国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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14 番染色体父親性ダイソミーおよび類縁疾患(Kagami - Ogata syndrome)の臨床像の解明

国立成育医療研究センター研究所の鏡雅代室長と浜松医科大学小児科緒方勤教授のグループは、遺伝子診断に基づいた14番染色体父親性ダイソミーおよび類縁疾患の臨床像を明らかにし、Kagami-Ogata syndromeという疾患名の呼称が国際的に認められました。

プレスリリースのポイント

  • 14番染色体父親性ダイソミーおよ び類縁疾患の疾患群に対し 、UPD(14)patおよび類縁疾患やUPD(14)pat症候群という疾患名が使われてきましたが、UPD(14)patではない原因による患者(欠失やエピ変異症例)に対しUPD(14)patの入った疾患名を用いることは混乱を生じるため、新しい疾患名の必要性が議論されていました。
  • 希少疾患である14番染色体父親性ダイソミーおよび類縁疾患の詳細な臨床像を明らかとし、疾患概念を確立しました。そして、本疾患の疾患名としてKagami-Ogata syndromeが国際的に採用されました。
  • 本研究により、UPD(14)patおよび類縁疾患の診断基準、治療・フォローアップ上の注意点が明確となったことから、患者の予後の向上に貢献できると考えられます。

背景

遺伝子は、通常どちらの親に由来しても同じように働きますが、例外的に父親由来のときのみ働く遺伝子(父性発現遺伝子)や母親由来のときのみ働く遺伝子(母性発現遺伝子)が存在します。両者を総称してインプリンティング遺伝子と呼び、これらのインプリンティング遺伝子が存在する部位をインプリンティング領域と呼びます。そして、ヒト第14番染色体上にはインプリンティング領域が存在します。

14番染色体がともに父親に由来する14番染色体父親性ダイソミー(UPD(14)pat) は、14番染色体上の父性発現遺伝子の過剰発現、母性発現遺伝子の発現消失を伴い、その結果、ベル型・コートハンガー型の小胸郭、腹壁の異常、特徴的顔貌、羊水過多、胎盤過形成などを引き起こします。

われわれは、このインプリンティング領域において個体と胎盤のインプリンティングセンターとして作用するメチル化可変領域補足説明1を同定し、その欠失やエピ変異補足説明2がUPD(14)patと同様の臨床像や遺伝子発現異常を招くことを世界ではじめて報告しました。

以後、2008年のNature Genetics論文発表を含めて多数の論文を発表すると共に、国内外からUPD(14)pat臨床像を示す患者において遺伝子診断を行い、遺伝子診断された患者の詳細な臨床像を調査してきました。また、患者検体を用いた解析から14番染色体インプリンティング領域の遺伝子発現機構を明らかにしてきました。

研究手法と成果

  • 遺伝子診断されたUPD(14)patの患者23名、メチル化可変領域のエピ変異の症例5名、14番染色体インプリンティング領域を含む欠失を持つ患者6名の詳細な臨床像の調査を行いました。
  • 豊かな頬、突出した人中などの特徴的顔貌、コートハンガー型と形容される胸郭変形は診断的価値が高いと判明しました。
  • 出生時の身長、体重(特に体重)はよく保たれていました。
  • 精神運動発達遅延を全例で認めました。
  • 8.8%の患者に肝芽腫の合併を認めました。

本研究により、UPD(14)patおよび類縁疾患の診断基準、治療・フォローアップ上の注意点が明確となったことから、患者の予後の向上に貢献できると考えられます。

これまで、本疾患群に対し、UPD(14)patおよび類縁疾患やUPD(14)pat症候群という疾患名が使われてきましたが、UPD(14)patではない原因による患者(欠失やエピ変異症例)に対しUPD(14)patの入った疾患名を用いることは混乱を生じるため、新しい疾患名の必要性が議論されていました。今回、われわれの本疾患群の研究に対する貢献が認められ、Kagami-Ogata syndromeの呼称が国際的に認められました。

今後の展望

疾患発症機序や臨床像が明確となった疾患に「症候群」としての呼称が確立したことにより、臨床医への本疾患の周知が進むと期待されます。そして、多数の患者を対象とする研究が促進され、診断法や管理・治療法の向上、ならびに予後予測や重症度分類の指標が確立されると考えられます。

それらの成果は、Kagami-Ogata syndromeのみならず、インプリンティング疾患という希少疾患全体の理解に貢献すると期待されます。

論文名および著者

論文名:Comprehensive clinical studies in 34 patients with molecularly defined
UPD(14)pat and related conditions (Kagami-Ogata syndrome)

著者:Masayo Kagami, Kenji Kurosawa, Osamu Miyazaki, Fumitoshi Ishino, Kentaro Matsuoka,Tsutomu Ogatay

掲載雑誌:European Journal of Human Genetics

用語解説

  • メチル化可変領域
    CG配列のC(シトシン)につく化学的修飾であるメチル基の修飾状態が親由来で異なる領域で、インプリンティング遺伝子の発現と関連している。14番染色体インプリンティング領域では父由来メチル化可変領域はメチル化をうけ、母由来メチル化可変領域はメチル化をうけない。
  • エピ変異
    メチル化可変領域のメチル化異常。本疾患のエピ変異では、UPD(14)patを認めず、欠失も同定されていないが、メチル化可変領域が過剰メチル化を示す。

参考文献

  1. Kagami M, Nishimura G, Okuyama T, Hayashidani M, Takeuchi T, Tanaka S, Ishino F, Kurosawa K, Ogata T. Segmental and full paternal isodisomy for chromosome 14 in three patients: localization of the critical region and implication for the clinical features. American Journal of Medical Genetics A 138 (2) : 127–132, 2005.
  2. Kagami M, Sekita Y, Nishimura G, Irie M, Kato F, Okada M, Yamamori S, Kishimoto H, Nakayama M, Tanaka Y, Matsuoka K, Takahashi T, Noguchi M, Tanaka Y, Masumoto K, Utsunomiya T, Kouzan H, Komatsu Y, Ohashi H, Kurosawa K, Kosaki K, Ferguson-Smith AC, Ogata T. Deletions and epimutations affecting the human chromosome 14q32.2 imprinted region in individuals with paternal and maternal upd(14)-like phenotypes. Nature Genetics 40 (2) : 237–242, 2008.
  3. Kagami M, Yamazawa K, Matsubara K, Matsuo N, Ogata T.Placentomegaly in paternal uniparental disomy for human chromosome 14.Placenta29 (8) : 760–761, 2008.
  4. Kagami M, J O'Sullivan M, GreenAJ, Watabe Y,Arisaka O,MasawaN, MatsuokaK, Fukami M, Matsubara K, Kato F, Ferguson-SmithAC, Ogata T.The IG-DMR and the MEG3-DMR at Human Chromosome 14q32.2 : Hierarchical Interaction and Distinct Functional Propertiesas Imprinting Control Centers. PLoS Genetics 6 (6) : e1000992. 2010
  5. Kagami M, Matsuoka K, Nagai T, Yamanaka M, Kurosawa K, Suzumori N, Sekita Y, Miyado M, Matsubara K, Fuke T,Kato F, Fukami M, Ogata T. Paternal uniparental disomy 14 and related disorders: Placental gene expression analyses and histological examinations.Epigenetics 7 (10) : 1142–1150,2012.
  6. Kagami M, Kato F, Matsubara K, Sato T, Nishimura G, Ogata T. Relative frequency of underlying genetic causes for the development of UPD(14)pat-like phenotype. European Journal of Human Genetics 20 (9) : 928 –932, 2012.

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