国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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母子健康手帳の配布が子どもの発達遅延の予防に貢献

モンゴルにおける母子健康手帳の効果を検証するための無作為化比較試験より

国立成育医療研究センター政策科学研究部の森臨太郎部長らの研究グループは、母子健康手帳を妊娠期間中に配布することと、子どもの認知機能の発達遅延のリスクとの間には関連があることを明らかにしました。2010年から当研究グループがモンゴル国ボルガン県にて実施してきた、母子健康手帳の効果を検証するためのクラスター無作為化比較試験の調査データを解析し、妊娠期間中に母子健康手帳を受け取った母親の子どもの方が、産後に受け取った母親の子どもよりも、産後3年時における認知機能の発達遅延のリスクが低いことを明らかにしました。
この研究成果は2017年5月15日、権威ある産科系雑誌であるActa Paediatrica誌より発表されます。

▸ 発表論文情報

  • 著者:Amarjargal Dagvadorj, Takeo Nakayama, Eisuke Inoue, Narantuya Sumya, and Rintaro Mori.
  • 題名:Cluster randomised controlled trial showed that maternal and child health handbook was effective for child cognitive development in Mongolia
  • 掲載誌:Acta Paediatrica

プレスリリースのポイント

  • モンゴル国において、母子健康手帳の効果を検証するために実施してきた無作為化比較試験により、母子健康手帳の早期の配布が子どもの認知機能の発達遅滞の発生リスクを約70%、低減させることができる予防的な効果を示す結果が得られました。
  • 母子健康手帳は日本のみならず、多くの国で注目されてきていますが、その配布に関する科学的根拠を新たに示すことができたと言えます。
  • 親の語彙レベルが子どもの認知機能の発達に良い影響を与えることが知られていることように、母子健康手帳を積極的に活用している母親は、子どもの発達に関心を高めるとともに、子どもとより関わるように努めるからではないかと推察しています。
mongoliaの画像

図1:妊娠期に母子手帳を受け取った群は、認知機能の発達遅滞のリスクが32%に減少

背景・目的

子どもの発達遅滞は学業への影響や貧困など、その子どもの人生に大きな影響を及ぼすことが知られており、効果的な予防方法の開発が急務とされていました。そうした予防介入方法を開発するうえで、費用対効果に優れ、多くの人に普及させることができる方法であることが重要であると考えられています。我々は日本の母子健康手帳に着目し、モンゴル国において、母子健康手帳を妊娠期に配布することと、産後3年時の子どもの発達遅滞との関連について検証しました。

研究手法と成果

研究手法
今回の解析では、研究グループがモンゴル国ボルガン県にて2010年3月から8月に出産をした女性のうち、研究参加に同意が得られた者全員(501人)を対象にしたクラスター無作為化比較試験のデータを用いて検証しました。この研究では、ボルガン県にある18の地区(クラスター)を無作為に、妊娠期間中に母子健康手帳を配布するグループと、産後1か月時の健診の際に配布するグループに分け、その後の両群の対象者の違いを観察する、というもっとも適切な科学的根拠が得られる研究手法を用いています。
産後3年時の調査は、2013年に現地の保健医療従事者の協力を得て実施されました。2010年時に研究に参加した501人のうち、386人(77%)から回答を得ることができました。発達遅滞の評価には、同様に当研究部が2015年に開発をした、モンゴルの子ども向けの発達検査(Mongolian Rapid Baby Scale: MORBAS)を用いました。このMORBASは紙と筆記用具があれば、特別な検査機器がなくても子どもの発達が評価できるように、モンゴルの社会の文脈や子育ての文化などを考慮して作成されています。
研究結果
母子健康手帳を妊娠期に配った群と、産後1か月時に配った群では、母親の年齢や学歴、家庭の経済状況、出生時の母子の健康状態などの、考えられる交絡因子の影響を除外しても、MORBASで認知機能の発達遅滞リスクありと判定される割合が有意に低減する関連が認められました。

今後の展望・コメント

本研究で私たちは、母子健康手帳が単に記録媒体として活用できるだけでなく、子どもの健康に良い影響を与えることができる可能性を示すことができました。現在、母子健康手帳はモンゴルやインドネシア、フィリピン、ベトナムなどのアジアのみならず、パレスチナやアフガニスタンなどの紛争により保健医療のインフラが乏しい地域、ケニア、ブルンジ、ガーナ、アンゴラなどのアフリカ諸国でも導入・活用されています。
本研究によって、母子健康手帳を配布することの効果が具体的に示されたことは、母子健康手帳の普及を促進させるための重要な根拠になることが期待されます。日本発の母子健康手帳が発展途上国を中心とする多くの母子の健康状態を向上させることができることを示す、国際貢献の役割を高める成果の一つになると考えられます。

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

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