国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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ヒト性分化疾患の原因となる新たな遺伝子変異を発見

原因不明だった性分化疾患の発症機構解明に貢献

国立成育医療センター分子内分泌研究部の五十嵐麻希研究員・宮戸真美研究員・深見真紀部長とシステム発生・再生医学研究部の高田修治部長の研究グループは、他の研究者との共同研究の成果として、ヒト性分化疾患の原因となる新たな遺伝子変異を見出しました。

本プレスリリースのポイント

  • 性分化疾患は、遺伝的な性と性腺(卵巣と精巣)や外性器の状態が一致しない状態です。これは希少難病の一つに位置付けられます。性分化疾患患者さんの中には原因がわからない方が多くおられます。
  • 今回、遺伝的には女性であるにも関わらず精巣を持っている患者さん2名で、NR5A1という遺伝子に同じ変化(遺伝子変異)がみつかりました。この遺伝子変異は、女性胎児における正常な卵巣の発育を阻害し、精巣へと変化させる効果があると推測されます。
  • 本研究によって、性分化疾患の新たな原因が明らかとなりました。これまで原因がわかっていなかった性分化疾患患者さんの一部には、この変異がある可能性があります。

背景

通常、男性はX染色体とY染色体と1本ずつ持っており、女性はX染色体を2本もっています。胎児がY染色体(実際にはその上に載っているSRYという遺伝子)をもっている場合には精巣が形成され、ない場合は卵巣が形成されます。しかし、Y染色体をもっていない胎児(遺伝的には女性の胎児)において、卵巣ではなく精巣が形成される先天性疾患が知られています。(「46,XX精巣性性分化疾患」といいます。)このような患者さんでは多くの場合、SRY遺伝子を含むY染色体の一部が他の染色体上に移動しています。Y染色体の異常がない症例の発症原因は、ほとんど分かっていません。
NR5A1遺伝子は、すでに精巣形成と卵巣機能維持に関与していることが知られていました。しかし、46,XX精巣性/卵精巣性性分化疾患の原因としては報告されていませんでした。
プレリリース図の画像

研究手法と成果

私たちは、原因不明の46,XX精巣性性分化疾患患者さん8例を対象として、性腺の発達に関与することが報告されている遺伝子を解析しました。その結果、血縁関係のない2名でNR5A1遺伝子の全く同じ変異がみつかりました。この変化は、NR5A1タンパクの92番目のアルギニンがトリプトファンという別のアミノ酸に変わるものです(p.R92W)。このNR5A1遺伝子変異は、これまで一般集団では見つかっていません。
次に、この遺伝子変化の効果をコンピュータ解析や細胞実験で調べました。その結果、この変化がNR5A1タンパクの形や機能に影響を与えることが確認されました。
最後に、上記の現象がマウスにも起こるかを調べるために、同じ変異を導入したマウスを作製しました。しかし、マウスでは卵巣が精巣に変化しませんでした。このことから、NR5A1変異による精巣形成はヒト特異的な現象であることが判明しました。
以上の結果から、NR5A1がヒト46,XX精巣性性分化疾患の原因遺伝子であることが明らかとなりました。

今後の展望・コメント

これまで原因不明であった46,XX精巣性性分化疾患患者さんを対象として、この遺伝子変異の有無を調べる予定です。本研究の成果は、ヒト固有の性分化機構の解明につながると期待されます。

論文名および著者

  • 論文名:Identical NR5A1 Missense Mutations in Two Unrelated 46,XX Individuals with Testicular Tissues
  • 著者:Maki Igarashi, Kei Takasawa, Akiko Hakoda, Junko Kanno, Shuji Takada, Mami Miyado, Takashi Baba, Ken-ichirou Morohashi, Toshihiro Tajima, Kenichiro Hata, Kazuhiko Nakabayashi, Yoichi Matsubara, Ryohei Sekido, Tsutomu Ogata, Kenichi Kashimada, Maki Fukami
  • 掲載雑誌:Human Mutation
    • 論文名:The p.R92W variant of NR5A1/Nr5a1 induces testicular development of 46,XX gonads in humans, but not in mice: phenotypic comparison of human patients and mutation-induced mice.
    • 著者:Mami Miyado , Masafumi Inui , Maki Igarashi , Yuko Katoh-Fukui , Kei Takasawa , Akiko Hakoda , Junko Kanno , Kenichi Kashimada , Kenji Miyado , Moe Tamano, Tsutomu Ogata, Shuji Takada, Maki Fukami
    • 掲載雑誌:Biology of Sex Differences

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