国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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10万人の全国分娩登録データベースから『日本人の適切な体重増加量』を算定

やせ気味の女性は妊娠中に体重を増やした方がいい可能性

国立成育医療研究センター社会医学研究部の森崎菜穂室長らは、日本産科婦人科学会の10万人を超える分娩登録データベースを使用し、妊娠中に注意すべき合併症リスクが最も低くなる『適切な体重増加量』を、日本で初めて計算した。その結果、現在厚生労働省が推奨している妊娠中の体重増加量は、やせ型(BMI<18.5)の女性には低すぎる可能性があることが示された。
この研究成果は2017年5月31日に権威ある医学系関連の雑誌として知られるJournal of Epidemiologyより発表された。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構による、「低出生体重児の発症機序及び長期予後の解明に関する研究」(代表:森臨太郎)の一部として行われた。

プレスリリースのポイント

    • 日本人の平均出生体重が低く、低出生体重児出生率が高いことが大きな社会的問題となっている。低出生体重児が多い原因には、諸外国と比べて日本では妊婦により厳しい体重制限が推奨されていることが影響している可能性が指摘されている。しかし、「では日本人は妊娠中にどれくらい体重を増やすのが最もよいのか?」という研究はされてこなかった。
    • 今回、日本産科婦人科学会による大規模なデータベースを用いて、妊娠中に注意すべき合併症リスクが最も低くなる『適切な体重増加量』を体格別に算出した。その結果、BMI 18.5未満のやせの妊婦においては、現在厚生労働省が推奨している妊娠中体重増加推奨値(9-12kg)より高い体重増加量(12.2kg)の方が良いことが示された。
    • 現在推奨されている体重増加量は、やせ型の女性には低すぎる可能性がある。本研究から得られた適切な体重増加量を推奨することで、低出生体重児率を減少させられるかを今後検討したい。
    weight4の画像
    図1:今回の研究から提唱される適切な妊娠中の体重増加量と、現在の妊娠中の体重増加の推奨量

    背景・目的

    日本では1970年代後半に最低5.1%であった低出生体重児出生率が2007年には9.5%にまでなり、現在も高止まり状態が続いている。低出生体重児増加、そして平均出生体重の低下が公衆衛生学的に問題視されて久しい。近年、低出生体重児増加の原因は、妊娠年齢の上昇や双胎の増加などではなく、やせている女性の増加や、やせている女性の妊娠体重増加量が少ないことに起因しているのではないかという報告が複数出ている。(Morisaki et al, PPE 2016. Sep;30(5):473-8; Morisaki et al, Scientific Reports 2017:46657; Sugai et al, Scientific Reports 2017;46681)
    妊娠中の体重増加量の推量量としては、米国医学研究所(The Institute of Medicine 、IOM) のガイドライン (最新改訂2009年)は、数々のエビデンスに基づいて作成されているため世界各地で最も広く活用されている。一方、日本はIOMのガイドラインを採用せず、1995年に初版、2009年に改訂版の日本独自のガイドラインを策定してきた。これらのガイドラインはIOMのガイドラインより厳格であり、近年の低出生体重児増加に寄与したのではないかとの研究報告もある。
    しかし、残念ながら、日本のガイドラインは、米国、デンマーク、シンガポール等で行われてきたような妊娠中体重増加量と複数の有害事象との関係を同時に考慮する大規模疫学研究は行われておらず、このガイドラインを改訂するためのエビデンスが欠けていた。このため、本研究では、全国的な産科データベースを用い、日本人女性における適切な体重増加量を算出した。

    研究手法・成果

    2005-2011年の周産期登録データベースに登録された初産婦104,070名を対象として、妊娠前BMI別に、妊娠中体重増加量と4つの妊娠転帰(出生体重、分娩方法、早産、妊娠中合併症)との関係を調べた。
    さらに、適切な体重増加量というのは、体重増加過多と体重増加不足にそれぞれ関連する有害事象を回避するトレードオフによって決定されるため、産婦人科医と新生児科医から見た4つの妊娠転帰の重要性を重み付けに反映し、最終的に『適切な体重増加量』を計算した。
    この結果、体重増加が多い妊婦のほうが、出生体重が大きく、早産率は低く、自然分娩の割合は僅かに低く、妊娠中の合併症の割合が僅かに多かった。4つの妊娠転帰の重要性を重み付けに反映した結果、妊娠前BMI 17-18.4, 18.5-19.9, 20-22.9, 23-24.9, 25-27.4 (kg/m2)のそれぞれの群において、適切な体重増加量は12.2kg、10.9kg、9.9kg、7.7kg、4.3kgであった。

    今後の展望

    本研究で私たちは、日本で初めて、10万人を超えるデータを扱った大規模疫学研究から、妊娠前の体格別に適切な体重増加量を計算した。そして、現在政府が推奨している体重増加量はBMI 18.5未満の妊婦においては低すぎる可能性があることを示した。
    本研究から得られた、BMI別の適切な体重増加を推奨することで日本の低出生体重児率を減少させることができるかを今後検討したい。

    *このプレスリリースは、リスク因子に関する疫学研究成果です。

    発表論文情報

    • 著者:森崎菜穂、永田知映、左合治彦、齋藤滋
    • 題名:日本人にとっての適切な妊娠中体重増加量の算出.
    • 掲載誌:産婦人科の実際2017. 4月号;66(6):522-526

    本件に関する取材連絡先

    国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

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    koho@ncchd.go.jp

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