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日本の母子健康手帳が妊婦と新生児の健康に寄与することを初めて科学的に検証

国立成育医療研究センターの森臨太郎政策科学研究部長のグループは、モンゴル国保健省と共同してモンゴル国ボルガン県で日本の母子健康手帳を試験的に導入して、妊婦健診の受診率や合併症の発見率が向上し、妊婦や新生児の健康に寄与することを科学的に証明しました。

原論文情報

本プレスリリースのポイント

  • モンゴル国保健省と共同して、同国で母子健康手帳の導入によるクラスターランダム化比較試験を実施。
  • 母子手帳により妊婦健診の受診率や合併症の発見率を向上させ、受動喫煙を軽減することを証明。
  • 識字率が高いモンゴル国であっても家族の社会経済状況が低いことで、この効果は薄れる。

概要

世界では年間約30万人の妊産婦と約260万人の新生児が亡くなっていると推測され、途上国では必要な医療が一人ひとりの妊産婦や新生児に届かないことが大きな課題となっています。そのため、母子健康手帳が自分たちや家族の健康に関する自己認識を高め、妊婦健診の受診率を高めることで解決できる可能性があります。

モンゴル国の妊産婦死亡率は10万出生あたり89.6(日本は4.0)、新生児死亡率は1000出生あたり14(日本は0.8)で、近年改善は認められるものの、妊婦健診受診率の向上による医療の提供は喫緊の課題となっています。モンゴル国の識字率は97.5%と高いことから、母子健康手帳による効果が期待できる国の一つと考えられました。

モンゴル国保健省の要請を受け、日本の手帳をもとに、モンゴル国版母子健康手帳を作成しました。2009年から2010年の間、モンゴル国ボルガン県の村を無作為に半分に分け、半分の村では妊娠がわかった女性に母子健康手帳の使い方を指導して配布し、残りの村では9か月の研究期間終了後に配布し、健康状況を比較しました。

規定数の妊婦健診(モンゴルでは6回)を受けた妊産婦数は、母子健康手帳の配布を受けた村では82%で、配布されなかった村では71%、母子健康手帳を受け取った妊産婦では89%、受け取らなかった妊産婦では70%と、改善が認められました。この改善は、社会経済状況がよくない家族だけで見ると、認められませんでした。妊娠中の合併症に関しては、配布を受けた村の妊産婦では2.5倍程度発見され、受動喫煙も16%減少しました。

この結果を受けて、モンゴル国では保健省の政策として、母子健康手帳の配布が既に開始されています。

【モンゴル国保健体育省副大臣からのコメント】

母子健康手帳はモンゴルではPink Bookと呼ばれ、現在では医療従事者にも子どもを持つ家庭に広く知られるようになり、母子の健康状態を記録し評価するために使われています。ボルガン県で始まり、今では全モンゴルで使用されています。母子健康手帳は子どもを持つ家庭の健康に関する関心を高め、医療従事者と家庭をつなぐこで、母子の健康向上に役立っています。

Mori R, Yonemoto N, Noma H, Ochirbat T, Barber E, et al. (2015) The Maternal and Child Health (MCH) Handbook in Mongolia: A Cluster-Randomized, Controlled Trial. PLoS ONE 10(4): e0119772. doi:10.1371/journal.pone.0119772

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

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koho@ncchd.go.jp

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