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胸部CT

小児胸部CT撮影の最適化のために

小児はNICU(新生児集中治療室)のポータブル撮影から始まり,年長児の呼吸器症状に対するスクリーニングまで、いまだに単純X線撮影が診断の基本です。しかしながら、単純X線撮影では診断が困難な疾患が数多くありCT検査の臨床的な有用性は高いです。以下に適応疾患を示しますが、頭部CT同様、放射線被ばく・鎮静といったリスクを考慮し、本当に必要な検査のみを行うことが重要です。特にCT検査の適応がある場合、as low as reasonably achievable(ALARA)原則に則り、放射線被ばくを最小限に抑える必要があります1 - 3)。小児胸部CT検査の適応と被ばく低減技術についてのまとめを以下の表に示します。

表1 小児胸部CT検査の適応・留意すべきCT所見・身体的特徴・被ばくのリスク・検査前準備4)

適応疾患(疑いを含む) 腫瘤精査または悪性疾患の疑い、肺炎や感染症、肺塞栓、大血管の先天的および後天的異常、気管・気管支の異常、心機能異常、間質性肺炎狹部外傷、術後の評価
留意すべき異常所見 結節や腫瘤(サイズや形態の特徴,周囲臓器との関係を読影)、含気異常や肺過膨脹、異常な液体貯留、異常な空気の存在(肺内外)、縦隔と傍血管の腫瘤、胸壁腫瘤の特徴的な所見や胸膜の異常、縦隔の軟部組織の石灰化、先天的/後天的な解剖学的異常、後天的な気管支の異常(気管支拡張症など)、外傷性変化(骨折も含む),血栓の有無
キーとなる項目 造影剤の投与
患者のポジショニング
被ばく低減の工夫
協力が得られれば呼吸停止で行う
多断面再構成画像(MPR)の構築
放射線被ばくのリスク 放射線誘発性がんは成人に比べ2から3倍脆弱
検査前準備の必要性 精神的準備(患児、両親)、鎮静の有無、造影CTの準備(総論部分の記載を参照してください)

表2 小児頭部CT検査の撮影技術4)

患者の位置 ガントリー中心に配置(自動露出機構CT-automatic exposure control: AECの効力を左右するため重要)仰臥位、上肢は挙上、固定ベルトは小児では重要
撮影範囲 肺尖部~肺底部 可能であれば呼吸停止を行う
放射線被ばく管理 小児には必要最低限の被ばく線量で検査を行うこと
可能な限りCT-AECを使用する
多相撮影、造影晩期撮影を極力避ける
線量決定に必要な画質の設定(noise index, quality reference mAs, SDなど)に注意を払うこと
再構成画像 Thin slice 画像(1㎜以下の表示)を含む、冠状断、矢状断の再構成画像は有用、ただし多くのデータが生じることになる。放射線科医と相談で決定、逐次近似画像再構成の選択
スライス厚 z軸の解像度およびノイズ低減を考慮
Scan field of view (SFOV) 体格に見合ったSFOV
管電圧 (kVp) ノイズ、コントラスト、被ばく低減を考慮慮
管電流 (mA) auto exposure controlの活用、各施設での使用しているCTのメーカーが推奨するスキャン方法を確認する。AECの設定などを相談する
以下の表3にCTDIvolの目安を示す
管球回転速度 0.5秒を推奨
ヘリカルスキャン over beaming, over ranging, pitch factorを考慮 特に隣接2部位の撮影の場合、over rangingに注意
Dose index 診断参考レベル(DRL)を意識した検査
診断参考レベル(DRL)を意識した検査  以下に米国ACRの診断参考レベル(2017,表3)5)、欧州(2018,表4)6)および最新の日本の診断参考レベル(2020,表5)7)を示す

表3 米国医学物理学会(AAPM)の推奨する小児胸部CTのCTDIvolの目安(2017年)

平均年齢 CTDIvol (mGy)
<1歳 1.9 - 2.5
1-5歳 2.4 - 3.4
5-10歳 2.7 - 4.3
10-15歳 3.5 - 5.7
15歳< 5.2 - 8.8

32㎝ファントムでの数値を示す

参考文献:The American Association of Physicists in Medicine (AAPM): Routine pediatric chest CT protocols (2017 July 21)

表4 欧州の小児胸部CT 診断参考レベル(EDRL、N°185、2018年)

体重 CTDIvol (mGy) DLP (mGycm)
5kg以下 1.4 35
5-15kg以下 1.8 50
15-30kg以下 2.7 70
30-50kg以下 3.7 115
50-80kg以下 5.4 200

32㎝ファントムでの数値を示す

参考文献:European guidelines on diagnostic reference levels for pediatric imaging (N°185) 2018

表5 最新の日本の診断参考レベル(Japan DRL 2020)小児胸部CT (年齢区分)

1歳以下 1-<5歳 5-<10歳 10-<15歳
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
6
(3)
140
(70)
8
(4)
190
(95)
13
(6.5)
350
(175)
13
(6.5)
460
(230)

16㎝ファントムの数字を示し( )は32㎝ファントムでの数値を示す

表6 最新の日本の診断参考レベル(Japan DRL 2020)小児胸部CT (体重区分)

5kg以下 5-<15kg 15-<30kg 30-<50kg
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
CTDIvol
(mGy)
DLP
(mGycm)
5
(2.5)
76
(38)
9
(4.5)
122
(61)
11
(5.5)
310
(155)
13
(6.5)
450
(225)

16㎝ファントムの数字を示し( )は32㎝ファントムでの数値を示す

参考文献:医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME); 日本の診断参考レベル (2020 年版)令和2年7月3日


参考文献

  1. The ALARA (as low as reasonably achievable) concept in pediatric CT intelligent dose reduction: multidisciplinary conference organized by the Society of Pediatric Radiology, August 18-19, 2001. Pediatr Radiol 2002; 32:217-313.

  2. 日本放射線技術学会撮影部会:X線CT撮影における標準化〜GALACTIC〜(改訂2版).京都:日本放射線技術学会,2015

  3. 小児CTガイドライン : 被ばく低減のために(ガイドライン)。 日本放射線技術学会雑誌2005;61: 493-495

  4. The American Association of Physicists in Medicine (AAPM): Routine pediatric head CT protocols (2017 July 21) https://www.aapm.org/pubs/CTProtocols/

  5. ACR-AAPM-SPR Practical parameter for diagnostic reference levels and achievable doses in medical X-ray imaging https://www.acr.org/-/media/ACR/Files/Practice-Parameters/Diag-Ref-Levels.pdf

  6. European guidelines on diagnostic reference levels for pediatric imaging (N°185) 2018 http://www.eurosafeimaging.org/wp/wp-content/uploads/2018/09/rp_185.pdf

  7. 医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME); 日本の診断参考レベル(2020 年版)令和2年7月3日

庄司 友和(東京慈恵会医科大学附属病院 放射線部)
宮嵜 治(国立成育医療研究センター 放射線診療部 診療部長)

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