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国立成育医療研究センターにおける肝移植300例を迎えて

肝移植300例を迎えて

国立成育医療研究センター
病院長 賀藤 均

2014年11月に、国立成育医療研究センター病院で肝移植手術を受けられた患者さんの数が300人となりました。当センターは、2005年11月18日に最初の肝移植を開始し、それ以降、着実に増加して、今日に至りました。このことは、偏に、肝移植手術を当院で受けることをご同意いただいた患者さん・ご家族の皆様の支えがあってのことです。この書面をお借りして、皆様に心より御礼申し上げます。

肝移植は、多くのスタッフによって支えられた医療です。医師、看護師だけでなく、コメディカル、事務の方々、そして、当センターに併設されている研究所スタッフなど、非常に多くの方々の協力が必須です。換言すれば、国立成育医療研究センターの総合力の結晶とも言えます。病院長として、肝移植に関わったセンターのスタッフ全員に敬意を表します。

現在、当センターの小児生体肝移植手術数は世界で最多です。しかし、私が強調したいのは、当センターで肝移植を受けられた患者さんの術前状態は他施設に比して大変重症なのにも関わらず、手術成績は世界で一番であるということです。これは、診療スタッフが、日夜、細部まで神経を費やして、刻々変化する患者さんの病態に対応していることの証左と言えます。ただ、それでなく、当センターの肝移植を最初から支え続けた臓器移植センター長である笠原群生先生の、すばらしく秀でた手術技量は勿論のこと、彼のリーダーシップ、すばらしい人柄に拠ることは、誰もが認めるところです。笠原先生には、敬意を表すると同時に、心より感謝申し上げます。

国立成育医療研究センター病院は、国内で唯一の臓器移植可能な小児専門医療機関として、移植医療のさらなる充実を目指しております。今後は、肝臓、腎臓だけでなく、小腸、心臓など他の臓器移植も視野に入れた体制整備を図っていく所存です。そのためには、患者さん・ご家族を始め、社会全体のバックアップが必要となります。
これからも、皆様のご支援を、心からお願い申し上げます。

"肝移植300例"記念に寄せて

国立成育医療研究センター看護部長
石井由美子

「肝移植が100例に達した」という知らせを、つい先日、受けたような気がします。あれからもう5年が経ちました。300例に達したことを「おめでとう」と祝う気持ちは、私が病院職員だからでしょう。移植を受けた300名のお子さん達、ご家族のみな様はどのような気持ちで迎えてくださるのでしょう。

"肝移植"について、忘れられない思い出があります。いまから20年程前、私の勤務する病棟に胆道閉鎖の赤ちゃんが入院してきました。病気について告げられた時のご家族の驚きと悲嘆、やり場のない思い、傍らにいた私にも手に取るように伝わってきました。毎日、面会にいらっしゃるご家族と、赤ちゃんの様子やこれからのことなどをお話ししていましたが、2週間程経った頃だったでしょうか、おばあちゃまが、「私たちのこれからの目標ができたんです。この子の移植のためにお金を貯めること。」とおっしゃいました。とても清々しく、うれしそうでもありました。一つの山を越え、これからの大きな山をみんなで乗り切っていこうとするご家族の姿に、私は感動を覚えました。

患者さん、ご家族に一番身近な存在である看護師は、患者さんの身の回りの世話と診療の補助という役割を担っています。環境を整え、身体を清潔にし、食事や衣服、排泄のケアなどを通して健康を支え、医師の指示のもとに検査や治療の補助を行います。一日も早く元気になってほしい、お子さんを支えるご家族を支えたい、できるだけ辛い思いをしないように、医師が最良の医療を行えるように、そんな思いで日々の看護を行っています。看護師も移植医療チームの一員として、その役割を果たしていきたいと思います。

300例までの道のりを真摯に、確実に歩んでこられた笠原先生、移植チームに敬意を表します。そして共に歩んでくださった患者のみな様、ご家族のみな様に感謝申し上げます。 これからも移植医療が多くの方々に恩恵をもたらし、400例、500例を迎える日を皆で祝えることを願っています。

国立成育医療研究センターにおける肝移植300 例を迎えて

国立成育医療研究センター病理診断部部長・臓器移植センター移植病理科
中澤温子

当センターで最初の肝移植が行われてから、早いもので今年10 年目を迎えました。移植チームの一員として10 年間ひたすら走り続けて、気付いたら300 例というのが正直な気持ちです。病理医として一番緊張するのは、移植をしてはいけない病気を見逃さないように行う移植手術直前の肝生検と、移植後に急に肝機能が悪くなった時に行う肝生検の診断です。

前者は移植手術を行うかどうかの判断材料となりますし、後者は診断によって治療方針が変わってきますから、移植外科医が患者さんを診るのと同じように、病理診断のプロとして肝生検の標本に向き合います。いずれも迅速に診断しなければなりませんが、目の前の標本から大切な情報を見落とさないように、これ以上ないくらいの集中力で顕微鏡を覗きます。腹水や黄疸などの症状、血液検査、画像診断の結果と合わせて、今患者さんの身体のなかで起こっている出来事を肝臓の組織所見から説明できるかどうかを考えます。移植後の肝生検は移植された肝臓から細い針で採取するため、標本にして見られる肝臓の組織はごくわずかですが、患者さんの状態を説明できる手がかりをここから探さなくてはなりません。

移植後の肝生検では、急性細胞性拒絶、抗体関連型拒絶、敗血症性胆管炎、肝静脈閉塞などの診断を行い、治療方針を決定します。肝生検の組織から考えた患者さんの病態と移植外科医が臨床的に考えた患者さんの状態が一致すれば、確実な診断を導けたことになります。肝移植後は免疫抑制状態で、通常とは違ったさまざまな病態が混在していますから、病理医だけで判断することは大変危険です。当センターでは、移植外科医と病理医が必ず一緒に顕微鏡を覗いてディスカッションしながら診断しています。難しい患者さんの状態を肝生検から一生懸命考えて、移植外科医の診断と一致したときには緊張が一転してすがすがしい達成感となります。

肝臓の病理診断が迅速かつ適切な治療につながるように、今後も精進していきたいと思います。

国立成育医療研究センターにおける肝移植300例を迎えて

国立成育医療研究センター放射線診療部長
野坂俊介

国立成育医療研究センターで2005年11月18日に第1例目の生体肝移植が行われてから9年になりました。この9年の節目に、当センターで肝移植手術を受けられた患者さんが300人に達したと伺い、笠原群生先生率いる臓器移植センターの偉業に心から敬意を表します。

放射線診療部と笠原群生先生とは、2005年6月に笠原先生が着任されて間もなくから、密接な交流があり、第1例目の患者さんならびに関連した画像診断検査について、笠原先生ご自身に講義をしていただいたことが今では懐かしいです。

放射線診療部は、2002年の開設当初より中央部門として診療放射線技師と放射線科医が協同し、24時間体制で院内の各診療部を支えてきました。当センターで肝移植が開始されることを耳にした時は、「全く未経験の肝移植に関連する画像診断や治療手技に対応できるのか?」と放射線診療部一同思いましたが、そのような危惧は無用でした。笠原先生のそれまでの豊富な経験ならびに高い指導力のお陰で、術前、術中、術後の超音波検査を含め、移植関連の全ての画像診断検査に放射線診療部が一丸となって参加する、という貴重な経験をさせていただくことができました。

また、肝移植後の胆管・門脈病変の経カテーテル的治療ならびに臓器移植センターに紹介される肝移植をバックアップとする門脈系疾患に対する診断的血管造影や経カテーテル的治療にも携わらせていただいています。

「肝移植」という当センターに新たに導入された治療手段を通して、センターのあらゆる職種が極めて多くのことを学んだ9年間だったと思います。放射線診療部は今後とも万全な協力体制を維持すべく不断の努力を誓います。

国立成育医療研究センターにおける肝移植300例を迎えて

国立成育医療研究センター臓器移植センター長
笠原群生

2014年11月国立成育医療研究センターの肝移植手術を受けられた患者さんが300人になりました。当センターでの肝移植医療を選択していただいた患者さん・ご家族、また平素より臓器移植を支えていただいております、当センターの医師・移植コーディネーター・看護スタッフ・薬剤部・コメディカルスタッフ・事務スタッフ・研究所スタッフの方々に大変感謝しております。

当センターの肝移植は2005年11月18日第1例目の患者さんに生体肝移植が実施されたのが最初です。その後2009年8月6日100例、2012年6月10日200例目の患者さんに肝移植を提供し、現在までの約10年間で300例の肝移植医療を患者さんに提供してまいりました。当センターの小児生体肝移植年間症例数は40~50例と世界最多で、重症患者さんが非常に多いのにも関わらず移植成績も大変良好です。国際的にも小児移植施設として広く認知されております。

臨床面でも患者さんのために革新的医療を導入して参りました。2010年8月脳死肝移植施設となり、同月29日に初の脳死分割移植を実施しました。現在まで小児脳死移植登録数・小児分割肝移植は国内最多です。また多臓器移植が必要な患者さんに肝腎移植も実施し良好な成績を残しております。2014年6月18日には本邦初の小児生体ドミノ肝移植に成功しました。生体肝移植が主体の本邦で、ドナーさんの負担を軽減するために、腹腔鏡下ドナー手術も2013年12月19日に症例を限定し導入しております。研究所と協力し2013年8月10日世界で初めて生体肝移植時の余剰肝臓を用いた肝細胞移植に成功しました。肝細胞バンクを研究所と作成し、現在はいつでも肝細胞移植ができる体制が整っております。また小腸移植の動物実験・臓器保存実験も実施しており、臨床応用に向け鋭意準備中です。

今後も困難な臓器移植手術、脳死移植、再生医療への挑戦、臓器移植に至る病気の解明等を国立成育医療研究センター一丸となって推進してまいります。少しでも多くのお子さんが、臓器移植医療で救命されるよう精進してまいります。今後とも変わらぬご支援のほどよろしくお願いいたします。

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時


※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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