国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development

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日本学術会議”我が国の医学・医療領域における ゲノム編集技術のあり方について”

▸ 我が国の医学・医療領域における ゲノム編集技術のあり方について

  • 提言 pdf(下記、当該「要旨」より抜粋)

作成の背景

新しい遺伝子改変技術であるゲノム編集は、31億塩基対に及ぶヒトゲノムの特定部位において、外来遺伝子の導入、遺伝子変異の修復、欠失・挿入等の変異の導入を可能にした。従来の遺伝子組換え法に比べて、格段に精度・効率が高いために、今日、ライフサイエンスにおいて無くてはならない技術となっている。医学・医療領域においても、ゲノム編集を用いた様々な疾患に対する治療法が開発されつつあり、国外では一部が既に臨床応用段階に入っている。

現状及び問題点

ゲノム編集が登場するはるか前、1990年に米国で遺伝子組換え技術を用いる遺伝子治療の臨床開発が始まった。当初は、先天性の酵素欠損症などの患者に正常な遺伝子を導入することで治療効果が認められた。しかし、フランスにおける臨床試験において、想定外の部位への遺伝子挿入により白血病が発症し、被験者の死亡事故が起きた。こういった遺伝子導入の不確定性などを背景に、日本では、遺伝子治療の臨床研究は研究機関と国の二重審査を求める臨床研究指針が設けられた。30年近く経った今日でも、遺伝子治療の承認例は世界的に見ても多くない。遺伝子治療製剤においても、国外では続々と承認されている一方で、日本では承認製剤はいまだない。
ゲノム編集は、ヒト体細胞や幹細胞で多様な遺伝子改変を実施可能としたが、標的配列以外の部位に意図せぬ変異を導入してしまう(オフターゲット変異)などの技術的課題がある。今後、日本でもゲノム編集を用いた治療法の臨床開発が進むと期待されるが、遺伝子導入に留まらないその多様な遺伝子改変能力を、被験者の安全を確保しつつ、いかに様々な疾患の治療法に結実させるかが課題となっている。一方で、中国から発表されたゲノム編集を用いてのヒト受精胚の遺伝子改変を試みる論文については、その倫理社会的問題をめぐり、世界的な議論が起きている。受精胚ゲノム編集を拙速に臨床応用し、オフターゲット変異を起こした場合、出生した子どもの全身に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるため、その臨床応用は慎重にならなければならない。また、生殖医療の規制が十分でない国では、親が子どもの外見などを希望通りに実現するために乱用される危惧の声もある。一方、ゲノム編集を用いたヒト生殖細胞や受精胚の分子生物学的研究から、ヒトの生殖や発生に関する重要な科学的知識を得ることも期待されているが、市民の中には、生命の萌芽であるヒト受精胚での遺伝子改変を懸念する人もいる。
これらの背景を受けて、本委員会では、日本における、特に医療・医学領域におけるゲノム編集技術のあり方について、公開シンポジウムを開催して得られた市民の意見を参考にしながら検討を進めてきた。ここに、その検討結果を提言としてまとめるものである。

提言の内容

体細胞ゲノム編集治療と被験者の権利保護及び臨床研究の規制整備

難病に対する有望な治療法を提供すると期待される体細胞ゲノム編集治療は、生体外ゲノム編集治療と生体内ゲノム編集治療とに大別される。前者は「再生医療等安全性確保法」の、後者は「遺伝子治療研究指針」の規制の対象であり、それぞれの規制に基づき、被験者の権利保護に留意しつつ、慎重に開発されるべきある。生体内ゲノム編集治療の臨床研究のうち、遺伝子導入を使わずにゲノム編集を行う場合は現行の「遺伝子治療研究指針」の対象ではないため、厚生労働省において体細胞ゲノム編集治療の臨床研究に関する必要な規制が制定されることを期待する。

体細胞ゲノム編集治療製品開発の支援体制構築

「医薬品医療機器等法」の枠組みの中で進められるゲノム編集治療製品の開発については、厚生労働省と独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が、関連学会などの協力を得て、オフターゲット変異等のリスクを評価する体系を構築するなど、相談支援の具体的な内容を明らかにするべきである。

ゲノム編集を伴う生殖医療の臨床応用に関する暫定的禁止を含む厳格な規制

ゲノム編集を用いて生殖細胞あるいは受精胚に遺伝子改変を施す生殖医療は、出生する子どもへの副作用など重大な医学的・倫理的懸念がある上に、その実施の可否に関わる社会的議論が日本ではまだ不十分である。従って、ゲノム編集技術の生殖医療への適用は、現在行うことは適切ではないため、最低限、国の指針により、当面は禁止するべきである。一方で、医療技術の進歩によって、安全性の課題や市民の考え方の変化による倫理的課題が解決された場合においても、ゲノム編集を伴う生殖医療の実施の可否については、継続的かつ慎重に議論を続けることが必要である。また、ゲノム編集を含めたヒト生殖細胞・受精胚を実験的に操作することに対する国による法規制の必要性についても検討するべきである。

社会的理解と透明性を踏まえた、ヒト生殖細胞・受精胚ゲノム編集を伴う基礎研究の規制

この基礎研究で得られる科学的知見は、ヒトの生殖や発生過程の解明を通じて生殖補助医療の向上に資すると期待されるが、人々の倫理的懸念を踏まえると、研究者の慎重な態度が必要である。中国から発表された論文をめぐる懸念も考慮すると、生殖医療応用を目指していることが明らかな基礎研究については、目下控えるべきである。個別の基礎研究について、具体的な研究目的ごとに、医学的知見・科学技術の進展、社会の理解の深まりを考慮し、その実施の当面の差し控え、厳格な条件の下での許容などを慎重に審査する体制を整えるべきである。本基礎研究を実施する場合には、既存の国の指針を遵守するとともに、文部科学省及び厚生労働省が中心となり、この科学的研究の適切な審査体制を含む指針等が整備されることを強く求める。

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