周産期メンタルヘルス学会の診療ガイド「周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017」

国立成育医療研究センターこころの診療部の立花良之医長らの研究グループは、日本周産期メンタルヘルス学会の診療ガイド「周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017」で胎児虐待について、周産期のメンタルヘルス関連の診療ガイドでは世界ではじめて、妊婦や児への支援についての対応に言及しました。
「周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017」は、平成28年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)「妊産褥婦健康診査の評価および自治体との連携の在り方に関する研究」研究班(研究代表者 立花良之)と日本周産期メンタルヘルス学会が共同で作成しました。
「胎児虐待」について言及されているクリニカルクエスチョン(CQ)は2017年7月4日日本周産期メンタルヘルス学会ホームページ上で発表します。

プレスリリースのポイント

  • 胎児虐待は定義や対応が未整備のため、胎児虐待があっても妊婦に適切な対応やサポートが行われず、胎児への深刻な影響が放置されることが少なくないのが現状です。「周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017」のクリニカル・クエスチョン(CQ)「CQ6 メンタルヘルス不調で支援を要する妊産褥婦についての、医療・保健・福祉の情報共有及び同意取得・虐待や養育不全の場合の連絡の仕方は?」のAnswerにおいて、推奨4で「児童虐待・養育不全・胎児虐待が疑われた場合は、児童相談所・子ども家庭支援センター・保健機関等と連携する」として、胎児虐待への対応に言及しました。同診療ガイドの医療機関が児童相談所や子ども家庭支援センターと連絡する際のテンプレートとして、「児童虐待・胎児虐待(防止)連絡票」を作成しました。
  • 今回の日本周産期メンタルヘルス学会の「周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017」は、日本において(世界でも)あいまいであった胎児虐待への対応について、踏み込んで言及したものといえます。日本の刑法上、「胎児」は「人」ではありません。そのため、胎児虐待に関連する法律がありません。しかし、刑法上胎児が「人」でなく胎児虐待に関連する法律がなくとも、胎児虐待を防止し対応していかねばなりません。
  • 診療ガイドでは、「胎児虐待」が行われている(疑われた)場合、医療機関から胎児虐待についての連絡をを行い、医療・保健・福祉が積極的な介入を行い、胎児の生命や成長・発達の安全を確保するように記載しています。また、その際の連絡は、告発としてではなく、母子への積極的な支援を目的にその一環として行うことが重要であると強調しています。

背景・目的

胎児虐待とは、胎児の生命をおびやかしたり深刻な健康被害をもたらしたりするおそれのある行為を指します。胎児虐待があっても、妊婦に適切な対応やサポートが行われず、胎児への深刻な影響が放置されることが少なくないのが現状です。
これまで日本で「胎児虐待」対応への議論が進まなかった理由として、日本の刑法上の通説・判例は人の始期について一部露出説(胎児の体の一部が母体から体外へ出た段階で刑法の対象とするところの「人」となる)を取っています。胎児虐待により胎児が胎内で死亡するか自然の分娩期に先立って人為的に娩出されれば、堕胎罪(刑法212条)の適応になります。日本で、これまで「胎児虐待」が行政機関や臨床現場でしっかりと議論されてこなかった大きな原因の一つは、胎児虐待の法的な定義がないことにあると考えられます。一方で、海外ではアメリカのSouth Dakota州やWisconsin州のように、胎児を人として考え、胎児虐待を「児童虐待」に含まれるものとみなし刑事罰の対象としている地域もあります。
児童福祉法が平成28年10月より一部改正され(平成28年法律第63号)、「支援を要する妊婦等を把握した医療機関や学校等は、その旨を市町村に情報提供するよう努めるものとする。」と明記された(児童福祉法第21条の10の5)。これにより、医療機関から自治体の保健・福祉に情報提供することが努力義務となり、本人の同意がなくても特定妊婦や産後に養育不全や児童虐待が懸念される場合には市町村の情報提供が可能であるとされています(雇児総発1216第2号・雇児母発1216第2号)。胎児虐待は、まさに、支援のために関係機関が情報共有して対応すべき対象であります。
胎児虐待やその疑いがあれば関係機関で連携して、妊婦をサポートし胎児を守っていくために、診療ガイドで胎児虐待への対応に言及することで、母子保健における胎児虐待対応を整備することを目的にしました。

成果

日本周産期メンタルヘルス学会の診療ガイド「周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017」において、「CQ6.メンタルヘルス不調で支援を要する妊産褥婦についての、医療・保健・福祉の情報共有及び同意取得・虐待や養育不全の場合の連絡の仕方は?」のAnswerとして、「児童虐待・胎児虐待が疑われた場合は、医療機関から保健・福祉機関に情報提供を行い、医療・保健・福祉機関が連携して、母子の支援を行う。」が明記されました。
また、下図のような「児童虐待・胎児虐待(防止)連絡票」が掲載されました。周産期メンタルヘルス関連の診療ガイドでは世界で初めて、胎児虐待への対応について踏み込んで言及しています。
taijiの画像

今後の展望・コメント

「周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017」では、これまで行政などで明確に議論されてこなかった胎児虐待への対応について言及されました。日本においては、胎児虐待についての法的定義が未整備であり、胎児虐待の概念自体についても議論が未成熟であります。今後、様々な関係領域が十分に議論を行い、法的整備や対応の在り方について検討していく必要があると考えます。

発表論文情報

  • 立花良之、竹田省、鈴木俊治、岡野禎治、大田えりか、葛西圭子、小泉典章、瀧本秀美
  • 「平成28年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)総合研究報告書『妊産褥婦健康診査の評価および自治体との連携の在り方に関する研究』」
  • 日本周産期メンタルヘルス学会 「周産期メンタルヘルスコンセンサスガイド2017」 CQ(クリニカル・クエスチョン)6
  • 日本子ども虐待防止医学会・学術集会(2017年8月5日・6日)でも発表予定

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

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