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移植を受けた患者さんへの新型コロナウイルスワクチン接種に関して

コロナ渦で大変な時期をお過ごしかと存じます。今回、臓器移植センター・感染症科で移植を受けた患者さんへの新型コロナウイルスワクチン接種の考え方を作成しました。日本移植学会、国際移植学会、国際小児移植学会のガイダンスを元に、日本の現状を鑑みてセンターで考えるワクチン接種に関する考え方をご紹介させていただきました。なお移植患者に対するワクチンの情報は日々増え続けていますので、接種前には主治医を通じて、最新の情報をご確認ください。

国立成育医療研究センター 臓器移植センター長・副院長 笠原群生


移植を受けた患者さんへの新型コロナウイルスワクチン接種の考え方

  1. (現時点では12歳以上の)すべての移植待機患者および移植患者に、国内で承認されているいずれかの新型コロナウイルスワクチンを接種することを推奨します。
  2. 移植患者は、過去の新型コロナウイルス感染歴の有無にかかわらず、これまで新型コロナウイルスワクチンを接種していなければ、新型コロナウイルスワクチンを接種することを推奨します。
  3. (現時点では12歳以上の)移植患者の家族および同居者は、移植患者への感染予防の目的で、新型コロナウイルスワクチンの接種を強く推奨します。
  4. 移植後の管理を担当している主治医に、「いつ新型コロナウイルスワクチンを接種してもよいどうか」、を確認してください。
    1. いつ新型コロナウイルスワクチンを接種するのが最も良いか、についてはまだはっきりとわかっていません。
    2. 少なくとも、移植手術または拒絶反応の治療後、3ヶ月の間は新型コロナウイルスワクチンを接種することはできません。
    3. 抗CD20抗体(リツキシマブ)または抗T細胞(抗胸腺グロブリンなど) による治療を受けた患者は、ワクチン接種を3~6か月程度遅らせることがあります。
    4. 副反応と新型コロナウイルスの流行状況を鑑み、利点・欠点を比較検討したうえでワクチン接種する必要があります。抗体の持続期間については明らかになっていません。
    5. 新型コロナウイルスワクチンを他のワクチンと同時に接種いただくことはできません。他のワクチンとの接種間隔は14日間あける必要があります。
    6. もし新型コロナウイルスに感染した患者が新型コロナウイルスワクチンを接種する場合には、ワクチンの回数に関係なく、診断後コロナウイルス診断後90日以上の間隔をあけること推奨します。
  5. 新型コロナウイルスワクチンを受けても、臓器移植手術の実施、および臓器の提供には、影響ありません。
    1. 臓器および造血幹細胞移植を予定している患者さんは、移植予定日の2週間前までに新型コロナウイルスワクチンを受けることをお勧めします。
    2. 最近新型コロナウイルスワクチンを1回または2回接種した方でも臓器提供することができます。
  6. 新型コロナウイルスワクチンを受けても、マスク、手指衛生などの予防措置を引き続き遵守する必要があります。
    1. ワクチンの効果には個人差があります。
    2. 移植後の患者では、健常人に比べ、ワクチンの反応が悪いことも報告されています。
    3. ワクチンの効果がどれぐらい持続するかわかっていません。
  7. 現時点ではわかっていないことも多くあるため、下記の点は今後変更される可能性もあります。ワクチン接種前に主治医を通じて、最新の情報をご確認ください。
    1. 予防接種のために免疫抑制薬を調整することはお勧めしません。
    2. ワクチン接種後にSARS-CoV-2抗体価の測定することは推奨しません(研究目的での測定は除きます)。
    3. 新型コロナウイルスワクチンの3回目接種は限られた国でのみ承認されていますが、日本国内では承認されるまで、接種することができません。

*上記の推奨は2021年9月時点のものです。
*移植患者に対するワクチンの情報は日々増え続けています。
*接種前には主治医を通じて、最新の情報をご確認ください。


医療関係者向け解説

一般に移植患者は健常人に比べてワクチン反応が低下している可能性があるため、マスクの使用、手指の衛生、社会的離脱に焦点を当てるなど、ワクチン接種後も身を守るために現在のすべてのガイダンスを維持することが重要です。さらに、患者とその家族は、患者を保護するために利用可能なときに予防接種を受けることを強く奨励されるべきです。

ワクチンによる免疫応答が拒絶または移植片対宿主病 (GVHD) のリスク増加に関連しているかについては結論が出ていないため、注意深い観察が必要である。一方で成人の臓器移植患者741人にmRNAワクチンを接種したところ、接種後の拒絶反応を起こしたのは1人のみであり現在のところワクチンによる拒絶の惹起という理論的なリスクは非常に低いと考えられている。

mRNA SARS-CoV-2ワクチンを受けた741人のSOT患者の研究により、mRNAワクチンの安全性と有効性に関する報告がある。ファイザーワクチンとモデルナワクチンを受けた患者の数は半分ずつで、局所的な副反応は最大77%と多くの報告があるものの、2回目のワクチン投与に続いて、急性拒絶反応を発症したのはわずか1人の患者である。

いくつかの研究では、SOT患者のmRNAワクチンに対する血清学的反応を調べている。 1回のワクチン投与では、検出されにくい抗体も、2回目接種後には最大54%の患者で抗体が検出できることが実証されている。

健常人に比べ移植患者の、ワクチン接種後の抗体価の上昇は、低い可能性がある。一方で新型コロナウイルス感染症の発症を予防するのに必要な抗体価はまだ明らかになっていない。さらに、液性免疫応答が乏しい患者においても、細胞性免疫応答は、起きている可能性がある。 実際に、ワクチン接種後の抗体が陰性である患者の46%は、細胞性免疫応答を示していた。

3回目のワクチン接種の有効性はまだ不明である。ワクチンを3回接種しても、抗体の陽転化率は45%にとどまったという報告もある。

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