

妊娠と妊娠糖尿病 Part2
- 妊娠糖尿病とはどのような病気ですか?
- どうして妊娠糖尿病になるのですか?
- 妊娠糖尿病と診断されました。赤ちゃんに影響がありますか?
- 妊娠糖尿病は、どのように診断するのですか?
- 自己血糖測定とはなんですか?
- 妊娠中の血糖の目標値は、いくつですか?
- 妊娠糖尿病と診断されました。どのような食事をしたらよいのでしょうか?
- 分割食とはどのような食事療法なのでしょうか?
- 妊娠糖尿病と診断されました。運動しても良いでしょうか?
- 妊娠糖尿病と診断されました。インスリン注射が必要ですか?
- 妊娠糖尿病で、インスリン注射をしています。低血糖が心配です。どのようなことに気をつけたらよいでしょうか?
- 妊娠糖尿病でした。産後に気をつけることはありますか?
- 妊娠糖尿病と診断されました。どのような食事をしたらよいのでしょうか?
食事を正しくとることで血糖コントロールを行い、赤ちゃんの発育に必要な栄養をとり、お母さん自身の健康も維持していきましょう。適切なエネルギー摂取量については、下表(適正エネルギー量の求め方)を参考にしますが、生活活動量、妊娠中の経過等により修正する場合もあります。
- 分割食とはどのような食事療法なのでしょうか?
1日3食、規則正しく適正量を食べても食後の血糖値が高い場合は、1日の食事を6回に分けて食べる事があり、この食事方法を分割食と言います。1回の食事量を減らすことで食後の血糖上昇を抑えます。6回の分割食は3回の食事と3回の間食(80kcal~160kcal)を組み合わせます(図)。
間食例は、おにぎり、焼き芋、シリアル・牛乳、焼きうどん、クラッカー・飲むヨーグルト、サンドイッチ、フルーツヨーグルト和え などがあります。
- 妊娠糖尿病と診断されました。運動しても良いでしょうか?
妊娠中の運動は血糖コントロールの改善につながる効果がありますが、妊娠の状況によっては運動をできない場合があります。また、不適切な運動は逆効果です。妊娠中の運動は、必ず主治医の許可を得て行いましょう。妊娠中の運動には血糖と血流を改善する有酸素運動が効果的です。具体的には、ウォーキング、体操、ヨガ、エアロビクスなどです。
食前食後の30分の運動は避け、食後1~2時間で行うのがいいでしょう。準備運動、整理運動を必ず行いましょう。下記の注意点をお守りください。
- 妊娠糖尿病と診断されました。インスリン注射が必要ですか?
健康な妊婦さんの血糖値目標に達成することが食事療法のみでは不可能なときにはインスリン療法が加わります。妊娠中の妊娠糖尿病や糖尿病の薬物治療には、飲み薬ではなく原則としてインスリンを使用します。飲み薬は、胎盤を通過して胎児に移行してしまう可能性を含めて、赤ちゃんへの安全性が確認されていないものが多かったり、妊娠中はインスリン治療のほうがより確実に血糖を下げられるからです。
- 妊娠糖尿病で、インスリン注射をしています。低血糖が心配です。どのようなことに気をつけたらよいでしょうか?
高い血糖の状態を是正するためにインスリンの補充を行いますが、ときに血糖が必要以上(正常域以下)に下がりすぎてしまうことがあり、この状態を低血糖といいます。すぐに対応すれば、危険は回避出来ますが、適正な対応がなされない場合は重篤な症状をもたらします。
(1) 低血糖症状ってどんな感じ?
初期症状
発汗(じっとり、変な汗をかく)、手足のふるえ、動悸(どきどきする)、異常な空腹感、体が熱く感じる など
- 低血糖にはいろいろな症状がありますが、誰でも同じように順序よくこれらの症状が出るわけではありません。症状は極めて個性的で、個人差が大きいのです。
- この時が一番重要です!サインを軽視せず、早めの対応が肝心!!
→しかし、何もしないでおくと・・・
意識障害
脱力(体に力が入らない)、眠気、疲労感、集中力の低下、物が二重に見える など
この状態になっても糖分を摂らないでいると、
→体に力が入らないので立てない
→ブドウ糖が取りに行けない→さらに悪化→意識障害発生・・・
患者さま本人ではどうすることもできなくなってしまいます。低血糖昏睡
意識がなくなってしまいます。
このような場合には救急車を呼ぶなどが必要です。
早めの対応が肝心です。
長時間の場合には、赤ちゃんにも影響が与えてしまう可能性があります。※低血糖昏睡まで至るケースはまれですが、備えと早めの対応が肝心です※
(2) 低血糖時の対応
ブドウ糖(グルコースサプライを2個(約10グラム、約40カロリー)又は糖分約10gを摂取します。いつでも、どこでも グルコースサプライなどをすぐ摂取できるよう、身につけておく(例えば、財布の中など)ことが重要です。(手元に血糖測定器がありすぐ測定できる状態であれば、血糖値を測定してみると振り返りに役立ちます。ただし、緊急性を要するときにはまずは糖分摂取です。)
家族や職場の方にも低血糖を知っておいてもらえると良いかと思います。自分自身で対処できなくなってから周囲の方が気づかれた時、その威力を発揮する可能性は大きいと考えられます。どうしても近くに砂糖など糖分がない場合は市販のジュースを摂取で危険を回避出来ます。
- 妊娠糖尿病でした。産後に気をつけることはありますか?
妊娠糖尿病の人は産後に血糖が正常化することが多いです。しかし、妊娠糖尿病と診断され、産後にいったん正常化した人を対象にした研究によると、20年から30年後にはその半数が糖尿病になった、という報告があります。いったん血糖が正常化すると、定期的な検査を受け忘れることが多くなってしまいますが、妊娠糖尿病だった人は糖尿病に移行しやすいため、定期的なフォローアップが非常に大切です。
まずは産後1~3ヶ月で75gブドウ糖負荷試験を行い、血糖の状態が正常化していることを確認しましょう。正常化していても、年に1回のブドウ糖負荷試験を行い、糖尿病へ移行しないように注意しましょう。特に、離乳食が開始になり、おっぱいを卒業するころからの体重増加に注意しましょう。成育医療研究センターでは、産後1~3か月に母性内科でブドウ糖負荷試験を行っています。その後の定期チェックのために、以後は、封書によるブドウ糖負荷試験外来ご案内システムへの登録をおすすめしています。
興味のある方は、妊娠中に「血糖が高い」といわれた方へ ~出産後も気をつけて欲しいこと~のリーフレットもご覧ください。
- リーフレットについては、こちらをご覧ください。