当院間移植患者家族会 ドレミファクラブ

小腸移植

1)なぜ、これまで小腸移植が一般的でなかったのか?

小腸移植は「短腸症候群」、「小腸機能不全」のお子さんで、高カロリーの点滴を行うことが難しいお子さんにとって、とても助けになる治療です。しかしながら、これまで小腸移植は広く一般的に行われてきた治療ではありません。なぜなら、小腸は他臓器よりも移植手術後に起こる拒絶反応が強いという側面があるため、術後の治療が大変難しいからです。

小腸は移植を「行う」、「行わない」にかかわらず、それ自体が免疫反応を起こしやすい特徴を持っています。小腸で起こる免疫反応自体は、私たちにとって食べた物や飲んだ物に含まれていた細菌、ウイルス、異物から身体を守るために、大変役に立ちます。

しかし小腸移植後のお子さんにとっては少し事情が変わってきます。小腸を移植されたお子さんの身体は、ドナー(提供者)の小腸を「これは自分の仲間じゃないぞ」と判断して、仲間はずれにしようとします。これは自然な免疫反応の一つですが、「拒絶反応」と呼ばれます。拒絶反応によって、小腸の粘膜にはダメージが起こり、脱落し、血管が露出してしまいます。そのため、移植した小腸を守るために、免疫の力を抑えることが求められ、お子さんに免疫抑制剤が投与されます。

ここでもう一つ、腸内細菌の問題を考えなければいけません。小腸には通常、腸内細菌がたくさんいます。当然ドナーからいただいた小腸にも、腸内細菌がたくさんいます。そして術後、拒絶反応が起こって粘膜が脱落し、露出した小腸の血管からは、腸内細菌が入ってしまいます。血流にのった腸内細菌は、お子さんの身体中にばらまかれ、悪さをすることになります。その腸内細菌からお子さんを守るためには、お子さんの細菌と闘う力(免疫)を高めなくてはいけません。

このように、免疫の力を抑えたり、高めたり、相反する状態をうまく見極めてバランスをとり、治療を進めていく必要があるため、小腸移植後の治療は大変難しいと言われるのです。こうした局面に対応できるように、私たちの施設では、これまでいろいろな研究を重ねてきました。

容易な治療ではありませんが、免疫抑制剤の進歩のおかげもあり、状況は徐々に改善しつつあります。日本では平成8年(1996)、第一例目の生体ドナーから提供された小腸による、小腸移植手術が行われました。これまでに8例の生体小腸移植が行われています。そして世界では14カ国、65施設で1,292例行われています。
(国・施設数は2005年発表のデータ 出典元:
Intestinal Transplant Registry: http://www.intestinaltransplant.org/


ページ上部に戻る

2)当施設における移植の流れ

医学的にも小腸移植の必要性が十分認められる状態であり、お子さんご本人や保護者の方が小腸移植を希望され、移植治療による生活の改善が期待される場合に、小腸移植を選択肢として考えることができます。

まず当施設の移植コーディネーターにご連絡ください(代表電話から呼び出してください)。その後、面談、検査、診察によって臓器移植センターの担当医が小腸移植の必要性と妥当性を判断します。そして第三者的な判断を得るために、国立成育医療研究センターに設置されている小腸移植適応評価委員会で協議が行われます。

最終的に、小腸移植が妥当な治療であることが判断された場合、当センターで小腸移植を受けることができます。なお、移植医療に対する信頼が得られるよう、当施設では厚生省(現在の厚生労働省)小腸移植特別委員会指針(平成10年11月24日)「小腸移植レシピエントの適応基準」を遵守しています。


3)脳死ドナーからの臓器提供

脳死となった方が生前に示されたご意思や、或いは脳死となられた方のご家族のご決断により、脳死ドナーから小腸の臓器提供をいただける場合があります。脳死ドナーからの小腸移植を希望される場合は、事前に日本臓器移植ネットワークへ移植希望を登録する必要があります。

また、生体ドナーの移植の時と同様に、当施設では適応評価委員会で移植の適応について話し合いが行われ、更に同意書にご本人、保護者の署名をいただきます。必要な検査や診察をお子さんが受けた後、はじめてネットワークの小腸移植レシピエントとして登録することができます。

ただし、登録したからといって、すぐに手術を受けられるわけではありません。脳死ドナーとして臓器提供の方が現れたら、医学的緊急度の高さを考慮して、登録者の中からマッチングが行われます。したがって脳死ドナーの臓器提供による手術を希望する場合、自分の望む時期に手術が受けられるわけではありません。手術までの過ごし方については、医師及び移植コーディネーターから詳しくご案内いたします。


ページ上部に戻る

4)生体小腸移植ドナーの条件

生体小腸移植のドナー(臓器を提供する方)になるためには、次の条件を満たすことが必要です。

①自発的に小腸の一部を提供する意志を持っていること。
(ドナーご本人が手術内容・危険性を十分理解し、誰にも強制されないことが重要です。)
②三親等以内の血縁関係を有すること。
(お子さんの場合、父母、祖父母、兄弟姉妹、おじ・おば があたります。)
③血液型が一致もしくは適合していること。
(一致例…A型のお子さんとA型の父、適合例…A型のお子さんとO型の母)
④ドナー年令は18才以上、65歳以下であること。
⑤以下の疾患の既往歴がないこと。
   肝疾患、重症糖尿病、悪性腫瘍、細菌性・真菌性・ウイルス性の全身疾患、
小腸疾患およびその既往
⑥検査所見が正常あるいは許容範囲内であること。
(血液検査やレントゲン、CT、エコー、心電図、呼吸機能、感染症)


5)インフォームドコンセント

生体ドナーからの臓器提供、或いは脳死ドナーからの臓器提供にかかわらず、小腸移植についてご本人や保護者の方々が十分理解し、不安がないように検査内容、手術内容、術後経過、医療費、使用する薬、移植以外の治療法の可能性、手術を受けるメリット、デメリット、リスクをドナーとお子さん両方に対してしっかり説明いたします。

その上で、小腸移植を希望するかどうか、うかがい、同意書にサインをいただきます。これを合計3回行います。3回行っていく上で、途中で移植を「希望しない」と気持ちが変わっても、構いません。移植以外の方法でとることのできる最善の方法で、お子さんの治療を行います。


ページ上部に戻る

6)生体小腸移植ドナーの手術

3D-CTでドナーのお腹のなかの血管の様子をしっかりと調べ、どこの血管を切除するか選びます。そして小腸と大腸の境目にあたる回盲(かいもう)部から口側に向かって30cm口側の回腸を残して120~150cmの小腸をいただきます。


7)脳死及び生体小腸移植レシピエント(お子さん)の手術

ドナーからいただいた小腸をお子さんの腸につなぎ合わせますが、両端をそのままつないで、お腹を閉じるわけではありません。

まずドナーの小腸の上端(A)はお子さんの十二指腸または空腸と縫い合わせます。そしてドナーの小腸の下端(B)はお子さんのお腹から外側に出して、ドナーの小腸の途中とお子さんの大腸の上端とを縫い合わせます(図3)。お子さんのお腹から出ているドナーの小腸の端(B)を、「人工肛門」と呼びます。

この人工肛門は、とても大切な役割があります。手術後、移植された小腸が、お子さんのお腹の中でしっかりと働いているかどうか確認するために内視鏡検査を行う必要があるのですが、お腹の外に小腸の端が出ていると、そこから内視鏡を入れて粘膜の状態を調べることができます。そして拒絶反応が起こっていないか確認することができます。


 

図3 レシピエント 小腸移植の模式図

拒絶反応を詳しく調べるためには、移植された小腸の組織の一部を採って、顕微鏡で見る必要があるのですが、小腸の端がお腹の外に出ていると、やはり検査が行いやすくなります。
人工肛門からは、小腸からどのようなものが、どれだけ分泌されているのか直接知ることができます。このように移植された小腸の下端(B)をお腹の外に人工肛門として出しておくことは、移植された小腸の回復状況や異変の発生を把握する上で、とても役に立ちます。

移植された小腸は術後、しばらくしてから拒絶反応が起こって、機能不全が起こる場合もあります(慢性拒絶反応)。そのため小腸移植後、人工肛門は術後数年たって、安定したことを十分確認してからお腹の中に戻します。


ページ上部に戻る

8)生体小腸移植 医療費

2011年9月現在、生体小腸移植にかかるドナーとレシピエント検査・治療費は、健康保険が使えません。原則自己負担となります。


9)脳死小腸移植にかかる費用

  ①日本臓器移植ネットワーク
  レシピエント登録費用

  登録の為の検査・診察費用:約300,000円
  登録料:30,000円   更新料(年1回):5,000円

 ②脳死小腸摘出にかかる費用

  臓器移植斡旋費用:100,000円
  摘出臓器搬送費:数万~5,000,000円程度
                                            (ヘリコプター利用時)

 ③小腸移植手術及び
  術前術後管理にかかる費用

  術前・術後管理及び手術費用:15,000,000円~
  退院時の移動手段費用: 
  民間救急車 数万円、ヘリコプター5,000,000円程度 
(2011年9月現在の金額目安)


センターにお支払いいただく費用につきましては、手術後に当センターの医事課より別途請求があります。なお、退院されて外来通院となった場合に服用される、免疫抑制剤、抗生物質、その他の必要な薬剤は保険適用が認められています。 注)これらは小腸移植にかかる費用をご理解いただくための例示であり、必ずしも実際の費用負担を反映するものではありません。諸事情により、金額の変更が発生する場合もあります。
詳細は病院の医事室に問合せをお願いいたします。
(当センターの小腸移植に関するホームページの内容は、説明資料「小腸移植ってどんな治療?」としてまとめています。右画像をクリックすると、PDFファイルが開きます。
閲覧の際はAdobe社のAcrobat Readerが必要です。)





ページ上部に戻る