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子どもの権利に関する意見・希望調査

コロナ禍において社会的弱者とされる子どもたちの権利はこれまで以上に侵害され、子どものメンタルヘルスへの中長期的な影響が危惧されています。日本が批准する子どもの権利条約、新たに制定された成育基本法などに則り、子どもの意見が反映された社会を目指すべく、Webアンケートにて子どもの権利に関する調査を実施し、国立成育医療研究センターが中心となって情報発信していくことを本研究の目的としています。

【対象】日本全国の小学校1年生から高校3年生相当の児童、生徒(6歳~18歳)

【方法と期間】Webアンケートを2022120日~2022331日に実施しました。

【集計結果】2022331日までに、112名(小学校14年生:36名、小学校56年生:16名、中学生:31名、高校生・その他:29名)から回答を得ました。

Q.「国連・子どもの権利条約」という言葉を聞いたことはありますか?

 小学生では50%以上が、「国連・子どもの権利条約」に関して知らないようでした。中学生以上についても「国連・子どもの権利条約」について知っている者が50%以下であり、聞いたことがあるがどんなものかは知らないという回答が、40%程度でした。今後もさらに子どもの権利の存在やその内容、子どもが権利の主体であるということの意味など、子どもたちに向けた積極的な啓発が必要であると思われます。

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Q.大人は子どもの意見を尊重していると思いますか?

 小学生は6割以上が、「大人が子どもたちへの意見を尊重している」と感じている一方で、中学生以上になると約6割が、「大人が子どもたちの意見を尊重していない」と感じているという結果となりました。

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Q.日本社会は子どもの意見を尊重していると思いますか?

 子どもたちは年齢が上がるにつれて、今の日本社会が子どもたちの意見を尊重していないと感じていることがわかりました。特に中学生、高校生でその割合が高いという結果でした。

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Q.Q.のアンケート結果から、子どもたちの権利に関して、子どもたち自身が自分の権利に関し理解を深める取り組み、子どもを取り巻く社会、大人が子どもの権利の内容を知り、そして尊重し、医療や福祉などの限られた場面のみならず、普段の日常生活から子どもたちの気持ちや考えを聴く仕組みを作り、その意見を反映した仕組みづくりを行っていく必要性があります。

Q. あなた自身が社会にあったらいいと思う相談場所はどんな場所ですか?

いずれの年齢層においても、「いじめ、進学や勉強などを相談できる場所」、「子ども専用のこころのことを相談できる場所」が多い結果となりました。子どもたちは、自分の心のことやいじめ、勉強のことを相談できる場所があるとよいと思っているようです。

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Q.子どもの意見が聴かれる社会の実現のために必要だと考えるものは何ですか?

全年齢を通じて、「大人が子どもの権利を学ぶこと」と答えた子どもが最も多い結果となり、子どもアドボケイトの存在も、小学5年生以降の年齢層では、約4555%が必要であると回答していました。

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Q.国の大人に子どもを大切にするために考えてほしいことは何ですか?

いずれの年齢層においても、自分の心や気持ちの問題について考えてほしいと思っている子どもが多いようです。

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Q7.そのほか、自由回答では以下のような意見が聞かれました(原文まま)。いずれも子どもからの真剣な言葉ですので、原文のまま以下にご紹介致します。

  • あなたの悩みや困りごとを解決するため、どのような変化があるといいか?という質問に対して

・なるべく怒らないように家族が変わればいいと思いました。

・本当に辛い時にいつでも誰かと話が出来る場所があればいい。どうしても家にいるのが苦しい時、逃げ場や居場所があったらいい。出来ない難しい普通を目指させないで欲しい。

・全ての子供が平等に支援を受けられるようになればいい。親の収入制限で、このままだと高校は公立にしか行けない。

・子ども選挙。あと、子どもが市議会とかで話せるようにする。

・自分自身が変わらないと周りも変わらない、周りに期待しすぎないのがいいと思う。大人が子供の悩み事に干渉しすぎない方がいい、大人には分からない悩みが子どもには沢山ある、

・誰もが気軽に相談できる環境や場所

・障害や病気があるからって差別や区別はやめてほしい。先生からは「支援級に通ってるあなたたちは、普通級の子とレベルが違うんです」って言われた。でも一緒に学んだり、遊んだりしたいんだよ。それってダメな事なの?

・大人からの固定観念、決めつけ、押し付けをやめて欲しいので、それを理解するための大人たちの学びを国民全員(特に高齢の政治家)は変わるとよいと思う

・社会福祉、支援を含めて子どもは等しく平等であることを、国には徹底して欲しいです。親の所得が低い人ほど支援が多いのは不平等と思います。親の所得が高い家の子どもは、保護者への経済的依存度が高くなり、かえって自立の妨げになるのではないかと思います。国民すべての高等教育にかかる学費が、所得制限されることなく無償化されれば、経済面・精神面において、子どもは親から自立できると思います。

・わたしのかわりに、だれかおとなが、わたしのきもちをことばにしてほしい。

・政治家がもっと子どものことを考えて欲しい

  • 子どもを大切にする社会づくりについて考える大人に伝えたいことは何か?という質問に対して

・こどもを一人の人として敬意を持って扱ってください

・私はこども家庭庁に賛成です。頑張ってください。

・警察も児童相談所もそのまま放置で助けてくれない。

・子供もそれぞれの考えがきちんとあるし、大人よりも想像力がゆたかだから、それをもっと国の未来に活かすような活動をしてほしいです!

・学校に行けなかったり遅刻しちゃう人に優しくして欲しい。安心して甘えたり、素直な自分を認めてもらえたりしたい。偏見の混じった人権学習をやめて欲しい。もっと発達障害やうつ病や思春期の子どもの心理やHSPの特徴などを理解して欲しい。学校に行くのは当たり前なんかじゃないって思って欲しい。助けを求められたらもっと真剣に聞いて欲しい。

・私たちはみなさんが思っているより物わかりはよいです。私が怖いことが聞こえたり無気力になったり(つまり抑うつ状態)になったりしたとき学校にイケイケ行うんではなくって病院に連れて行ったり助けてほしいです。

・子供には子供の世界、社会があるので大人が決めても的はずれな事が多いです。コロナで子供が犠牲になる事がよく見えました。子供の事は子供の案を入れるべきです。

・学校で配られる資料も、コンビニなどのトイレに貼られているポスターも、子供の悩みに寄り添おうとする大人の素晴らしい態度がいつも優しさを感じさせてくれます。

それでも悩みを抱える子が多いのは恥ずかしい、相談して大丈夫なのか、そもそもそのような団体の取り組みを知らない、という問題だと思います。それに対して一番の解決策だと思うのはやはり、保育園、幼稚園、小学校、中学校の先生の観察だと思います。そして、親を追い詰めることのない十分な休みと、楽しみだと思います。学校の先生方の次に身近な地域の方々の観察です。イベントごとを積極的に開催し地域の交流を深めるのは行き詰まった視野や感覚を元に戻す力があると思います。虐待がなくなりますように。そして、自分の悩みを相談できる子が増えますように。


【まとめ】

 今回はWebアンケートで112名のお子さんからとても貴重な回答をいただきました。

私たちは、あらゆる場面でありふれた日常の中から子どもの気持ちや考えを聴き、尊重し、その意見を反映した地域、社会をかたちづくっていく必要があります。そのためにはまず、子どもが権利の主体であることを知り大人が認識し、その権利を順守するための具体的なかかわりをご家庭、教育場面、自治体、国全体でより具体的に考え、行動に移していく必要があるでしょう。具体的には、各自治体における子ども条例等の制定、その制定に子どもの意見を反映させること、子どもアドボケイトの設置、子ども専用の相談窓口などの設置、エビデンスに則った政策提言(子どもシンクタンクなど)などが期待されます。



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