国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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国立成育医療研究センターについて About National Center for Child Health and Development

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妊娠中のマラチオン曝露と先天異常のリスクについて

妊娠中のマラチオン暴露と先天異常のリスクについて

人の妊娠中のマラチオン曝露について、いくつかの研究が行われています1-3)。これらの研究においては、マラチオン曝露により先天異常のリスクは上昇しませんでした。しかしその内容は農薬散布による曝露を対象としたもの等であり、母親が摂取したマラチオンの量については不明です。また、他の使用薬剤などの情報も不足しています。

動物実験の結果では、ラット、ウサギとも先天異常のリスクは上昇しませんでした4) 5)。

情報が不足しているので、マラチオン曝露によるリスクは無いと結論することは出来ませんが、マラチオンの許容安全限界以下の職業曝露または環境曝露では、催奇形成リスクを生じないと考えられます。

母体毒性を起こすような大量曝露の場合には、何らかの影響があるかもしれませんが、データが不十分です。神経行動発達への影響については研究が限られています6)。

今回の冷凍食品への混入事件におけるマラチオン曝露について

マラチオン含有の食品を摂取したかどうかがわからない状況で心配される例もあります。しかしながら、マラチオンが含有された食品では臭いが強いと報告されています。また、厚生労働省が発表している報告では、健康被害の報告例の中においてマラチオンが検出された例はありません。

こうしたことから、臭いの異常に気がつかず、マラチオン含有食品を大量に摂取している可能性は低いと考えられます。

参考情報

臭いについて

マラチオンそのものには特異臭があります。また、市販のマラソン乳剤の場合には、石油のようなにおいがあります。群馬県健康福祉部食品安全局食品安全課では、マラソン乳剤を用いた実験を行いました(http://www.pref.gunma.jp/houdou/d6300144.html)。100ppm程度の比較的低い濃度でも異常なにおいを感じたと報告されています。

実際のマラチオン検出例

株式会社アクリフーズでは、2013年11月13日に消費者からの苦情により問題を認識し、これまで25件の苦情が寄せられています。うち少なくとも9件でマラチオンが検出されています(2014.1.21 株式会社マルハニチロホールディングス 広報IR部へ電話にて確認)。

一方、厚生労働省では全国の自治体が公表した情報のとりまとめを行い、ウェブページ上で健康被害情報等の集計結果を公開しています。2014年1月20日17時までの集計された第12報(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000035191.html)が、下記のように報告されています。これまでのところ検査可能なものでマラチオンが検出された事例はありません。

  有症事例の相談件数 有症者数 検査可能なもののうち検査結果が判明した検体数
  うちマラチオンが検出されたものの数
本日分
(17時現在までの報告概要)
30 38 62 0
現時点
(1月20日17時現在)までの件数(累計)
2300 2782 926 0

厚生労働省発表のマラチオンについての情報

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000034127.html

有機リン系の農薬(殺虫剤)で、穀類、野菜、果実等に使用され、国内では農薬取締法に基づき使用が認められています(別名マラソン)。米、野菜などの作物ごとに残留基準が設定されています。 作物ごとのマラチオンの基準値

マラチオンの毒性については、国際機関(FAO/WHO合同残留農薬専門家会議)において、評価がなされています。

    マラチオン
ADI
(一日摂取許容量)
毎日一生涯食べ続けても健康に悪影響が生じないと推定される1日当たりの量 0.3mg/kg体重/日
ARfD
(急性参照用量)
24時間またはそれより短時間に経口摂取しても、健康に悪影響が生じないと推定される1日当たりの量 2mg/kg体重/日

農薬のリスク評価は、動物実験等(発がん性や妊婦・胎児等への影響に関する実験を含む)の科学的なデータをもとに行われ、その結果として、ADIやARfDが、動物とヒトとの種差や、ヒトの個体差を考慮して設定されています。

中毒症状としては、吐き気・嘔吐、下痢、腹痛、唾液分泌過多、発汗過多、軽い縮瞳などがあります。

参考: マラチオンの概要について(食品安全委員会ホームページ)

今回マラチオンが検出された食品について

回収対象となっている商品の一部で高濃度のマラチオンが検出されており、ARfD を超える可能性があります。

▼マラチオンを 15,000ppm (= 15mg/g 食品)含有する食品の場合
体重 60kg の人が、当該食品を 8g を超えて摂取すると ARfD を超過します。
2mg/kg 体重 × 60kg = 120mg (ARfDに相当するマラチオン摂取量)
120mg ÷ 15mg/g 食品= 8g →コロッケ 1 個( 22g )の場合、約1/3個

▼マラチオンを 2,200ppm 含有する食品の場合
体重 60kg の人が、当該食品を約 55g を超えて摂取すると ARfD を超過します
→ピザ 1 枚 ( 93g ) の場合、約 1/2 枚

ARfDは24時間またはそれより短時間に摂取される農薬の限度量として国際的に用いられていますが、安全側に立って設定されており、これを超えたとしても必ずしも健康に影響が生じるわけではありません。しかしながら、回収対象の商品を家庭内等で見つけた場合には、食べずに返品して下さい。

マラチオンの混入が疑われる商品について

今回のマラチオン混入事件により、株式会社アクリフーズでは商品の回収を行っています。該当する製品はマラチオンが混入している可能性があります。(http://www.aqli.co.jp/

文献

  1. Thomas D, Goldhaber M, Petitti D et al: Reproductive outcome in women exposed to malathion. Am J Epidemiol 1990;132(4):794-5.
  2. Grether JK, Harris JA, Neutra R, Kizer KW: Exposure to aerial malathion application and the occurrence of congenital anomalies and low birthweight. Am J Public Health 77:1009-1010, 1987.
  3. Eskenazi B, Harley K, Bradman A, Weltzien E, Jewell NP, Barr DB, Furlong CE, Holland NT: Association of in utero organophosphate pesticide exposure and fetal growth and length of gestation in an agricultural population. Environ Health Perspect 112(10):1116-1124, 2004.
  4. Kimbrough RD, Gaines TB: Effect of organic phosphorus compounds and alkylating agents on the rat fetus. Arch Environ Health 16(6):805 808, 1968.
    Khera KS, Whalen C, Trivett G: Teratogenicity studies on linuron, malathion, and methoxychlor in rats. Toxicol Appl Pharmacol 45(2):435 444, 1978.
    Lechner DMW, Abdel-Rahman MS: A teratology study of carbaryl and malathion mixtures in rat. J Toxicol Environ Health 14(2-3):267-278, 1984
  5. Machin MGA, McBride WG: Teratological study of malathion in the rabbit. J Toxicol Environ Health 26(3):249-253, 1989.

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